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クロの日常  作者: 暁 海響
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すぴー…すぴー…すぴー……ふ、にゃあ………すぴー


「あー! にゃんにゃーん!」


ビクッ

なっ、なにごとっ!?

………あ。

……しまった。


そう、ボクはこの時油断をしていたんだ。




今日はね、朝起きた時、すっごくぽかぽかで風もふわふわでとっても気持ちがいい日だ! って思ったの。


ボクの毛もいつもよりフワフワだったし、おひげもピンとまっすぐだったんだもの。

なんだかとってもいい日になりそうな予感がしたんだ!



こんな日にはおさんぽが一番だよね!

ボクはまだ高い塀の上には跳べないけれど、小さな木くらいら登れるようになったんだ。

すごいでしょ?

小さな木から塀の上までならボクでも跳べるんだよ?

ちょいちょいって前あしを伸ばしたら届くんだもの。

だからまだ塀の上にひとっ飛びできなくても、もんだいないんだ!

時々、モクソクをまちがえちゃって落っこちそうになるけど、ボクはネコだから大丈夫だよ! あっ! ほんとに時々なんだよ!? ほんとーに!


今日はうまく塀の上に登ることができた。やっぱりいい日!



ボクのひみつの抜け道の一つを通って、カキネのすき間からぴょこっと顔を出したら、「ワン! ワン!」って声が聞こえてきて、ちょっとだけビックリしちゃった。


()()()が吠えてるみたい。

だいずっていうのはね、“ぴかぴかのおじさん”ちのシバイヌの名前なんだよ。


だいずはお庭から吠えてるけど、カギのついた扉からは出られないんだ。かわいそうだよね。

ボクが出してあげてもいいけど、ボクにはカギに届かないから残念だ。


ワワワワワン!


もう。あんなに吠えなくたっていいのにね。ボクはシロさんじゃないんだよ?


シロさんはネコなんだけど、だいずとよく一緒にいるところを見かけるくらい仲良しなんだよ!

今日はシロさんいないからボクと遊んでほしいのかな?

でもボクは今日はおさんぽをするって決めてるからまた今度ね!



おさんぽを続けていると、だあれもいないコウエンを見つけたんだ。

コウエンにだあれもいないなんてすごい!

なんていい日なんだろう!


コウエンっていうのはね、気持ちのいい芝生や砂場があって、登りやすい木がいっぱいあって、いーっぱい走り回れるところなんだよ。

ボクのほかにも何匹もミリョウ(魅了)されてる、とっても楽しいところなんだ。


その遊び場のことを「コウエン(公園)って言うんだよ」って教えてくれたのは、物知りのサビさん。

黒と赤のまだら模様が素敵な大人のメスネコだよ。

サビさんはボクに色んなことを教えてくれるんだ!


コウエンはとっても良いところなんだけどね、残念なこともあって。

それが今ボクのことを「にゃんにゃん」と呼んだ声。

―――そう、ニンゲンのちっちゃいの。


コウエンにはたくさんのちっちゃいのが集まることがあるんだ。そんな時はコウエンに近づいちゃダメなんだよ?

だってボクがもっとちっちゃい頃にコウエンで遊んでいたらね、ニンゲンのちっちゃいのに囲まれてつかまっちゃったことがあったの。

「かあいいねー!」って言いながら、ぎゅーーーーってするんだ。

ぎゅーーーーって!

ボクつぶれちゃうかと思ったよ。


そしたら、ほかのちっちゃいニンゲンが「あたしもー!」とか「ぼくもー!」って言ってボクをひっぱりあったんだ。

ボクちぎれちゃうかと思ったよ。


ニンゲンのおっきいのが止めてくれなかったら……ううう。…うん。本当に怖かった。

きっとニンゲンのちっちゃいのは、ぎゅーってしすぎて縮んじゃったんだと思うんだ。

ぎゅーが大好きなのも困りものだよね。


だからボクは、絶対にニンゲンのちっちゃいのには近付かないって心に決めたんだ。

だってボクまでもっとちっちゃくなっちゃうもん。


それなのに…それなのにボクはなんて失敗をしてしまったんだろう!

あまりにもおひさまがぽかぽかで気持ちよくって、こんなに広いコウエンの真ん中でゴロゴロして、あまつさえ寝てしまうなんて!

今日はとってもいい日だと思っていたのになんてこと!?


ああ、早く逃げないと!

ちっちゃいのがこっちに走ってくる!


そう思うのに、おどろいたせいで体がぎくしゃくして思うように動けない。

両手を伸ばして駆け寄ってくるちっちゃいのにボクは体をすくめることしかできない。


(ダメだ!)


そう思った時に。


「ナアン」

「あ! こっちにもにゃんにゃん!」


ちっちゃいニンゲンの前を一つの影がよこぎった。

黒と赤のまだら模様。


(あ! サビさん!)


サビさんが間に入ってくれたおかげで、ちっちゃいのはサビさんへと方向を変えていった。

そのすきにボクはどうにか体を動かしてその場をはなれることができた。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ」


まだドキドキしている。


「こ、こわかったぁ…」

ようやくおしりを地面に着けると「ナアン」という声が聞こえてきた。

「おバカね、クロ」

「サビさん!」


サビさんはいっしょうけんめい逃げてきたボクにすぐに追い付いてきたみたい。

ちっちゃいのにつかまってなくて本当に良かった。


「助けてくれてありがとう、サビさん!」

「ふふふ、いいのよ。でも、今後はもっとちゃんと気を付けるのよ?」

「うん!」


サビさんはとっても物知り。とっても頭がいいんだよ。

ニンゲンにつかまることなんてしないし、ひみつの近道なんてのもいーっぱい知ってるんだって。だからボクよりも早く逃げることができたんだよね!


「まぁ、今日の天気はとっても気持ちがいいからあそこで寝ちゃうのは分かるけれどね。ふふふ」


そう言ってサビさんは尻尾を揺らしてどこかへ行っちゃった。

サビさんはとっても頭がよくて、とっても優しくて、とってもきれいでかっこいいメスネコなんだ!

えへへ、サビさんに助けてもらっちゃった!

やっぱりいい日!

今日もありがとうございました。

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