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第18話 ~再戦~ #1

      18/30


「えいっ!えいっ!えいっ!えいっ!えいーーーーっ!」


 ルコリーは必死に「バリア」の魔法を出そうと試みる。

徐々に目の前の道が崩れていく。


「で、出たーぁ!」


 黄色い丸い光が2人の前に現れる。

 サユは杖を地面に突き立て、ルコリーを強く抱きしめて杖にすがった。

 ばぁん、とドズの魔法が、「バリア」の魔法とぶつかり合い「バリア」は砕けた。


「にゃあああっ」


 2人は後ろへ弾かれるが、杖がその移動距離を最小限に食い止める。

 あと一歩下がれば崖っぷち、というところで身体が止まる。



「あーあ」


 フィアが呆れて溜め息を漏らす。

 サユ達までの道が全て谷底へ落ちていた。

 サユとルコリーが手を取り合って逃げているのが見える。


「私のサユちゃんとあんなにイチャイチャして、あの肉ぶくれ女!」

「す、すまん…」


 ドズの巨体が小さく縮こまって見えた。

 フィアが溜め息をつく。


「案外単純なんだな、ドズ」


………

 歩き続けるサユとルコリー。

 夕方になって、歩くルートを頭に叩き込んでいるモミジが追い付いてきた。


 夜になって峡谷の底で野営となった。

 今度はサユがモミジに魔法の傷用テープを巻く事になった。

 幸い深い傷はない。


 サユも傷は多いが、最初にフィアに斬られた脇腹の傷が一番大きく、それも治りかけている。

 他の傷はテープで巻いて、無理やり押さえつけて体をだましながら戦っている。

 そんな2人の傷の見せあいを見ながら、複雑な顔をして食事をするルコリー。


      17/30


 今日も、ちゃんと洗った昨日と同じ下着。

 筋肉痛がまだ続く。

 サユの目隠しの刺繍は、サソリの形をしている。


「お待ちしておりました、お嬢様方」


 挨拶するオレギンの後ろから、サンシャが飛び出してくる。

 朝になってテントを畳んで歩き出して暫く、昨日と同じ光景が繰り広げられた。


 地図を見ているルコリーは知っている。

 多分モミジも。

 南にボロクの町、南東にブゲンダイ城国、北にコゾック城国の間にある

この辺の山中は、多くの道が枝分かれしていてさながら迷路のようだ。

 そんな中この3人に会うのは、夜から見張られていたのだろうか。


 サンシャと戦うモミジを置いて、走り出すサユとルコリー。

 だが、昨日と違ってフィアとドズがいない。

 ルコリーは不思議に思いながら、小走りで走る。


 上り坂に差し掛かった時、道が途切れ代わりに荒れた斜面行く手を阻んでいる。


「あ」


 ルコリーが小さく声をあげる。


「見てよ」


 と言われ、サユはルコリーの視覚を借りた。



 斜面にロープが横たわり、その先には山の斜面と木に義手の斧を食い込ませ、

 それを支えにして空中で手を組んで見下ろしてるフィアがいた。

 赤い鎧が、陽を反射させて眩しく光っている。

 狼の顔をした兜が勇ましい。


 ロープの端はフィアが握って、波打たせて遊んでいる。

 サユはロープを握った。


「これで会話が出来るわね、サユちゃーん」

『ちゃん付けはやめて下さい。これは何のつもりですか』

「ドズと一緒に戦うのは不安があってねぇ。

 元々一人で戦うのが得意な男みたいだし。

 でもそこの子ブタちゃんも殺せない甘い男だしぃ。

 だから、この辺の道を全部ぶっ壊してもらう仕事をしてもらったわ。

 どこへ逃げてもあなたの不利な状況で戦うことになるの」

「誰が子ブタよーっ!」


 上に向かって叫ぶルコリー。


『ブタじゃなくてよかったじゃない。まだ肉は少ない方よ』


 ルコリーは左手で、サユの無表情の左のほっぺをつねる。


「私の前でイチャイチャするなー!私のサユちゃんにさわるなー」


 今度は逆にルコリーに叫ぶフィア。


『お前のものじゃない。そして、この先もお前のものにはならない』

「アタシわねぇ~無理矢理服従させて、

 命令通り攻めさせるのが好きなのぉ~。ウフッ!」


 恥ずかしいと赤面して、手で顔を隠すフィア。

 未成年のサユとルコリーには、フィアが何を言ってるのか理解できなかった。


『…ロープか、成程。ねえ、このロープをください』

「敵にあげるものなんてないわよぉ、私もそこまで甘くないわよサユちゃん」

『今日は、ワンピースを脱いで戦います』


 途端、ロープのもう片方が降ってきた。

 律儀にアオザイに似た服を脱いで、アーマースーツになってリュックを背負うサユ。


 フィアが坂の上でキャアキャア騒いでいる。


 リュックにロープを結ぶともう一方をルコリーに差し出す。


『これで体を縛って。これを使って視覚を貸してください』

「なるほどー」


 サユから預かった服を肩にかけ、急いでロープを体に結ぶ。


「ねえ」

『何?』

「わざわざ登らなくても、ここで待ってたら何もしてこないんじゃない」


 このお嬢様は大らかか、アホかどちらかだ。

 自分が何の為に旅をしてるのか忘れる、鳥より小さな脳みその女なのか。


「ねえ、あなたの魔法は独り言を聞こえないようにできないのかしら。

 鳥より小さな脳みその持ち主か見てわからない?」


 サユのほっぺをつねるルコリー。


「クッ、だからサユちゃんとイチャイチャするなと言っているっ!」


 ルコリーに抗議の声をあげながら空中から、下に降りるフィア。

 壊れた道はフィアにも立ちにくいらしい。

 義手を支えにして、立っていた。


『行くぞ』

「うん」

『敵から目を離すなよ、その…』

「なによ」

『信用して…いるから…』


 照れくさくなって、すぐに顔を前に向けて登り始めるサユ。


「まかせてよ、まばたきもしないから!」


 何が楽しいのか、笑いながらルコリーが元気に答える。


『それと、こけないでくださ…』

「にゃあああ!」


 ルコリーがこけて、ロープに引っ張られたサユがバランスを崩す。

 チッと舌打ちが出る。


「う、うっさいわね、慣れてないからしょうがないじゃない。

 もう少し登ったら慣れるわよ!」


 視点が違うので難しい面もあったが、ハッキリと周りが見えるルコリーの目は役に立つ。

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