春の祭り(下)
お腹が空いた。
誰かに声かけられたので、私は後ろに振り向いた。桜が体に散らかしているシー君はそこにいた。雪合戦の時マイちゃんと話してばかりから、全然話せなかったけど。私と同じく、秘密の同士があって気持ちが軽くなったみたい。最近は明るくなって、他の人に気軽く接触するようになった。
「こんにちは、シー君。どうしたの?桜の溜まりに突っ込んでいたのかな?見て下さい、私が桜を使って直したワンピースと鞄。凄くない?シー君はあの変な粉はなんなのが分かる?」私はシー君のそこらじゅうにある桜を取って外しながら、自慢の作品を見せた。「もしこれをウールに付けたら、着物になるのかな?他の花にも効くのかな?」
「僕は膠みたいなものと思いますが、神官さんから貰った物なので、神様からの不思議な物かもしれません。それにしても、リタちゃんは前より元気になっていますね。良かったです。でも着物?リタちゃんは日本人ですね。でもレクリータはもう作っていると思いますよ、着物。」確かに、皆に見せたら絶対に転生者のことがばれる。ダメダメ、私が正式にレクリータの文化に触る前には我慢しとこう。
「所で、シー君は何をしているの?」
「僕は今から桜の料理を作りに行く予定です。一緒に来ませんか? 因みにマイちゃんはあそこで飾りを作っています。その後は僕達を連れてパレードに参加するそうです。」
桜料理!それは食べたい!餅とか、羊羹とか、クッキーとか!「行く!」それどもご飯とかを作るかな?どちらにせよ、食べ物はなんでも美味しい、食べ物になれるものなら凄く嬉しい!桜って、案外万能な植物かもしれないね。綺麗で、食べ物になれて、飾りにもなれて、確か香りなものも作れて。素敵な花だね。ああ、短い寿命だけは惜しい所だけど。
シー君に付いてって、途中にも桜を拾って、リナ達がいる主婦の集まりに入っていた。私達はまだ子供で、身長が短いから、一番真ん中に集まっている。そこには同じく神殿の巫女さんがいた。しかも食材は全部彼女が提供するみたい。なにそれ、いい人過ぎる。つーか、その食材は何処から貰った?んんん~分からない。まあいっか!
「こんにちは、桜料理を学びに来ました。どうぞよろしくお願い致します。」
シー君は礼儀正しいね、私に対しても敬語だもんね。やっぱりダメ口は良くない、私は口調を直しとこ。とは言え、私とシー君は桜を粉末にすると、ジャムと餡を作るだけ。パウダーを作るには、えーと。先ずは桜と葉っぱも乾かす。中身の水分を全部取って、塩をかける。そして?器に入れて、竈に入れる!あ、ここは巫女さんがやってくれるね。なせなのは分からないが、すぐ横に巨大竈があった。何処から持って来ただろうか?
っで?桜に水がなくなって、乾燥な状態になると、力技で小さく粉砕する。工具として簡単な石茶碗と石棒もあるが、粉屋に見たことがある石臼もある。どうしよう、私はそれを使ってみたい。そしてこの桜パウダーをリナ達に渡すと、色々なお菓子を作れる!次に餡を作る。塩抜きしか桜を切り、ここはリトとリカに任せて。切った桜をを普通の餡と混じって、練る!試しにちょっと食べてみる、美味しい!ってシー君、こっち見んな。
「ごめん、お腹空いた。リナ~、食べ物ある?」もう昼ご飯を食べる時間だからね。リナに聞いてみると、しょうがないね、あん~っと言いながらリナがさっき作った桜餅を私の口に詰めた。美味しいな~。さてと、最後はジャムを作ってから他のところにあったてみよう。砂糖と檸檬と桜花を混ぜりあって、巫女さんに渡して。て、火をかける、そしたらゆっくりちょっと冷めてから贈り物の硝子瓶を入れる。
どうしよう、楽しい、昔は恥ずかしいから、こういう物を試す勇気がないけど。自分の手で何かを作るのって達成感が感じるね。なんか、自分が所有権を持ったいるか、いつもよりも意味を感じられる。
「リタちゃん」シー君は乾燥した桜を粉末に粉砕しながら、私に声を掛けている。「折角だから、神様に何かをお差し入れたらどうでしょう?この食材達、全部神殿から来たものでしょう、お礼を言わなくては?」そうだね、こうして楽しい時間を過ごせたのは、神様のおかけ様ですし。神様に会わなかったら、今頃廃人になったかもしれません。助けて貰ったから、礼を返さないと…このジャム、よく出来ていると思う、さくら便りと一緒に神殿に差し上げるか。硝子瓶にも桜の模様を入れて、便りの方で、「ありがとうございました。」と書く?
「シー君はお礼の言葉を知っている?心が込めている表現が思いつかないよ。」感謝しています?誠に御礼を申し上げます?恐縮です?それは違うな。あんまりにもレクリータだとばらしちゃう言葉は避けたいね。「そうだね、ジャムを上げると祝福の言葉ならどう?」確かに、考えてみるか。春が訪れまして、私は生きています?この度?桜のジャムを上げる、差し上げます。御礼として、んん、神様は食事するかな?あと、元気にしてください?お元気でいることを心からお祈りします?
ま、そんな感じで書くならいいとして、ちゃんとどの神様に上げるのを書かないと。えーと?ウネさんが付いている神様かな?4歳のリタの世話をした神様!よし、これを巫女さんに上げよう。結構いい感じじゃない?さてと、もっと食べ物を作るか?それども…「リ~タ~ちゃん!!一緒に飾りを作ろう!可愛いだろう!あ!シーちゃんもいる!」…マイちゃんですね。
食べ物の方がいいと思うけど、飾りを作るのはそう難しくないから、一つくらいはいいか?まて、飾りは花冠のこと?あれは茎が長くない花じゃ出来ないはずだ。どうやってするの?
「ほら、リタちゃん!神官さんから貰った粉で、桜を集めるさ!コロコロで可愛いでしょう、これを!リボンとかに付けるさ!それで、他の花と組み合わせたり、線に付けたりもするさ!私!リタちゃんとシーちゃんの分も作っているよ!着けてみて!で、皆でパレードに行こうよ!」
…すごいハイテンション。まあ、マイちゃんからの飾りはありがたく使うか、花冠が半分になって、カチューシャな感じになっている。いや、御伽噺しかでない妖精達しか着ない、っと、思うけど。折角マイちゃんが作ってくれたし、それにマイちゃんはもう半分を着てて、お揃いになったからいいとしよう。「ありがとう、マイちゃん。お揃いですね。」私からも何かが出来るかな。この桜達を球の形に集めて、同じ花冠…ダメか。
マイちゃんって、お洒落が好きはずだ。髪飾りじゃなくて、腕飾りならどうかな?櫻球を二つ小さなリボンに付ける。でも裁縫のことに関するものもいいかもね…そうだ!針を置くリスクバンド。何だっけ?針刺しだ!針刺し付きの櫻腕飾り!それだ!あ、でも、これは家でこっそり作ろう。シー君も含めて三人分。今は部品を作るだけ。たーくさん櫻球を作ろう!
…今更けど、櫻って保存できるかな?腐れたりしないよね?「ねーシー君、ちょっと聞きたいけど。」……んぷ、ぷ、ぷぅ!「リタちゃん…こっち見ないで下さい。」ご…ごめん、シーちゃん、似合っています、ぷぅ。シー君の頭にはマイちゃんからの花冠が飾っている。しかし、いつもより豪華で、後ろには桜な髪に見えるくらい垂れ下られている。マイちゃんの好意で、断れないでしょう。とは言え、流石にここままでパレードに行ったら他の子に笑われるね。こっそり外しとこう。「マイちゃんが見つからないように、マイちゃんの後ろにいた方がいいかもしれません。」
「悪意しか感じられませんが、そうします。それより、リタちゃんは髪飾りとか好き?」シー君はどうしよもない顔で手作業をしながら、私に質問した。「昔から着けていませんよ、憧れはありましたが。」どうして私に聞いた?知りたいけどシー君はただ「うん」っと言って手作業を続ていた。そんなことより、マイちゃんはもう大道の方向で走って、私達を呼んでいるけど。パレードがもう直ぐくるから早く来て!っと言っている。
パレードというのは、皆で一緒にこの町の大門に行って、冬が来てから閉じた門を再び開けるところを見ることだ。先程さらっと見たが、神官と巫女達は何か大きな箱を背負って、先導として歩いていた。やはりこの祭りを含めて、こういう儀式は神殿が主催するものかもしれないね。しかし、為せだろう?その後ろについている人達は暗そうな顔をしている。他の人達は嬉しいのに、冬が好きか春が好きじゃないから?
どちらにせよ、今の私が気にするものではない。今は、興奮し過ぎて私の手を取って踊り始めたマイちゃんどうにかするのが最優先。でもシー君だけ横で見ているのがムカつくからシー君も巻き込もう。ふぅー、遠くから門が開いたのが見えた、これでパレードが終わってーない!皆がはしゃいて外に行きたかっている。ちゃんと森の土を触って、「お帰り」を言わないと儀式が終わらない。
ところで、神官達は別の仕事をしていそうだ。箱を開けて、「いってらっしゃい」と言っている。何あれ?塵なのか?とにかく、これで祭りの最後だ。子供は家に帰って寝て、大人は夜の祭りを開くだそうだ。ああー、疲れた!色々があって、忙しい一日だけど、楽しかった。面白い物も学んでいるし、いい考えもしたし、偶には息抜きもいいかもしれないね。
帰り道は桜を拾っとこう。
民族とか伝統とか分からないから想像力に任せた。花咲爺さん。