第21話 ~奇襲~ #3
先程剣を触れさせている時に、相手の得物の形がある程度つかめた。
鎌だ、変わった形をした鎖鎌なのだろうと見当をつける。
鎌は船の錨の形をしている。
鎖の音で左右一本ずつ、計2本の得物だと推測する。
長い手でそれを飛ばしてくるオレギン。
相手の動きを魔法で読まなくても、鎖の音で得物の動きが読めた。
剣で防ぐサユ。
『!?』
触れた一瞬で、力の加わり方がおかしいと感じる。
鎌をはじき返せないとわかると、すぐに脇に避ける。
サユの存在を無視して直進した鎌が、今度は横に移動して鎖を当ててくる。
左手に持った杖のシャフトで押し返そうとする。
「教えてやる、フェアじゃないからな。
俺の魔法は操れる、鎖を密集させ棒の様に。
言ったろう、漁師だったと。
よく船の番させられて、身に付けた魔法だ」
フッとシャフトとの接点から先がたるんだ。
『!!』
シャフトとの接点を支点にして、横に振り子運動をした鎌が、サユの背中を横に切りつけた。
オレギンはもう一本の鎖鎌を左手に持つと、上へ向かって投げる。
斜めに槍のようにそそり立った鎖鎌は、鎖の真ん中あたりから折れ、鎌が振り子運動で降りてくる。
まだ鎖の動きが読めていないサユは回避が遅れ、右肩甲骨の下に刃を受ける。
アーマースーツが被害を抑えたが、傷は浅くない。
鎖を魔法で収縮させると、素早い動きで鎌がオレギンの手の中に納まる。
傷の痛みにフラつくサユを見て、ニヤニヤ笑いのまま落胆の息を吐く。
「やれやれ。まだまだだ、お前は」
オレギンは片方の鎌を大きく降り、横に投げた。
2人の四方を、前後左右4本の木で角度を変えながら、巻き付いていく。
3週周って尖端の鎌がどこかに刺さり止まると、木で支えられた簡易な鎖の檻が2人を閉じ込める。
サユの鼻が焦げた煙を感じ取った。
鎖が2人の周りを回る間に、オレギンが紙巻きタバコに火をつけたようだ。
「逃げられんぞ、もう。
かわしてみせろ、俺の鎌を。
相手してやる、鎌一つで」
棒のように固まった鎖で、鎖鎌は戈のような長柄の武器となって襲いかかる。
シャフトで防ごうとすると鎖はたわみ、体に巻き付こうとする。
それを剣で払うと今度は鎖の一部が固まり、多節棍のような武器となって、容赦なくサユの体を殴打する。
たわむと思えば棒状に固まり、固まると思えばまたたわむ。
トリッキーで隙のない波状攻撃に、白いアオザイとアーマースーツの裂け目が増えていく。
魔法は戦う者の攻撃範囲を、長く広くした。
ドズやフィアの義手も然り。
サユのように剣一本で戦う者は稀有だ。
それ故、剣の能力が高くても苦戦を強いられるのである。
初手のリーチの長い魔法を使った攻撃で勝負を決めにくる者は多い。
逆に言えば、それをしのげば近接特化のサユの剣が強い。
今までサユに斬られた者の多くはその類である。
稀有といえば、ガガ・ザガ・ジガの3兄弟の手甲剣もそうだ。
だが彼らは奇襲特化なので、真っ向から敵に立ち向かう事は無い。
もし彼らが本来の戦い方をしていたら、この旅は始まる前に終わっていただろう。
防ぐよりも、攻めに出る方が良いと考えたサユは、相手の鎖が伸びたところへ深く踏み込み斬りつける。
しかし魔法ですぐに鎌が手元に戻ってくる。
結果、鎌で防がれる。
どれだけ斬りつけに行っても鎖でも防がれる。
彼の長い手も伊達ではない。
長い手で鎌を振り回せば、近づくことも難しい。
オレギンの鎖鎌は中近距離を戦い、防御も固い。
斬られた背中の痛みを我慢して、素早い剣捌きで舞うサユ。
甲斐あって徐々に敵の動きを抑え込みつつあった。
相手の鎌が右へ動けば剣を出し、左へ動けばシャフトを当てる。
鎖が動けば、シャフトと剣で払い隙を伺う。
もし4本、6本と鎌があれば苦労しただろう。
しかしそれだけの鎖と鎌を操るには、かなりの魔法の消費と技術が必要になる。
魔法があるからと言って、全てが便利に扱えるわけではない。
それなりに鍛錬をして初めてそれ相応の魔法が使える中で、現時点でオレギンは2本の鎖鎌が妥当と考えたのだろう。
今相手をしているのは一本の鎖鎌だけ。
サユは攻め、オレギンは後退していくがそれでも相手の防御は堅固だった。
剣を振るい舞いながら、もっと深く攻め込んで戦うべきだとサユが考えた時。
オレギンが動いた。
ついに直接対決に出たオレギン。
彼の鉄壁の防御とトリッキーな攻撃をサユはどう打ち破るのか。




