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第23話 ~廃墟~ #3


 廃墟の中は通路が続き、通路の戸板は全て朽ち落ちている。

 並んだ部屋の所々で、玄関の扉も朽ちて黒い穴を開けている個所がある。

 放置されて長いようだ。

 ツタがそうとう中まで入りこんでいる。

 山側が崩れて土が入り込み、草木が生えている部屋もある。

 机や椅子や戸棚が放置された部屋もあったが、もう使えそうにない。


「廃墟の中を進んでも、予定の道に戻れそう。多分」


 地図を思い出しながらルコリーは言う。


「あ、地図で思い出した!

 昨日のオレギンと会った道、地図に無かったの。

 それにサンシャとフィアはなんでこう都合よくこの道に現れたのか、

 疑問なのよねー。

 ずっと後をつけられているんじゃないの?」

『…そうねえ。そういえば…』

「何?」

『なんか似てる気がしませんか?ウーノスの時と』

「ウーノス…誰だっけ………あーあの汚い糸男!

 ここに罠を張って、迷った私達を律儀に待ってたのかしら。

 にしても、なんでこの道を通るのを知ってるのよ」


 陽が窓から入るとはいえ暗く薄気味悪い通路を、おっかなびっくり歩いていたルコリーだったが話に気がまぎれたのか普通に歩き出す。


『ドズがいない』


「あーあのデカブツ男ね。

 あの男のハンマーなんてそんなに役に立ってないじゃない。

 私でもアイツの魔法を避けれるし、バリアで受けたし」

『吹き飛ばされてましたけど。

 いちいちあだ名付けないと覚えられないのですか』

「わかりやすくていーじゃない」


 サユは魔法の心の声で話しているので、通路にはルコリーの声だけが響く。


『じゃあ…あ!?』


 大きな音に驚いて、サユが話を止めた。

 短く大きな振動が響く。

 天井に亀裂が走る音を聞いたサユは、心の中で叫んだ。


『走って!』


 走る2人の後を、天井の崩落が追いかける。


「にゃああああああああああ!」


 走って、と言われて反射的に胸を揺らして走り出したルコリー。

 大きな音と共にひび割れ、背後に崩れていく通路。

 今、自分達にどんな災厄が追って来ているか容易に想像がついた。


 通路が直角に曲がっている。


『止まって。

 この辺は大丈夫みたい』


 角を曲がり少し進んだ所で止まる。

 手引きで先行していたルコリーが、バランスを崩しながら止まる。


「ハァハァ…これってデカ男のしわざよね」

『口で話さないで。敵に居場所を教えてる。

 なるほど、ここなら鎚で私達を圧死できるわね』


 ルコリーが口を閉じると、荒い息が鼻から漏れた。

 サユに心で話しかけてくる。


『あっちに出口が見える。外に出よう』


 ルコリーがサユを引っ張って行く。


 出口に立つと。


「アッ、杖ノオンナナヨー!」

『伏せて!』


 心の声と同時に、杖から剣を抜く。


「ココダヨー、バンゴハンヨー!」


 サンシャが廃墟に走って近づき、剣とブーメランの刃が火花を散らして交り合う。

 同時に振動と共に、天井が大きく盛り下がる。


『走れ!』


 サユはルコリーの腕を掴み走り出す。

 ルコリーも立ち上がり走り出そうとするが、2人の走りがかみ合わずお互いよろけて倒れる。

 ルコリーの上にサユがのしかかった。


「痛っ、胸がつぶれるぅっ!」


 轟音と砂利や砂埃と風圧が襲う。

 2人が元居た場所に、天井の塊りが落ちていた。


 建物の外では、


「サンシャモアブナカッタヨー。

 クチニ砂ガハイッタヨー!」


 虎ビキニ少女が、唾を吐きながら文句を言っていた。


「ひぃぃぃぃ」


 とルコリーがか細い悲鳴を上げる。


「チッ、また外したか」


 頭上に砂煙が立って姿は見れないが、大男の低い声が上から響く。


『漏らさないでよね。

 走るよ。

 敵は私達を外に出すつもりはないみたい』


 先に立ち上がったサユが、ルコリーを引っ張る。


「漏らさないわよ!」


 ルコリーは叫びながら立ち上がる。


『大きい声を出すな!』


 振動が響き、天井に亀裂が走った。

 再び走り出す2人。

 その後ろが瓦礫で埋まって行く。


 山の斜面を切り崩しながら建てたのか、集落の通路は横に奥にと枝分かれする。


『こっち!』


 サユは手引きに従って曲がる。


『階段!』


 注意を受けてルコリーに続いて階段を上り始める。


『上がったらドズと会いますよ』

『上に隣の建物に続く通路が見えた。そこまで行けば!』


 鎚を叩きつける音と、振動が響く。

 上の階に着く。


『次も階段!』


 大した労力ではないが、ルコリーが心で話しかけるので、彼女に対して魔法を放ち続けなければいけなかった。


 階段に足を掛けたサユは、横から大きな圧力が掛かるのを肌に感じた。


『!!伏せて!!』


 咄嗟にルコリーにしがみつき強引に伏せさせた。

 大音量と共に大量の瓦礫が降り注ぐ。



『痛たたたっ』

「だっ大丈夫!?」


 サユの背中に瓦礫が当たったことを知ったルコリーは思わず声を出す。

ルコリーはサユの肩越しに見た。


 階段正面の壁に穴が開いて、埃が舞い上がる。

 黄土色に霞む空気の中に、黒い大きな影が浮かび上がる。


 無機質で無慈悲な銅色の面当てが少しずつ姿を現し、こちらを見ていた。


廃墟に追い込まれたサユとルコリー。

それを無慈悲に追いつけるドズ。

戦いの果てに生き残るのは誰か。

そしてその先には…

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