第13章 トリライン 18
「はい、ここー。どーお?」
《アカメはこの場所も向こうも知らぬな》
「ふーん、そっかー。ところでさー、アカメ。
あんた昔話しかけたら倒れたって言ってたよねー?」
《うむ、そんなこともあったが》
「あれ、余程慎重にやらないとダメだよ?あたいみたいにすんなりいくとは限らないんだからねー。失敗すると攻撃されるからー」
《ぬ?あの時周りに群がっていたのはアカメを攻撃していたのか?あまり煩わしいので轢き潰したのだ》
「それ、みんな、あたいの同族だからねー。覚えておいてー」
《ぬぬう。それは申し訳ないことをした。アカメは少し小さくなるとしよう》
「ププッ。なにそれー?小さくなるのが反省なのー?」
《反省が何か知らぬがアカメは大きい方が上なのだ。ミットより小さくなるのだ》
見る間にアカメは1メルまで小さくなった。こいつ、ほんとにどうなってるんだー?
「そっかー。帰ろっか」
ライカースの乗り場前、辺りを見て考える。もう一つ西行きの転移陣はどうしよーか?あんまりやるとライカースの町を通らない分、恩恵も無くなっちゃうからね、保留かなー?
「ナックー、元気にしてたかー?」
駆け寄るナックの笑顔に癒されて、アリスに転移陣を2組作ったことを報告した。看板をハイエデン行きと南行き1枚ずつ、ライカース行きを二つ頼んだ。
「西行きは保留ねー」
「それなんだけど街の中の道路って5メルちょっとしかなくてさ、馬車やトラクのすれ違いって怖いよね。街の東側に迂回と作っちゃおうかと思って」
「それだとライカースは取り残されてさびれちゃうよー?
えーっと、この道をこっち行き、隣の道はあっち行きだけにしてすれ違いを無くしたらどーお?」
「すれ違いは無くなるけど、荷物の積み込みなんかで止まるとやっぱりギリギリだよ。道路の話もしたんだけど聞く耳持たないってかね」
「ふーん。じゃあ西側の山を齧って町の両側に道を通すのはー?」
「どーだろ。でもそれしかないかなあ」
「何言ったって協力する気がないんじゃねー」
夕飯前に看板ができたのでミケを連れて立てて来た。明日は支店を建ててあの辺の整地だねー。袋地と言ってもきれいに均せばけっこう広いからね。
目が覚めると朝からどんよりとした曇り空。
「ナック、今日はこの辺でお仕事だから近くで遊んでよーかー?」
アリスが通路を出てすぐ左側に大きな建物を建て始めた。崩れた土砂の上からマシンを撒いていく。山裾も何もお構いなしに20メル幅で100メル先までガッツリ場所を取ったね。
あれあれ、木が根本から押し上げられて酷いことになってるじゃない。こりゃよっぽど昨日の交渉が面白くなかったんだ。あたいが少しフォローしないと。
持ち上げられた木を集めてクロミケに渡す。どうせ家具やらに木質がたくさん要るんだ。加工しやすい様に刻んでねー。
ふう。結構あったねー。さてと、今朝見せてもらった計画図だとお庭になるのはあの辺りだねー。その場所の木もみんな引っこ抜いてー。
「クロー、これも木質にしといて、お願いねー」
んで、表面のいい感じの土を30セロくらい捲ってー。これは脇に積んでおくよー。
あとはシロルが最初に作った道の高さに合わせて多過ぎる土をひと抱えずつ連れて転移する。深い溝を作りながら持ち上がっていく建物の周りに補充するためだ。計画では地下付きの5階建だからねー。
建物は1ハワーほどで建ち上がってしまった。あたいの土運びはまだまだだよー。
シロルがお茶だと言って呼んでいる。平らなとこってまだ道路しかないからねー。道を塞ぐ様にトラクを広げて中で休憩だ。雨は降ってないけど何となくジメッとしてるよ。
「シロルが木をセルロースにしてくれたから、次は内装をやってくね。ミット、土はやっぱりすごい量だね。他に何か使えないかなあ」
「シルバ隊が来たら運びだそうかー?南の転移陣の辺りに捨てるか、北の橋で使うかー?」
「あー、あの川、幅が広いから、あのままやると穴だらけになっちゃうか。橋に使うのはいいね」
「場所を決めといてよー。あとでアカメに仮の転移陣を作ってもらうからー」
夕方にはお庭の分の土を運び終わった。建物周りはとっくに一杯になって隣に一山出来ちゃったよ。最初に捲って置いた表土を広げて行く。




