『神威零紗という女』 作者:あき
「「ごちそうさまでした。」」
夕食を食べ終えた俺と神威さんはとんかつ君に感謝の意を込めて丁寧にあいさつをする。
うむ、しかし美味であった。我ながらに美味であったと褒め称えよう。
てかここまで違和感なくしれっと一緒に飯まで食ってしまったがこの状況どっからどう見てもおかしくないか。
「なあ、神威さん。」
「なにかしら?」
「なに考えてます?」
「なにも?」
「あ、そうでしたか...。」
いやおかしくねぇかあ!?!?
なに今のすっごい無駄なやりとり!使った10行返せよ!!
めっちゃテレビ真剣にみてるし。いやお笑い番組ってそんな真顔でひたすら見るものじゃないからね神威さん。
やめて!芸人さん殺しやめて!!
「神威さん...それそんな真顔で見るような内容じゃないと思うぞ。」
「...ごめんなさい。こういう時、どうしたらいいかわからないの。」
綾波か!!綾波○イなのか!!
「笑えばいいと思うよ。」
ヤシマなのか!?ボジトロン撃ったのか!?
いやだからそういうことじゃなくて!!
「そろそろ帰るわ。夕食ありがとう。とても美味しかったわ。」
「え?あ、あぁ...気をつけてな。」
「はい?」
ん?え?はい?え、なに?なんだ?
「あなた、まさか送らない気なの?こんな可憐な美少女を夜中にひとりで帰宅させる気なの?あぁもしかして私がひとりで夜道を歩いているのを後ろからつけてきて、変質者が私を襲ってくるのを電柱に隠れて観察しようってことかしら。私が服を引き剥がされ変質者の欲望のままに身体を弄ばれる様を見て興奮したいというのね。」
「わかったよ!送るよ!!送らせてください!!」
「わかればよろしいのよ。さぁ行くわよ。」
なんて強引な女なんだ...。
てかまだ21時だぞ、ぜんぜん安全だろ...。
靴を履き玄関を出て鍵をしっかりと締める。
ちなみに我が家はアパート。家賃4万とかなり安い方だ。おまけに国からの支援金で月に10万支援金が振り込まれる。
まあ贅沢できる程じゃねーけどな。
「神威さん家ってどのへんなの?てか歩いて行ける距離なのか...。」
「問題ないわ。ここから歩いて15分程よ。
あぁ、あと...私のことは特別に零紗と呼ばせてあげるわ。」
「あ、けっこうでs...呼ばせていただきまぁすっ!」
やんわり断ろうとしたら微笑みながら喉元に剣を突き立てられたので言うことを聞くことにしました☆
ひどい。暴力反対!
「そういや、神威さ「あん?」げほげほ!れ、零紗さんは「さん、はいらない」...零紗は剣の神憑きナンダネー.....。」
この威圧感である。
「そうよ。自分の魂に刻まれた剣を生み出せる能力。それは人によって形状や能力が変化する、と言われているわね。
それと『空間』の神憑きよ。と言っても空間に物をしまえるってだけの能力だけど。」
「でもそうすると、いつもわざわざ重い剣を持ってなくていいから楽だな!」
あといつでもお菓子とか持っていき放題じゃん。やば。俺も使いてえ。
「馬鹿な考えが漏れているわよ。」
「えっ!な、なんの話かなぁ~...。」
「お菓子詰め放題。」
「じゅるり...はっ!し、しまった!ついよだれを垂らしちまった!!」
「ふふっ、あなたって面白いのね...ここでいいわ。ありがとう。」
「もういいのか?まだぜんぜん歩いてないけど...。」
どのくらい歩いてないかっていうとまだ俺ん家見えてるぞ。
たぶん3分くらいしか歩いてないぞ。
「いいのよ。まだこんな時間だし。それじゃさよなら、彩希...。」
零紗の背中に手を振る俺はなんだか不思議な感覚に包まれていた。
その長い黒髪がふわふわ揺れる後姿を。
「前にも、どこかで...。」
んな訳ないか。コンビニでもよって帰ろう...。
神威零紗。年齢的には俺と同じくらい?
剣と空間の神憑き。高飛車で、でも少し浮世離れした感じが幼くて...。
そんな彼女との物語は、ここから始まった。