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ノック

 翌日、一晩かけてようやく落ち着くことに成功した。


 まだ覚醒しきっていない頭で、昨日のことを思い返す。

 その時、部屋のドアがノックされた。


「はーい」

「失礼します」


 入ってきたのは、ジジィだった。


「帰れ」

「なんですと!」

「普通朝部屋ノックするのはメイドさんだろ。朝からジジィのしわくちゃな顔なんて見たくねぇんだよ!」

「なにを、私もまだまだ現役ですぞ?」


 なんでメイドと張り合おうとしてんだこのジジィは。


「何の用だよ」

「朝食を持って参りました」

「それこそメイドさんのお仕事だよね?宰相のやることじゃねぇだろ。働け」


 よく見ると、確かに朝食らしきものを乗せたワゴンが廊下にあるのが見える。


「よくお気づきになられましたな。確かにメイドから奪ってきましたぞ」

「何してくれてんの!?」


 このジジィは昨日から、宰相という重要な役職に就いているとは到底思えないような行動しかしない。

 それに、異世界に来たら朝メイドさんが起こしに来てくれるっていうテンプレがあるだろうが。なんでその重要な役割をテメェが奪ってんだ。


「まあまあ、後程また呼びに参りますので」

「二度と来るな」


 ジジィは朝食だけ部屋の中において去っていった。




 --------------------------------


 テレビや、電話があるとまるで異世界に来たような感じがしない。過ごし方が地球の休日と全く一緒だ。

 朝食を食べ終わりしばらくだらだらテレビを見ていると、部屋の扉がノックされた。

 どうやらジジィが来たようだ。

 しかし、今テレビがいいところだ。この世界にも魔法があるようで、その魔法を使ったショーを見ている。これが終わってから対応しても遅くはないだろう。


 少し経つと、またノックの音がする。せっかちなジジィだ。


 コンコンコン


 ちょっとくらい待てや。


 ゴンゴンゴンゴンゴン


「あー、もうわかったよ」


 そんなに強くたたかなくたっていいだろ。仕方なくテレビを消し、出ることにする。


 ドスドスドスドスドスドス


 ちょ、強くない?そんなことしたら扉壊れちゃうよ。

 どうやら、俺が待たせたことに対し相当お怒りらしい。


「分かったから扉叩くのやめブフォアっ!?」


 と、扉が飛んできた。あまりのノックの激しさに扉が壊れてしまったらしい。

 まさか、本当に扉壊すとか思わないじゃん。


「テメェ!俺を殺す気か!」

「あ、やっと反応してくれました」

「ん?」


 聞こえてきた声は、ジジィのとは違いかわいらしい女の子の声だった。

 扉をどけてみてみると、金髪碧眼の美少女がそこにはいた。ウェーブのかかった金髪は腰のあたりまで伸びている。

 一瞬見惚れてしまったのも仕方ないだろう。それほどの美少女だった。


「反応ないからもしかして寝てしまわれているのかと」

「だからって扉壊すほど強く叩くことないよね」

「ということでついて来てもらってもいいですか?」

「なにがということなのかは分からないけどいいだろう」


 ここに来てから頭のおかしな人間ばかりだ。唯一まともだったのがルベルトさんくらい。

 それにしても、この目の前の女。まさか王女様とか言わないよな。


「あ、申し遅れました。私、フォルストレーベン第二王女のカトレアです。よろしくお願いしますね!」


 王女だったかぁぁぁ。金髪碧眼美少女。確かによくある展開だ。でも、ノックで扉を壊すような狂暴な王女様なんて俺は見たことがない。この異世界召喚にそういうものを求めること自体が間違っていることに、そろそろ気づくべきなのだろう。


「ここです。どうぞ」


 中へ入ると、合計十人ほどの大人がいた。その中でも分かるのが昨日会った三人だけだ。見たことはなかったが、分かる。ここがよく異世界もので最初に通される場所。玉座の間とかいう場所だろう。


「君がヒロト君だね」

「はい」


 俺に声をかけたのは一番偉そうにしている人、王様だった。ルベルトとカトレアの髪と目はこの人からの受け継いだのだろう。隣に座るのは間違いなく王妃だろう。こちらはルベルトと同じ赤髪赤目だ。


「まずは、息子のしたことを謝罪する。すまなかった」

「人の名前を尋ねたら自分も名乗れ」


 と思ったが、心の中だけにとどめておこう。


 いつの間にか俺の体は地面に押し倒され、首元にはナイフが当てられていた。


「あれ?」


 もしかして俺、殺される?この部屋の空気が確実に凍りついている。もしかして、さっきの口に出てた?

 当てられたナイフに少しだけ力が込められ、首元から血がすうっと垂れていく。


「ごめんなさい調子乗りました!許してください!」


 人生で最も口が回った瞬間だった。

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