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〜目が覚めたら異世界にいたってマジですか?〜


 突然だが俺は死んだ。


 高校生活で一人暮らしをしていた最中、親からもらった仕送りだけを頼り生活していたら、ある日急に熱が出て、腹も痛くなった。医者に行く金もなく、俺はそのままゲロを吐きまくって意識が薄くなった。


 昨日食べた2ヶ月前の玉ねぎのせいか?それとも野菜の栄養を野菜ジュースで取った気になっていたからか?


 何はともあれ、俺は死ぬ瞬間、もう少し真面目に生きていれば良かったなと思うのだった。


第一章 国


「…ざめよーー」


 誰かの声が聞こえる。


「目覚めよーー」


 いや、聞こえるんじゃない。頭に直接響くような……


「目覚めよーー」


「だぁ!わかった、起きる、起きるから!」


 目を開けるとそこは真っ白で何もない空間。目の前にはフヨフヨと謎の光が浮かんでいる。


「なんだ、これ」


「目が覚めたか転生者よ」


「うわぁ!しゃべった!?」


 いや、しゃべったわけじゃない、こいつ脳みそに直接語りかけてきやがった。


「お主は死んでしまった、そして今から転生する」


 いまだに状況が理解できない。光が言っていることは俺のことか?


 いや、覚えがある。俺は死んだ、そうだ思い出した。意識が薄くなって、そのまま死んでしまったのか。


「今から転生するのは多くの種族が生息する世界だ。お主はそこで生きていくのだ」


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、もうちょっと説明してくれませんか?」


「お主のスキルは吸血鬼、血を与えた相手を支配できるスキルだ」


「いや、話聞いて!?なんだこれ、会話できないのか?」


 どうやらこの光は録画された映像を流しているようなものなのだろう。やけに説明口調なのもそのせいだろう。


「心配せずとも言葉は通じる。お主はその世界でやりたいことをすればいい。全てお主の自由だ」


 自由と言われても、いきなり知らない世界になんていきたくないんだけど!


 俺が嫌だと言おうとしたところで、光は消え、俺はまた意識を失った。



 さて。


 目が覚めたと思ったらめちゃくちゃ森の中にいた。なんだ、夢かとも思ったが鼻の奥に入る緑の匂い、身につけているパジャマ服の質感、遠くから聞こえる鳥の様な鳴き声。


 うむ、これ夢じゃねぇな。


 ふぅ〜……。


 一度眼を閉じゆっくり息を吐いて、空気を口から大量に取り込む。そしてもう一度深い息を吐く。


 冷静になってこの状況を整理しよう。後藤大地、宮城の高校に通っていた二年生、年齢は17歳、男、彼女はいない、いやそれはどうでもいい、と。


 やっぱり俺は死んだはずだ。俺の実家は埼玉だ、わざわざ宮城の高校に進んだのには理由がある。あそこは牡蠣がドチャクソにうまいから、俺は気仙沼に近い高校に通っていた。


 ってことはやっぱり俺は一人暮らしをしていたわけで、バイトもしないから親からの仕送りでなんとか生活していて……そしてめちゃくちゃに具合が悪くなって。


 そんでなんだあの光は!いきなり喋り出して、色々説明しやがって!くそ、やっぱりそうなのか?これは異世界転生ってやつなのか!?


 むくりと起き上がり、あたりを見回す。寝っ転がっていたのはちょうど木の生えていない芝生が多い茂っていた場所。起き上がると周りの木の枝が頭を叩いて夢ではないことを教えてくれる。


「いたっ」


 聞き慣れた俺の声。鏡はないが、この手のひら、この服、足の裏の傷、全部俺のものだ。


「くそ、あの光、異世界転生って言ったよな?ってことは赤ん坊からのスタートじゃないのかよ」


 何度確認しても手の甲についている怪我後は消えない。これじゃあ転生っていうより転移じゃないか。


「んでここはどこなんだよ」


 見回す限りは森。生き物もいなさそうだし、なんなら誰かが通った後もない。


 ぽりぽりぽり。首を掻きながら考えをまとめる。


「これからどうすっかなぁ」


 なんだか分からないが異世界にやってきたってのは間違いなさそうだ。こう言う時、まずは元の世界に帰りたいと思うものだが。


「こう言う異世界って、ワクワクするよな」


 俺はまだそう思わない。どうせ帰ったって、適当に生きて適当な人生を送るんだろう。それならば、この世界で新しい人生をやり直したい。


「俺はこの世界で生きる!」


 まだ何をやるとかは決まっていないけど、もう流されるだけの人生なんて嫌だ。ならばこの世界で気ままに、自由な人生を過ごしたい!


「じゃあまずは探索だな」


 とりあえず水、それから食べ物、あとは見晴らしのいい土地……


「こう言う時、チートな能力があればいいんだけど」


 そういえばあの光がスキルとか言ってたな。俺のスキルは吸血鬼らしいが。


「血を与えればそいつを支配できるって言ってたな」


 ぽりぽりぽり。首が痒い。


 待て、これはもしかして、蚊か?この世界にも蚊がいるんじゃないか?


 ってことは俺は蚊に血を与えているはずだ。ってことは俺は蚊を支配できるはずだ!


「……お〜い、蚊よ〜い。返事をしてくれ〜」


 森に向かって声を投げる。誰も現れない……あの光、嘘ついてたなぁ?


「ぶ〜ん」


「うお!まじで蚊がきた!」


 誰も現れなかったわけじゃない、小さすぎて分からなかったんだ。


「お前、俺の血を吸って支配されたのか?」


「ぶ〜ん」


 なんとなく肯定しているような気がする。


「よし、じゃあ俺に水が流れているところを教えてくれ」


 そう言うと蚊はゆっくりとどこかへ飛んでいった。俺はそれについていくことにした。


「うおおお」


 ついていくと本当に川があった。すっげー、本当に支配できるんだ。


 何にも持っていない状態で一人森の奥に放り出されていたら流石に泣いてしまうからな。


「どうやらあの光が言っていたことは本当なのかもなぁ……」


 川を覗き込む。


「うわ、誰だこれ!ってこれが俺か?」


 どうやら俺は体つきは変わらなかったが、顔立ちだけは変わっていたらしい。こうなると異世界転生って言っていたのは間違いではなくなるのか?


 しかし、ここら辺は木も生えていないし風心地よい。当分はここに住むのもありだろう。ただ、俺の相棒がちっちゃな蚊だっていうことは心配だけどな。


「ぶ〜ん」


「ま、いいさ。とりあえず食べられるきのみとか教えてくれよな」


「ぶ〜ん」


 そうして俺の異世界生活が始まった。


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