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プロローグ

「お前に剣の才能はない。去れ」

「そんな、ハーディス教官っ、待ってください! 僕はまだやれます、待って――」


 木製の大扉が徐々に閉ざされていき、教官の影が小さく、そして狭くなっていった。彼は涙ながらにその光景を見ていた。


「――あっ、あぁ……」


 扉が完全に閉じきられた音が響き、そこでようやく自分が剣士育成学校から追い出されたのだと知った。


「これから僕はどうすればいいんだ……」


 彼の泣き言は、誰もいない深夜の門外、街の静寂の中に消えた……


◇◇


「大丈夫よルカ、剣士になれなくたって、他にもたくさん仕事があるの」

「いやだよ、母さん。僕は剣士になって父さんの敵をとるんだ」


 なだめている母ケティは、落第した自分の息子ルカのあきらめきれない態度に辟易していた。父は長い大戦のさなか、剣士として戦場に散った。ルカが八歳のときである。


 ルカは幼児の時に魔力適性検査で不適合と診断されていた。そのため、花形職業である魔導師としてではなく、剣士として大成し、戦争に参加しようと考えていた。


「あなたが背負い込むことじゃないでしょう」

「じゃあ僕以外に、誰が背負い込むって?」


 ルカは十七歳になっていた。三つ下に妹がいるが、妹は一般の女学校で生産者としての教育を受けている。非力だが、気立てがよく、手先が器用だ。よく母親の内職の手伝いなどをしている。


「屁理屈言わないで、そんなことより、これからどうするのか考えたらどうなの」

「……母さんは、父さんのことを、もう忘れようとしているんだ……」

「え?」


 ルカは一筋の涙を流して、いきなり家を飛び出した。ケティは追いかける間もなく、玄関の先から大声で息子の名を呼んだ。返事はなかった。


「あの子、こんな夜遅くに飛び出して、……どうするつもりよ」


 飲み物を飲みに二階から下りてきたパジャマ姿の娘リリーが玄関口で立ち尽くす母に声をかけた。


「お母さん、どうしたの?」

「……なんでもないわ、早く寝なさい」



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