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異世界の能力者シリーズ

嘘吐きロルフー異世界の能力者ー

作者: 柊ぼたん

あるところに齢12歳の羊飼いの少年がいた。

少年はあまり裕福ではなかった。


彼の持つ能力は『成長』

自分には能力が適応されないようだが、彼以外の動物や植物等にはよく効くらしい。

もっとも、あまり効果を試したこともないそうで彼自身わかってないようだが。

戦闘派の人々がいる中ではあまり重要視されてはいないらしい。


しかし彼は真面目で誠実なよく働く少年であったため、村のものにはそれなりによくしてもらい大変慎ましく暮らしていたそうだ。


彼は少々くせっ毛のある黒髪で鼻が高く琥珀色の目を持つ少年であった。

名はロルフという。

彼の母がつけてくれた名だ。


母は少年が生まれる前に亡くなった。

どうやら母は偉大な能力を持っていたらしいが、実際に見ていない少年には深く理解出来なかった。


村には彼の親友でお調子者だがいざという時は頼り甲斐のあるヴィリーがいたので、別段寂しいということもなかった。

ただ彼もまだ幼いため母という存在が恋しくなったときもあったであろう。


ある日のことだった。

隣に住んでいる親友ヴィリーはいつものように羊の世話をする少年に声をかける。

「ようロルフ!今日も朝早くからよくやるなあ、俺なんか今朝寝坊して怒られちまったよ。」

「ははっ君は二度寝が毎日の日課だもんなあ。」少年は応える。

「おいおい俺はただ、ぽかぽかの太陽さんがもう一度寝るべきだってささやいたからその通りにしただけだぜ?」


二人は笑う。彼らは他愛もない話をしながら朝の仕事を終えた。

ロルフにとって小さな幸せだった。


普段と変わったことなど何もなかった。

唯一ついつもと違うことと言えば昼に怪我をしている小さな子どもを見かけたことぐらいだった。


幼子はどうやら転んでしまったようだ。その泣きそうな目と合う。

ロルフは幼子に話しかける。

「大丈夫かい?かわいそうに…今痛み止めを持ってくるね。」

ロルフに痛み止めを塗ってもらい、少し元気になった子どもが嬉しそうに言う。

「どうもありがとうお兄ちゃん、ぼくはヨシュカって言うんだ!」


このヨシュカという幼子はまだ9歳なのだと言う。

幼子はたいそう見目麗しい子どもだった。

光輝く金色の髪、透けるような真っ白い肌、美しい碧色の目。

まさに天使のようだった。


子どもは助けてもらったお礼にと、「オオカミが出ないひみつのみちをおしえてあげる!」と言って張り切って説明してくれた。


それは思わぬ幸運だった。

ロルフは羊の世話をするのが主な仕事だったが、旅人や遠くから資材を集めに来た人々に道案内もしていた。


そのため安全な道というものが皆にとって必要だったのである。


ロルフは早速その夜、ヨシュカから教えてもらった安全な道を、資材を集めに来た村のもの達に地図で説明した。

村のもの達は安全でしかも時間を短縮できると聞き喜んだ。


よく朝いつも通り起きてきたロルフに、珍しく朝早いヴィリーが慌てた様子で話しかける。

「おい聞いたか、西の方の道で村の人々が大量にオオカミに喰われちまったってさ!」


ロルフは驚愕した。

その中には少年の父もいたようだ。

ヴィリーは知らないようだが、その道とは昨日ヨシュカに教えてもらったものだった。


呆然とした様子のロルフの目の前にヨシュカが現れた。

ロルフはヴィリーに席を外してもらい二人で話すことにした。

幼子はオオカミの話をを聞いて嘲笑した。

「ほんっとばかだなあ!」と。


ようやく少年は気付いたのだ、自分は騙されていたのだと。


考えてみればおかしな話だ。

こんな幼子の出来すぎた話を信用し、大して確かめもせず村に伝えてしまったのであるーーそれが罠だとも知らずに。


幼子の能力は人を操るものだと想像できた。

おそらく『操作』という能力だろう。


幼子はもともとロルフを嵌めるつもりで彼のもとへと現れたのである。

ヨシュカは賢い。

不信感を抱かせないように、それどころか少年に自分を信用させるために能力を使うのも、実に容易いことであった。


「ぼくは君みたいな偽善者がだーいっきらいなんだ!あはははっ」

幼子は悪魔のように笑う。


そこに村のものが訪れる。

少年の罪に問おうと言うのだ。

普段温厚なロルフが声を荒らげて叫ぶ。

「こんな…こんなつもりじゃなかったんだ!村の方々を騙すつもりなんてなかった!どうしてなんだヨシュカ!」


彼の悲痛の釈明を聞いた村人が言う。

「まさかこんな愛らしい幼子が君を騙すだって?そんな馬鹿な話があるか。この嘘吐きの魔女の子め!」


彼に優しくしてくれていた村の人々は掌を返した。

村の人々はすでに幼子に操られているのだろうか。

いや、もともと彼に信用などなかっただけかもしれない。いままでは利用されていただけかもしれない。


信じてくれたのは親友のヴィリーだけだった。

「彼はそんなことする人間ではなかっただろう!疑うべきは、罪に問うべきなのは、そこの幼子だろう!」

どうやら親友は幼子の能力にはかかってないようだった。

いつにもなく真剣に説得してくれたヴィリーのことも村は一蹴した。


少年は言うまでもなく大罪だった。

彼は牢獄に一生囚われることになった。

ときどきその牢獄に幼子が訪れる。

少年の憐れな姿を見てなんとも愉快そうにケラケラ笑うのだ。


ああ、本当の嘘吐きは誰なのだろう。

愚かなのは誰なのだろう。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

初投稿でどんなものを書こうと悩んでいたらいささか時間がかかりました。

続編も違うタイトルで書くつもりです。

こちらではあっさりしか書けてない能力のことも詳しく書きたいと思います。

そちらも読んでいただけたら嬉しいです!

よろしくお願いいたします!

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