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フロウラの末裔(構想)  作者: みっつっつ
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第8章 魔物 13

 お久しぶりでございます。わたくしはアリスさまに「マノさん」と呼ばれております。


 今日は洞窟で魔物狩りでございます。


「よーし。午後の部、行ってみよう」

 暗所で活動したクロの充電を含め、午前中バッテリを一本使ってしまわれたので、手持ちは3本。残量のなくなったバッテリは馬車で充電中でございます。これで残り3本、全て使い切っても夜間の電力に不足はないでしょう。


 同じ隊形で洞窟へ入って行きます。どこに隠れていたのかコウモリが6匹、カエルが3匹。奥へ行くとナメクジが3匹。その先でやや右と左に道が分かれています。

 ミットさまは耳を澄まし、右寄りを指しました。

「こっちで良さそー」


 天井も高く広さもあるようです。少し行くと1メルほどの段差で高くなっていました。クロは手押し車を軽々と上へ運び付いて来ます。

 洞窟が少し先で急に広くなっているようで光の届かない闇が広がります。赤外域には50セロ程の赤い塊が見えています。

 ミットさまが警戒を強めました。アリスさまの網膜(もうまく)へ先程の画像を投影すると

「なんか動物が見える。体温は低い感じ?高さ半メル」

 小声で警告しました。


 ミットさまが灯りを放りました。

 カラカラと乾いた音を立て転がって行くと(まだら)の毛皮が浮かび上がりました。


 アリスさまとミットさまがじっと観察されるなか、ハッとした様子でレントガソールさまが剣を抜きます。すぐにミットさまの手が上がり止められました。


「ねえ!寝てるのー?聞こえてるのは分かってるよー?」


 斑の毛皮がいかにも面倒そうに首を回します。澄んだ緑に光る双眸(そうぼう)がこちらを向き視線を彷徨(さまよ)わせ、興味を無くしたように元の丸まった姿勢に戻ってしまいました。


 呆気(あっけ)に取られた沈黙のあと、ミットさまが続けました。

「ねえ!肉があるんだけど食べるかいー?

 カエルとコウモリー?」


 今度は少し動きが早いですね。じっとこちらを見て鼻をひくつかせているように見えます。こちらの意図がわかるのでしょうか?


 アリスさまが手押し車からマダラコウモリを引き出し丸まった毛皮の前に放りますが、反応がありません。

「具合が悪いのかな?体温が低いし」


 そう言ってツカツカと近寄り前に回ってしゃがみました。

「あんた、具合が悪いの?お腹空いてるんでしょ?」


 ミットさまがコウモリの足を切り取り簡単に皮を剥いで渡すと、アリスさまが鼻先へ肉を置きました。

 匂いは嗅いでいますが食べようとしません。


「ちょっと触るよー。あー、鼻が乾いてる。わっ、あんた痩せてるね。クロ。馬車に連れて行くからこの子抱えて。

 レント、ごめん。手押し車をお願い」


「なっ?ぬぬ、分かった」

 クロが抱え起こすと特に抵抗もせず大人しく抱き上げられましたが、体長2メルと5セロの痩せたネコ、(ひょう)に似ています。耳の先が2セロほど赤く尻尾は縞模様になっていて、わたくしの持つ豹の画像とは手足も細長いなどの違いがございました。

 帰りもコウモリの襲撃(しゅうげき)があり3匹獲物が増えました。本当にどこに隠れていたのでしょうか?



 先程(さば)いた肉は氷箱(レゾコ)に入れてあり冷たすぎるので、シロルがコウモリ肉を薄く切ったあと煮込んで柔らかくします。その間に、ハッポーのベッドに横たえた豹にアリスさまが手を当て調べます。わたくしの診断は敗血症と栄養不足、脱水です。右脇腹に毛の薄い場所があり傷になっていました。周囲も()れている様子なので麻酔(ますい)代わりに電撃を飛ばし治癒(ちゆ)マシンを()り込みますが、勝手が違います。

 失神もせず痛がる様子がないのもおかしいのですが、どうやら体細胞が違います。これでは治癒力を高める手法は使えないですね。直接的な手段に移行します。腐敗(ふはい)の始まっている患部(かんぶ)全体を膜で覆い皮膚に穴を開け、液化した内容物を絞り出します。激痛(げきつう)(おそ)ったようですが、麻酔効果が見込めないので仕方ありません。


「痛くしちゃってごめんね。悪くなってる部分を出さないと治らないから。水は飲めそうかな?」


 鼻先に水のボウルをを寄せると、長い舌を出して浸すように口から出し入れして水を飲み始めました。

 シロルが肉の煮汁を冷まして持ってきたので、そちらも試すと同じように飲んでいきます。ボウルに半分ほど飲んで満足したのか眠ってしまいました。

 続いて(わず)かな獲物をアリスさまが加工していると付近を見て歩いて来たミットさまとレントガソールさまが戻って来ました。


「洞窟で見た川が近くにあったよー。お風呂沸かそうかー?」


「薪にする枝も採って来たぞ」


「レントが入るなら木が足りないよ?テーブルと椅子を(つぶ)しても、あたしたち2人分くらいの湯船しか作れない」


「あー、そっかー。レント、おっきいもんねー」


「俺は湯で(ぬぐ)えるなら十分だぞ?川で警戒しながら拭うのに比べれば天国だ」


 ガルツさまと出逢われた森で過ごした10日ほどはそうでしたね。湯をそれだけの量、沸かすことができませんでした。


「土で作るのはどーお?」


「あったまるまでお湯が冷えるのが早いと思うなー。ハッポーを中に貼って断熱する?」


 よろしいのではございませんか?レントガソールさまの背もたれだけ指定して石を立てれば、楕円形でよろしいかと。石を焼いて湯船に放り込みましょう。


「あー。できるって。ポンプー作るから水汲んで。(くだ)を伸ばしてる間に湯船作るから。その後に石でお湯をあっためるよ」


 手回しポンプは何度も作っていますので時間は掛かりません。送水管も皮塊(かたまり)にマシンを配置してしまえば放っておいても大丈夫でございます。むしろ下地となる浴槽(よくそう)が毎回条件、材料等が異なるので求められる性能を達成できるか、確認作業に手間を取られます。

 発泡材(ハッポー)を立ち上げ目隠しにとの追加が発生しました。本日は風が弱いので、ほとんど補強が必要ないのがありがたいことでございました。


 夕食後はアリスさま、ミットさま、シロルが先に入浴、その後レントガソールさまが入浴することになりました。保護した豹が目を覚ましたことに片付けをしていたシロルが気付き、肉汁を飲ませます。アリスさまとミットさまも馬車から出て


「この子に名前をつけよー。ネコだよねー?」


「豹に似てるってマノさんが言ってたよ。おっきな斑点(がら)のネコってとこが豹。でも尻尾は縞々(しましま)じゃないし、耳の先っぽも赤くない。手足はもっと太くてもう少し短いらしいよ」


「ふーん?模様が粒々タマタマだから、タマ?」


「この子は女の子だよ。記録にパンセラってのがあるって」


「カッコいい名前だねー。いーかもー」


こんにちはー。ミットだよー。

アリスでーす。


ミ:ネタバレいっぱいのマノさん回ー。

ア:今回は大丈夫じゃないかなー。

ミ:どーしてー?

ア:だって色々おっかしーんだもん。

ミ:何がー?

ア:ミットがあたしにネタバラシ迫るの?

ミ:え?そーなの?


アミ:まったねー。


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