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手違いです

 目が覚めた時、一番初めに知覚したのは言い争う声だった。

 異世界召喚されたのだから、てっきり王女様や聖女様からの説明がすぐにあると思っていた。しかし、実際には男が二人喧嘩をしている様を見せつけられるという予想だにしていない展開だ。

 あまりにもテンプレからかけ離れている。この時点で俺は悪い予感を感じていた。


「一体どうなっているんだ」


 全く気付く様子のない二人。現状把握のため、仕方なく話しかける。


「あの」

「「っ!?」」


 ようやく気付いた様子の二人は、一度アイコンタクトを取り頷き合うとこちらを見て。


「「すみませんでしたぁぁぁぁ!!!」」

「え?」


 現状を把握するために話しかけたのに、さらに謎が深まった。

 なんで俺は謝られてんの?

 見事すぎる土下座を前にして、固まってしまった。目の前の二人は頭を下げたまま動かない。

 一瞬の静寂。……これなに?

 このままでは何も分からないので、意を決して話を聞くことにした。


「これは、一体……?」

「「すみませんでしたぁぁぁぁ!!!」」

「いや、あの」

「「すみませんでしたぁぁぁぁ!!!」」

「話を」

「「すみませんでしたぁぁぁぁ!!!」」

「うるせぇ!こっちの話聞きやがれ!」

「「すみませんでしたぁぁぁぁ!!!」」


 二人はいつまでも謝り続け、こちらの話は聞く耳持たないようなので、一旦落ち着くまで待つことにする。


 改めて目の前の二人を見てみると、白髪じじぃと赤髪イケメン。思ってもみなかった組み合わせだ。

 こういうのってテンプレだと美少女が出迎えてくれるじゃん。なんでこんな頭のおかしい男二人なんだよ。

 周りを見渡してみると、20畳ほどの部屋。大理石の床には魔法陣らしきものがある。二人の服装も鑑みると、やはり異世界に召喚されたと考えていいだろう。

 もうそろそろ落ち着いただろう。そう思い、二人に顔を向ける。


「zzzzz」

「寝てんじゃねぇか!さっきまで謝ってた奴の態度じゃないだろ」

「はっ!」

「私は寝てはおりませんぞ!」


 初めて謝罪以外の言葉を聞いた気がする。しかし、これでようやく話ができそうだ。

 イケメンと目が合い、話し合いを開始しようとしたその時。


「な、なんだお前は!?」

「こっちのセリフなんだけど!」


 さっきから何なんだこいつは。一向に話が進まない。


「ルクハルト様。現実逃避はやめてくだされ。先程自分自身で召喚なされたではありませぬか」

「クッ……」


 クッじゃないだろ。

 やっぱり俺召喚されたのか、この男に。目的は何だろうか。魔王を倒せとかかな?いやでも、さっきめちゃくちゃ謝られたのは何だったんだ。


「説明してもらってもいいですか?」


 一向に話す気がないようだったので、こちらから聞く。普通逆だよね?「落ち着いてください!説明させていただいてもよろしいですか?」ってむこうが聞いてくる奴だよね。


「はぁ、仕方ねぇな」


 なんでダルそうにしてんだよお前が呼んだんだろ。と言いたいのをぐっと堪える。やっと話が進んだんだ。今止めるわけにはいかない。


「さっき書庫歩いてたら勇者召喚の書を見つけたんだ」


 勇者召喚。やはり、俺は勇者なのか。


「それで、面白そうだからやってみたんだ」

「面白そうだから!?そんな軽いノリで勇者呼ぶの!?」

「仕方ないだろ。まさか本当に勇者が召喚されるなんて思わなかったんだから」


 ん?ちょっと待てよ。召喚されるなんて思わなかった?それって、本当は勇者呼ぶつもりなかったってことか?

 俺が固まっていると、分かりやすく教えてくれた。


「つまり、手違いだ」

「…………」


 なるほど、手違いか。つまりは勇者が必要だから呼んだわけではなく、間違って俺はここに来ちゃったわけだ。ふむふむ。


「ふざけんなぁぁぁぁ!!」

「だからさっき謝っただろ!」

「謝って済まされる問題じゃねぇんだよ!必要ないのに勇者なんて呼んでるんじゃねぇ!」


 まさか手違いで召喚されるなんて思わなかったぞ。


「魔王は?魔族からの侵攻は!?」

「あるぞ」

「そうだよな。勇者が必要ないのにそんなのあるわけ……ってあるの!?」

「あるぞ、なんか問題あるのか」

「勇者必要じゃん!」


 なんだ、さっきのは冗談なのか。よかった、まさかそんなわけないと思ったんだよ。


「でも勇者はいらない」

「……え?」

「この国はそういうものとは縁遠いからだ」


 もしかして、俺本当に要らない子なの?なんのために呼ばれたのか聞いたつもりなのに、特に目的がなかった所か、むしろいらない……?


「そういうことだ、帰れ」

「え、帰れるの?」


 帰れるなら、まあ、いい……のか?いらない子扱いされた上にこの後どうすればいいのか分からなかった俺は、それを聞いて安心する。


「無理だ」

「テメェ、ふざけんなよ!」


 先程から、本当に申し訳ないと思っているのか疑わしい態度だ。

 そこで、急に扉が開け放たれた。


「一体こんなところで何をしているんだ、ルク」


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