愛 内なる声{ガイド}
=愛=
愛は矛盾している
近づきたいのに、離れたいからだ
安らぎと恐怖が同居しているからだ
献身の裏に優位が隠れているからだ
愛は破壊屋だ
硬い防御服を剥がされるからだ
こだわり続けてきた道理を粉々にされるからだ
主人公であるという幻想などは吹き飛ばされるからだ
愛は詩だ
創ろうと思っても、創れないからだ
時と場所を選ばないからだ
それは彼方から、やって来るからだ
愛は無時間だ
退屈というものを知らないからだ
欲することを知らないからだ
一秒先を知らないからだ
愛は音楽だ
二つのものを、ひとつに戻すからだ
雑踏から沈黙を生み出すからだ
心と体を越えて行けるからだ
=内なる声{ガイド}=
思えば
{ガイド}とは長い付き合いだ
子供時代から、{ガイド}の声を聞いていたものだ
彼が語りかける時
言葉は使用しない
ある種の
{ムード・フィーリング}で語りかける
彼が語り出すと
穏やかな磁力が生じ
過去と未来は消滅する
それは
楽しい訳ではなく、つらい事でもない
嬉しいような高ぶりでもなく
ブルーな落ち込みでもない
無重力で
無思考で
無努力だ
えてして彼は
安全な群れの中で守られている時には
あまり語りかけて来ないものだ
大草原に一人立つ時
あるいは
ジャングルの道なき道を進む時
又は
何かが達成されて、満たされ豊かになった時
このような時に
語りかけて来ることが多い
彼の声に従って行動することは
正しい行いでもなく、間違った行いでもない
良い行いでもなく、悪い行いでもない
未知なる出会いへの憧れであり
ひとつ{全体}からの深遠な誘惑への応答であり
母なる海に帰りたい衝動であり
永遠の生命への参入である