薄紫の花言葉
「あー!! 葡萄だー!!」
「本当だ!! おいしそう」
車窓から見える山の一角に鮮やかに映える薄紫。幼い私たち。懐かしい思い出。
何回も季節が巡り、また春がきた。私の隣にいた君は、もうすっかり大人っぽくなってしまって、話さなくなった。
「綺麗だなぁ、今年も。美味しそうな葡萄、ってね〜」
ひとり、学校からの帰り道ぽつりと呟く。
「何言ってんだ。あれ、葡萄じゃないぞ」
「えっ、あ……知ってるよ」
驚いて言葉に詰まる。けれど心地いい声色。久しぶりの君の気配。君はふっと笑みを浮かべると、耳元に顔を寄せる。
「決して離さない」
ドキリと心臓が跳ねる私。ニヤリと笑みを浮かべる君。
「って花言葉もあるらしいよ」
何かが動き出しそうだ。