第13章 トリライン 14
トラクを見ると前方でクロとミケが邪魔になる木を切り倒し、横に退けていた。あと2回も道を作ればトラクが走れそうなくらいなだらかになる。
「あ、名前だよー。なんて言うのー?」
《そのようなものは無かったな。必要と言うなら好きなように呼ぶがいい》
「赤い一つ目さんだからねー。アカメでいーかなー?それでアカメは何を食べるのー?」
《食べる、とは?》
「動くには力がいるでしょー?その元になるのはなにかなー?」
《ふむ、アカメの力の元か。それはこの大地から湧いてくるな》
「えー?熱とかー?あたいはホーシャセンも使えるよー」
《熱?ホーシャセン?何か分からんが》
「ふーん。分かんないかー。何ができるのー?アリスはあのトラクやロボトを作ったよー。あたいはさっきやったみたいに転移できるよー。他にはこんなこともー」
試しにアカメを持ち上げて見た。そんなに重くないねー?400キルくらい?中は空っぽー?
《おおっ、浮いておるな。ほう。
アカメは地に潜るのだ。あとは見て考えるのだ。さっきの転移と言ったか?似たようなことはできる。材料があれば飛ぶ場所を作れるのだ》
「飛ぶ場所ー?ケルヤークに飛ばしたやつかなー?飛ぶのはどー思うー?」
《先程ミットは飛んだであろう。面白いのう》
あたいはナックをシルバに預けアカメをセーシキドーに連れて行った。
「どーよー?」
《ぬぬ、どうなっている……大地がない》
なんか慌ててるー?あたいは窓にアカメを押して行って窓から世界を見せた。
「ほらー。あれがさっきまでいた世界だよー。きれーでしょー?」
《ほう。そうであったか。あれは確かに大地、力がこの距離を渡って流れている。そうか》
「ふふふー。気に入ったー?ここはセーシキドーって言うんだよー」
《うむ。力の流れが細い故長くは居られぬが、これは面白い》
「あたいはここで少し休んでくよー。帰りたくなったら言ってねー」
あたいはそう言って反対側の窓へ行き、外惑星というやつを探す。じっと見てると動きが面白いんだ。この世界の周りを回っているのはこのアルミの球と6台のエーセイだけ。外惑星には自然のエーセイがいくつもある。それも見えると影が面白いんだよね。
《そちらからも微かに力が流れてくるが何かあるのか?》
「えー。外惑星がわかるのー?」
アカメをこっちの窓に転移した。
「あの動いてる明るい点がわかるー?」
《ほう。大地と同じだな。ずいぶんと遠い》
「そっかー。あそこでもアカメは大丈夫そーなんだー。いつか連れてってあげよーかー」
《ぬ?この距離を飛べると申すか?》
「まだできないねー。でもいつか行ってみたいねー」
そのままアカメとボーっと窓の外を見ていた。
どのくらい経ったのか
『ミット。道は荒れ地を抜けたよ。これから町に入るよ』
「アリスが荒れ地を抜けたってー。戻ろっかー?」
《うむ、頼む》
アカメも町を見ると言うのでトラクの屋根に乗せてみた。アリスがぶっとい輪っかを作って乗せたので転がり落ちる心配は無い。
《おっほー。これは速いな》
たいして速くもないのにアカメはなんか喜んでるねー。
山から注ぐ沢水でやってる畑の馬車道に乗り入れたけど少し揺れる。人影のない道をしばらく揺られて町に入った。ここの町も乗り場が潰れてたせいか町の中心が逆側になってるねー。馬のいない馬車の屋根にでっかい翠のきれーな岩。ひどく人目を引く絵面だよ。たちまち人集りになっちゃった。
「あんたら、どこから来なさった」
「屋根に載ってる石はキレイだな。少し分けてくれんか?」
「この馬車はどうやって走っとるんかね?」
「宿が決まっておらんならうちに泊まってくれんかのう」
「来た目的は何じゃ?」
「あたいたちはガルツ商会の先遣隊だよー。班長はこっちのアリス。あたいはミットだよー。商会の品が売れるか仕入れができるか見に来たんだー。町のこと知りたいから少し教えてくれるかなー?」
「何が聞きたいんだね」
「まずはここの名前だねー」
「ライカース!」
「いいところだぞ!」
「特産とかはー?」
「特産ってもなあ。他所で売るってことか?」
「畑を見たけど野菜が多かったよねー?主食は何を作ってるの?」
「タロイモにキビだろ」
こんにちはー。ミットだよー。
アリスでーす。
ミ:ライカスだってー。
ア:ふーん?あんまり大きな町じゃないよね。
ミ:まあいいじゃないー。交易圏が大きくなると商売繁盛だよー。
ア:そーだね。ここは素直に喜んどくよ。まった見ってねー。