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魔法だよ

「はっはっはっはっは!面白い男ではないか。スミレ放してやれ」


 王様がそう言うと、俺を押し倒していた女の人がどいてくれる。とても綺麗な銀髪だ。さすが異世界というべきか。

 美人なくせして怖い女だぜ。

 鋭い目で睨みつけられる。もしかして、また声に出てた?


「ありがたき幸せ!もう一生あなたについていきます!」


 この人は命の恩人だ。こんな人があのルクハルトの親父だなんて信じられないぜ。


「よいよい。名乗らなかったわしが悪いのだ。わしはルドルフ。この国の王だ」

「私はフローラこの国の妃です」

「よ、よろしくお願いします」


 俺が恐縮していると、意外にも俺に敵意を向けてくる人はいなかった。王に対して不敬を働いたというのに優しいものだ。


「さて、これからの話をしようじゃないか」

「これからの話?」


 王様と話したことなんてないからものすごく緊張する。変なこと言ったらまたさっきみたいに組み伏せられるのかな。


「そうだ。できるだけ君の希望には沿いたいと思っている。なにかしたいことはないかな」


 優しい口調で聞いてくる。せっかくの申し出だ。どうせなら甘えさせてもらおう。このままだとただテレビを見て過ごすだけのニートになってしまう。


「魔法を使ってみたいです!」

「魔法を?」


 テレビで魔法があることは確認済みだ。せっかく異世界に来たんだ。魔法を使ってこの世界を冒険してみたいと思うのは男の性だろう。


「よし、いいだろう。最大限こちらでサポートをしよう」


 一通り話し合いが終わり、解散となった。ルベルトさんが一人の男を引き連れて近づいてくる。


「王に向かって名を名乗れなどと言った時はどうなるものかと思ったぞ」

「へへ、俺もどうなることかと思いましたぜ」


 俺の言葉を聞くと呆れたような目で見てくる。まるで、ダメだこいつとでも言いたげだ。


「紹介する。宮廷魔導士のマルクスだ」

「よろしくお願いします」

「あ、どうも」


 傍らの男性がお辞儀をしてくる。年齢はジジィと大して変わらないだろう。ただ、一言交わしただけでわかる。この人はジジィと違いまともな人間だ。その笑顔はまるで胡散臭さを感じない優しいものだった。ジジィの笑顔はいやらしさしか感じない。



「こちらへどうぞ」


 案内されたのは、さほど広くない殺風景な部屋だった。あるのは椅子と机、そしていくつかの実験器具のようなものだけだった。


「ここは私が個人的な魔法実験を行う時に使用する部屋です」


 促されるまま椅子に座る。

 満足したようで、魔法についての説明を開始する。前に確認しておかなければいけないことがある。


「マルクスさん、ちょっといいですか?」

「なんでしょう?」

「この二人は何?」

「私は第二王女です!」

「メイド」

「そういうこと聞いてるんじゃねぇんだよ!」


 椅子に座ると、いつの間にか俺の隣にはカトレアと先程俺のことを押し倒した女がメイド姿で座っていた。


「暇つぶしです!」

「私はカトレア様の専属メイド。置物と思ってもらって構わないから」


 カトレアは百歩譲っていいとしよう。しかし、このメイドに関してはナイフをずっと磨いているんだぞ!しかも俺の隣で!置物だなんて思えるわけないだろ。いつ刺されるか分かったものじゃない。


「そんなことよりマルクス!早く説明に入りましょう」


 こいつ、全部そんなことやこんなことで済ませやがる。

 マルクスは王女の意思には背けないのか、説明を開始する。


「人は誰しも魔力を持っています。ただ、訓練しなければそれを引き出すことはできません。引き出す量もやはり訓練次第です。しかし、自身の持っている魔力量を超えて引き出すことは不可能です。ただ、その魔力量は訓練によって増やすことは可能です。ここまでで何か質問はございますか?」


 カトレアも馬鹿ではないようで、質問はないようだ。意外にも真面目に話を聞いている。

 質問がないことを確認すると、続きを話し始める。


「では、実際に引き出す練習をしてみましょうか。まずは体の内側を意識してみてください」


 体の内側を意識。


「何か感じませんか?」

「なんかもわっとするかも」


 地球にいた頃では感じることのなかった感覚だ。


「ではそれを手まで持ってくるイメージをしてください。魔力の操作はイメージと反復練習が特に重要となってきます」


 これを手のあたりに……こうか?

 目を開くと、うっすらとだが、確かに魔力を手から感じる。

 これでいいのかと、マルクスの方を見てみると目を見開いて何かに驚いていた。


「まさかこんなに早く……」

「え?」

「こんなにも早く魔力操作を身につけた人は初めて見ました」


 横を見ると、物騒メイドのスミレも驚いているようだった。

 俺才能ある?もしかしたら、これが勇者の力なのかもしれない。

 普通ならこれを身につけるのに一週間はかかるそうだ。


「それならば、次はこれをどうぞ」


 そう言って渡されたのは直径二十センチほどの水晶玉だった。


「それに魔力を込めてみてください。そうすると使える属性がわかります」


 属性。火・水・土・風・闇・光の六属性がある。人には生まれつき使える属性が決まっているらしい。この水晶玉を使うとそれが分かるとか。

 おいおい、このままいっちゃうと勇者パワーで全属性とかになっちゃうぜ?


「よし、じゃあ早速」


 息を吐き出して集中する。先程の感覚を思い出し、手に魔力を集中させる。


「こ、これは……!」

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