第12章 トリスタン 2
ドヤドヤと5人やってくるね。こんな賑やかに歩いてたんじゃ獲物が逃げちまうよー?
「武器を捨てろ!」
一見するとアリスは武器を抜いてないからね。こいつらの視線はあたいに向いている。
「なんでかなー?」
「武器を捨てろ!」
「理由を言いな」
「抵抗すれば切る!」
「あんたにあたいが切れるかい?笑わせないどくれ」
「ミット。言われる通りにしよう」
「ふーーっ。アリスがそう言うんならあたいはいいよ」
あたいは剣を床に放った。
腰の鞘もベルトごと外され、アリスの剣も預かると言って外した。ゴロツキどもをロープ で縛り、あたいたちには抜剣した護衛が付いた。300メルほど歩き、詰所に案内された。あいつらはそのまま地下に連行され、あたいたちは2階の狭い部屋だ。
武器ベルトは部屋の隅に置かれた。
「まず名前を聞こうか?」
「アリスです」「あたいはミットー」
「どこのものだ?」
「ハイエデンのガルツ商会」
「ハイエデン?それはどこだ?」
「東北東に2000ケラルちょっとかな?」
「何を言っている?誤魔化す気だな?」
「なんで?」
「おまえたち、密売人か?」
「何?密売って?商人だからいろんなものを売るけど?」
「ぬ。何を売った?」
「最近売ったのは橋?家も売ったね」
「あたいはこの間、蟹を売ったよ。生きた奴ー。それで野菜に穀物とお酒買って来たよ」
あ、なんか頭、抱えたねー。
「あの路地で何をしていた?」
「何ってゆーとあれだけど、観光?おっきな広場に行きたかったんだー」
「こんな業物の剣を下げて観光だと?」
「そりゃあねー。旅に危険は付き物だからねー」
「なんであいつらに絡まれた?」
「それは向こうに聞いてよー。路地からわらわら涌いてくるんだものー。あたいちょっとキレちゃったよー」
「うん。あたしもイラっとしたよ」
あ。また頭抱えたー。
「トリスタンにはいつまで滞在する予定だ?」
「さあー?来たばっかりだしねー。これから考えるよー」
「そうか。行っていいぞ。俺はナルクールと言う。ここの分団長だ。何かあったら言ってこい」
「ナルクールねー。またよろしくねー」
「またはない方がいいな。騒ぎは起こさんように頼む」
「ふいー。お泊まりなんかになったら、シロルに連絡が大変だよー」
「シロルは全部見てたよ。そう言う設定になってるし」
「あー。そうだっけー。アリスー、屋台行こー。あたい、お腹すいたー」
「うん。行こう。こっちだっけ?」
「そうそう。ほら見えて来たー」
「どこに行っても串焼きはあるねー。うん、いい匂い。おじさん、2本ちょうだい」
「はい、120シルだよ」
「うん、このタレ美味しい」
「ほんとだー。やっぱりいいねー、串焼き」
「ねー、あれなんだろー。肉をなんか削ってないー?」
「スパイスの効いたいい匂いだね。あ、パンに挟んで食べるんだー、へー」
「こっちに焼き菓子があるよー。甘い匂いがすっごいねー。よだれが出ちゃうよー」
「買ってみようか。6個入りの袋売りなんだね。
お姉さん、ひとつちょうだい」
「はい。70シルです」
「おー、ふわっふわだねー。甘ーい!」
「うん、美味しいけど紅茶とは合わないかなー?」
「ふう。なんかガッツリ食べたいねー。
あ、なんかうどんっぽいねー。細いしスープも違うみたいだけどー。なんか赤いスープ?」
お肉と野菜がたっぷり載ってるね、良いかもー。
「おっちゃん、これ二つー」
「嬢ちゃん、これは辛いよ?大丈夫かい?辛くないのもあるからこっちにしなよ」
「えーっ?辛いのとあっついの苦手ー。じゃそっち二つー」
「あいよ。ちょっと待ってな。180シルだよ。器は返してな」
どんぶりに細い棒が2本。こんな棒で食べられるのー?うどんのときは棒の上が弾力のある板で繋がってたよねー。
アリスが皮で棒の上繋ぎを作ってくれた。これなら食べられるー。もうちょっとして冷めたらー。
「ふうーー、ふうーー。お、美味しいかも?」
「ふうーー。うん、しっかりした味だね。あち、ふうーー」
いやー、美味しいけど時間かかったー。おっちゃんがあの上繋ぎに食いついたよー。
あの2本の棒、箸っていうらしいんだけど、上手く使える人が少ないんだってー。2千セットで1万シルの注文をもらったー。
そのあとは市場を見て服を見て。飾り物は色が少ないねー。あたいたちのキラキラは売れそうだよー。
こんにちはー。ミットだよー。
アリスでーす。
ミ:屋台はどこもあんま代わり映えしないねー。
ア:うん。でも土地土地の特産品なんかも出るから面白いよ。
ミ:特産ってスパイスとかー?
ア:ここはあんまりなかったね。
ミ:あのほっそい麺は美味しかったよー。あっついけどー。
ア:じゃあねー。バイバーイ。