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フロウラの末裔(構想)  作者: みっつっつ
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第13章 トリライン 3

 朝になって外から光が入って来た。なんかガアガア(にぎ)やかだね。


「アリスさま、おはようございます。トンネルに鳥が入り込んできています」


「なに、鳥って。ガアガア言ってるやつのこと?」


 前の透明板から出口の方を見ると(まぶ)しい朝日を背景に地面近くをチョロチョロ動く影。鳥と言われればそうかな?ヒョロっとした頭が時折見えたり、羽っぽいのがチラチラ見える。

 危険はなさそうなのでミットを起こして朝ご飯からだね。


 ご飯が終わる頃には日も上って眩しさはぐっと減った。鳥もどこかへ行ったようで静かになっている。トラクの幅を戻して出口に向かって進んでいくと。

 森の斜面の途中だね。左手の眼下には5、6000人くらいの小さな町。正面は斜面を降った先に川が流れている。左へ行くには落差が大きそうだから右へ斜面なりに下って、川べりまで降りたら川沿いに町へ行くルートかな?


 日が当たれば動力に問題はないから遠回りでも構わない。右の壁を大きく(えぐ)ってトラクが回れるように広げてやるのに50メニ費やした。クロミケはミットと先行して木を伐採しに行った。

 ヤルクツールの道路作りを思い出すよ。あの湖までここからならそれほどないんじゃないかな。あたしも通るところを決めるため外に出た。だいたいのところはミットに任せておいてもいいんだけど、森の空気を吸うのはやっぱり気持ちいいからね。


 シロルが操るトラクは昼前には川のそばまで来た。この調子なら明日中には町まで届くかな。

 川はこの山裾から随分と深いところを流れていて、たくさんの鳥が(よど)みに浮いて魚を捕っていた。(がけ)は崩れそうな感じで、あまり近くへは寄らない方が良さそうだ。

 ここの斜面はそのままではとても走れないけど、割となだらかで右下がりの緩い傾きになっている。左に土留めの壁と右に排水用の溝をセットにして道路を作っていくことにした。

 所々に大きな岩が顔を出しているなか、ミットたちは遠慮なく進路にあたる木々を伐採している。


 おっと、ナックのミルクタイムのようだ。シルバに呼ばれてミットがこっちに向かっている。ミットが引き抜いて山積みにした木はたくさんあるからクロミケが暇になる心配はないね。それほど太い木は多くないし、切り倒すくらいでも全然いける。


 そんな調子でお昼もそろそろという頃、1本の木に大きな蜂の巣が見つかった。ミットには朝から蜂が多いって話を聞いていたから(あわ)てるもんじゃないけど、是非とも蜂蜜は欲しいね。


「煙で(いぶ)すといいって聞いたよー?やってみよーかー」


 クロが倒した木の枝をまとめて巣の下に置いた。ミットが着火具でそこに火を点けるともうもうと煙が立ち上り、あたり一面が白煙に包まれた。


「あんまり蜂が出てこないねー?クロー、巣を割ってみなー」


 ミットの声にクロが片手で巣を木から潰さないようにもぎ取り、パンでも割るようにそっと二つに分けた。中からバラバラと蜂が落ちるのには構わずに片方を地面に置くと、手に持った巣に付いている蜂を払い除ける。

 ある程度取れたらミットがそばへ置いた大鍋に両手で包み込むように巣を潰し、蜜を絞り出した。もう一つも同じようにして蜜を取り出したので、(いぶ)していた火を消してその場を離れ様子を見る。


 お昼の間に蜂たちは煙から回復して辺りをブンブンと飛び回っていたが、やがてどこかへ飛び去っていった。蜜は大鍋に7分目もあった。


「まあ。こんなにたくさんの蜂蜜。どうしましょう、保存容器が足りません」


 シロルは大喜びだけど、小分けする容器を作ると言ってまわりの土を物色し始める。


「あたいがトリスタンに買いに行こーか?そのほうが早いよー」


 言うが早いかミットがフッと消えた。


「あらあら、行ってしまいました」



 ミットは30メニほどで50もの壺を引き連れて戻ってきた。煮沸(しゃふつ)消毒は済んでいると言うが、シロルが中を確認した。


「良さそうですね。詰めてしまいましょう」


「ミットは休憩したらまた外を頼むよ。夕方には町に入りたいし」


「あいよー」


 クロミケが頑張っているから道は順調に延びている。良さそうな路地に道をつなぐには一部をトンネルにしないといけないようだ。このへんから左へルートを変更して行こう。

 街を俯瞰(ふかん)する地図を見ていたけど川がやたら近いね。5メル近くも川が低いのに崩れないのだろうか。町の辺りで川が曲がっているから、浸食(しんしょく)された後だったりして。護岸や堤防までは画像からは読み取れないから、要調査かな。


「ミット、この町、川がやたら近いんだよね。どうなってるかあとで見て欲しいんだけど」


「あいよー。ちょっと見てくるねー」


 『アリスー。これ、やっばいよー。川の下流に家の残骸が転がってるー。何軒か傾いちゃってるのもあるしー』


「なに、抉られてる最中なの?補強みたいのは?」


 『木の杭が並んでるけど、やられちゃってるねー。水の跡を見ると4メルは上がるみたいだよー』


「むう。悪いんだけど治水工事始めるから、町長か誰か捕まえてもらっていいかな?てゆうか、あたしが行った方がいいか」


 『分かったよー』「いやー、すごかったよー。すぐ行ける?」


「シロル。ちょっと行ってくるね」


「はい、こちらはお任せ下さい」


こんにちはー。アリスでーす。

ミットだよー。


ア:なんか、川がすごいことになってるよ。

ミ:こりゃほっとけないよねー。

ア:がルツさんに怒られちゃうよ。

ミ:あのおっさん、こーいうとこはうるさいからねー。

ア:でも工事大変そうだよ?どうしよっか?

ミ:みんなでどっかに避難するとかー?

ア:いや、それは〜。


ミア:まった見ってねー。

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