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始まりの手紙

匠が仕事を終え帰宅したのは夜の10時だ。いつも通りに仕事を終え、ぼろアパートに帰る。手紙など来ない、チラシしか入っていない寂しいポストを確認してから部屋に入るのが匠の習慣だ。しかし、今日は違った。チラシの下に茶封筒の様なものが見える。

「なんだ?手紙?」

匠はチラシの下から見える茶封筒だけを取り出して差出人を確認した。差出人は、


真中凛


「まなかりん?かな…誰だろう。間違えたのかな?」

匠はもう一度茶封筒を確認する。宛名は進藤匠。正に匠に宛てたものだった。匠は不思議に思いながらもその封筒を持って部屋の中に入る。


「はさみ、どこしまったかな」

何かを開封する時は手で切っていた匠だが、何故かこの封筒は丁寧に切らなければならないと思った。6畳程しかない部屋からはさみを見つけるのには、そう時間は掛からなかった。

「あったあった」

テレビ台の上から2番目の小引き出しからはさみを見つけると、丸い小さなテーブルの上で中の手紙を切らないように注意する。中には綺麗に3つ折りにされた手紙が一枚入っていた。


『お久しぶりです。覚えていますか?小学校の時同じクラスだった真中です。いきなり手紙を書いてしまってすみません。近況報告でもしようかと思いましたが、興味ないですよね?私が進藤君に手紙を書いたのは伝えたいことがあるからです。

「あなたの無くした記憶の破片、取り戻しませんか?」

この手紙を読んであなたが何かを感じられたなら◯月◯日13時に、あなたがあの日行かなければならなかった場所で待ってます。』


手紙はそれで終わっていた。

「どういう意味だよ。あの日っていつだよ。行かなければならなかった場所ってどこだよ」

匠にはすぐに思い当たる様なことはなかった。匠はすぐに押入れを(あさ)り始めた。

「どこだ?多分あるはず…」

匠は押入れから段ボールを引きずり出して、何かを探す。

「ん?これだ!埃っぽいけど、まだ取ってあったんだ。よかった」

匠が段ボールから取り出したのは小学校の卒業アルバムだった。匠は自分のクラスのページを探し、真中凛の名前を探す。しかし、真中凛という名前は見つからなかった。

「いない…どういうことなんだ?もしかして、5.6年の時に一緒だったわけじゃないのか」

匠の小学校は2年ごとにクラス替えがある。匠は1.2年、3.4年で一緒だったクラスメートにすぐに電話を掛けた。


「あ、高野(たかの)か?進藤だよ。久しぶり!」

「匠か!?久しぶりじゃんか。どうしたんだよ」

「いや、実は聞きたいことがあって、お前真中って奴が1.2年の時俺らのクラスに居たか覚えてるか?」

「真中?誰だ?そんな奴いなかったと思うけどな」

「そうだよな、ありがとな。また連絡するよ。今度、飲みにでも行こうぜ」

匠は電話を切った。すぐにもう一度電話掛ける。


「あ、久しぶり、進藤だけど。真奈美か?」

「なんや、久しぶりやないの、どうしたん?」

「もう、10年以上経ってるのにまだ関西弁なのか?」

「関西弁はウチの個性やの。ほっといて」

「悪かったよ。で、本題なんだけど、小学校の3.4年の時、俺らのクラスに真中って奴いたかどうか覚えてないか?」

「真中?誰やの?それ」

「いや、わからないならいいんだ。ごめんな」

「なんかあったん?ウチで良ければ相談乗るけど」

「大丈夫だよ。ありがとな」

「そう?あっ、真中さんかどうかは知らへんけど、5年生くらいの時にどっかのクラスで転校した子おらんかったかな?」

「え?いたかそんな子」

「あんたんクラスの子ちゃう?」

「いや、覚えてない」

「ウチも何かわかったら連絡するわ」

「あぁ、頼む」

匠は電話を切った。

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