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にぃと

 あれから一か月が過ぎた。

 この一か月間、ひたすら魔力操作の訓練をした。魔法が使えないとはいえ、魔力を体に纏う身体強化や、魔力による壁を作る魔力障壁、魔力の弾丸魔弾。これらを使うことはできる。


 しかし、身体強化はともかく魔力障壁や魔弾は属性魔法に比べるとかなりコスパが悪い。しかし、これもないよりはマシだろうということでひたすら訓練した。

 やはり勇者補正があるのか、魔力操作の訓練は順調に進んでいき、白の兵士の中でもトップクラスの魔力操作を会得した。最近では、体術の訓練を兵士たちに混ぜてもらっている。


 そしてギフト。強化という名前しか情報がないため、ひたすら検証の連続だった。まず思いついたのは身体強化だ。少しずつ慣らしていこうと、まず手から部分的にやった。確かに腕力は強化され、すごい力を発揮した。

 しかし、問題点は二つ。それを維持するのにはかなりの集中力が必要なこと。そして、次の日の筋肉痛がヤバい。腕の痛みで一日中動くことができなかった。おそらく筋肉量が足りなかったのだろうが、毎回こんなことになっていたら話にならない。慣らしていって確実に前へは進んでいるが、まだまだ先には長そうだ。



「おい、ヒロトちょっといいか」

「よっしゃ」


 今となってはルクハルトとも仲良くなり、よく一緒に訓練をしている。年齢が同じだったことが一番大きいだろう。

 流石に一か月この城にいるだけあって、生活にも慣れていろんな人とも仲良くなることができた。廊下などですれ違えば、挨拶もする。ただ一人を除けばの話だが。


「何がよっしゃなんだよ。まあいいか、今度ダンジョン行こうぜ」

「ダンジョンなんてあるのか?」

「もちろんあるぜ。この国には一つだけだけどな。ここからちょっと行ったところにある」


 そういえば、こちらに来てから一度も王城を出ていない気がする。


「俺はいいけどお前はいいのかよ。一応王子なんだろ?」

「一応じゃなくてちゃんと王子なんだよ。その辺は心配すんな。騎士団の何人か連れてけば問題ないから」

「前から思ってたけど、王子って暇なの?ずっと遊んでるイメージしかないんだけど」

「さあてと、公務するか!」

「絶対暇なんだろ。無理して忙しいアピールなんかすんな」


 さっと立ち上げり、「あー忙しい」などと言いながら歩いていく。実際この後どこへ向かうのかは知らないが、どうせ暇なんだろう。訓練以外で何かをしている姿を見たことがない。


「俺も部屋へ戻るか」


 今日の分の訓練も終わり、自室へ向かう途中。出会ってしまった。唯一ここで俺に友好的ではない女。スミレだ。美人なのに不愛想で、どこか俺に冷たい気がする。カトレアは頭は少し弱いがまだ可愛げがある。しかし、スミレに関しては俺と仲良くしようっていう意思が全く感じられない。正直言って苦手だ。

 しかし、だからと言ってすれ違ったのに挨拶しないわけにはいかない。


「よ、よう」

「…………」

「無視すんな」

「あら、いたの」

「いたのって今挨拶しただろ」


 だから嫌なんだ。挨拶したのに返さないし、それを糾弾しても全く意に介す様子を見せない。


「ごめん、気づかなかった」

「マジかよ」


 こいつの目をと耳は腐っているらしい。いつもこれだ。そして真顔。こいつが笑っている顔を俺は見たことがない。


「お前さぁ、俺のこと嫌いなの?」

「別に。ただ、働きもしないでよく何も考えずにここにいられるなって思っただけ」

「お前……!」


 スミレは、俺が何か言い返す前に速足で去っていった。

 正直腹が立った。図星だったからかもしれない。

 確かに、俺は召喚された、誘拐された被害者かもしれない。でも、この一か月ここに住まわせてもらって、いろんな人にお世話になっている。使用人の人たちもそうだし、騎士団の人たちやマルクスさんにだって。だからこそ、何もせずにひたすら日々を消化していることをあの女に気づかされたことに腹が立ったのだ。


 明日から仕事探そう……


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