隣の席の男子の真昼の夢
オチのない話でアレなんだけど、昼寝した時に見た夢の話でも聞いておくれよ
ハロウィンの飾りが置いてあったから時期としては10月下旬ぐらいだと思うんだが、僕はおつかいを引き受けたんだ。
(もう17時だし帰ってきて風呂入ってご飯食べたら寝られるな…)
立ち上がると風呂場に向かい、服を脱ぎ始める僕、軽くシャワーを浴びて"体洗うヤツ"でボディーソープを泡立て始める僕。すぐに全身が泡まみれになる。あろう事かそのまま家を飛び出したのである。
初めは全力で走っていた。普段より随分足元が滑りやすいことに気がつく。遂にバランスを崩し、尻もちをつく。そのまま尻で滑っていく。いいスピードだ。全く減速しないから側溝を手で押して体の向きを整えてやる。直に国道沿いの歩道に出る。さながらスケートボードに乗っているかのように風をきって車と並走していく。通行人の視線を受け、更に高揚する。
そうして数分間直進して目的地に到着する。駅前のパン屋さんだ。泡まみれの手でトングを掴むとトレーにパンを取り、レジに持っていく。どこからか小銭を取り出し、紙袋を受け取り、数十秒で用事を済ませた僕は、まだ泡が残っているのを確認して再びパン屋を全力疾走で飛び出す。
勢いをつけた僕は今度は地面にヒップアタックをかまして滑っていく。僕はすっかりこの"尻滑り"の虜になっていた。気持ちいい。疾走感、泡の肌ざわり、そしてまるで変態を見るような視線、どれを取っても完璧だった。
だから正直に白状すると家に着くのが少し惜しかった。やっと体のコントロールに慣れてきたところだったから。滑りながら立ち上がり門を掴んで止まる。ゆっくり歩いていき、鍵のかかっていないドアをくぐる。もうすぐこの世界から離れなければならないと思うと自然と俯きがちになる。夕食の支度をする母を横目にテーブルに紙袋をそっと置き、風呂場に歩いていく。風呂場から出てきた姉の罵声を浴びながら入れ違いで風呂場に入り、小さな椅子に座る。
視界が、世界が、白く染まっていく。
願わくば、またこの世界ではしゃげますように。
起きてから執筆、ユーザー登録、投稿、合わせて1時間も掛かりました。小説家ってすげーなおい