第12章 トリスタン 20
正面の階段で下へ降りて見ます。灯りを向けて驚きました。
大量の衣装です。顔の無い人形に着せられたものがそこここに、並んだ高い棚に色別、サイズ別に分けて置かれています。
この辺りは女性向けのようです。ミットさまもアリスさまも棚から引き出しては当てて見て、もう夢中ですね。デザインは割とシンプルですがこの色使いは斬新です。
グルグルと見て回ると一部朽ちてしまった物もありましたが、総じてこれは宝の山ですね。
下着もありました。ガルツ商会の下着に勝るとも劣らないこの品揃え。防刃仕様でないのが只々残念ですが、これは明らかにひと財産です。
靴下もいいですね。可愛い柄のものをお二人がリュックに詰めています。
こちらには靴があります。色とりどり、様々な形の街歩き用。残念なことに外歩きに向いた丈夫な靴はほとんどありません。
華やかな帽子がひと区画。随分と様々な形があるものです。
男性向けの区画もありましたが、いくらか手狭に感じます。
足取りも軽く下の階へ移動します。灯りをかざしてまた驚きました。
お鍋が並んでいたのです。片手鍋、深鍋、両手鍋。5列もの棚に鍋だけが並んでいます。サイナス村にいくつか持っていってあげたい。エレーナさまだってこれを見たら狂喜乱舞確定です。
お隣はキッチンナイフの数々。すごいです。随分と大きなものもあるんですね。レントガソールさまが料理するならこれくらい?と思うようなものもありました。
ケックさまにも見せたいですね。この刃の異様に長いナイフ。2メル3メルの魚を捌くのに良さそうですね。アリスさまが作られる剣があるので必要ありませんが、そう思わせる逸品です。
次は調理用品。見たこともない、何に使うのかも分からないものが並びます。箱や札に説明があったのかもしれませんが、ほとんどが朽ちているのです。残念です。
食器も大変な量が並んでいます。お皿だけでも3列です。大中小の色違い柄違い、一体何種類あるのでしょうか。中に割れないお皿がありました。デザインの気に入ったものを5枚リュックに詰めて持ち帰ります。
小鉢、お椀、ボウル。どれもあたくしの持ち歩く箱には到底入りません。おっと、ティーカップがあります。素敵なポットとセットですね。しかもこちらもずらっと5列。5客セットが……カップは場所を取ります。とてもトラクには積めません。泣く泣く諦めるのでした。
これ以上はあたくし、耐えられません。
「シロルー。ハイエデンの部屋に持って行ってやろーか?」
ミットさまはお優しい。ですが使ってこその調理道具、食器でございます。すでに死蔵と言っていい食器もございますので使わないものをこれ以上増やすのは……
「ありがとうございます。ですが結構です。今使っているものが壊れたりしたら、その時またお願いします」
断腸の思いでそうお答えしました。
「そーお?まあ、あたいはいつでもここに来れるから、その時は言ってねー」
このフロアの半分が調理器具関連でした。広い通路を横切るとそこはなんとお弁当箱。可愛い絵柄のお弁当箱にアリスさまもミットさまも夢中です。2重構造で冷めにくい物がありますね。汁物を入れるタイプもありますが、シール材が劣化しています。アリスさまに見せると
「ケルヤークのゴムを使えば直せるね」
となるとこれもなかなかの商品ですね。あたくしの保温筒よりも保温機能の高そうなものがあります。外でお茶を淹れるのに良さそうです。4杯分、10杯分の2種類押さえておきましょう。シール材の取り替えをアリスさまにお願いしました。
この辺りは野外へのお出かけ用品のようです。折り畳みのテーブルや椅子、外用のコンロ、水汲み用品、テント、などなどが並んでいます。小さく丸めるお布団やマット、灯りもいろんな種類が並んでいて飽きませんね。
目を引いたのは車輪が2つ縦に並んだ、座面と握る場所があるので乗り物でしょうか、とすれば不安定極まりないのですが。足で回転させると車輪が回る様になっています。重心の調整に反復計算が大量に必要ですが乗れないことはなさそうです。
そう結論が出ましたのでちょっとやってみましょう。ただ車輪の外側が酷く劣化しています。発泡材料で置き換えしました。この後ろの機構が立てておくためのものですね。ロックを解除して座席に跨ります。ちょっと座面が高いですがつま先でなんとか立てました。
こんにちはー。アリスでーす。
ミットだよー。
ア:シロルがなんかやるみたいだね。
ミ:こんなの初めてじゃないー?
ア:そうだね。でもやる時は計算の上みたいだからね、シロルはタダでは終わらないよ。
ミ:あたいも負けてらんなーい。
アミ:まった見ってねー。




