第17話 ~追撃~ #2
………
夜。
ゆっくり移動して集落に付いたサユ達一行は、藁が屋根をしきつめる変わった宿に泊まる。
木と土壁で出来た建物で、部屋の中の一角に一段上がるところがあり、畳というものが敷き詰めてある。
そこは靴を脱いであがるらしい。
何でも、昔東方から来た人間が多くいた集落らしく、東方の建物を真似た集落らしい。
疲れ意気消沈していたルコリーだったが、共同で入る大きなお風呂にはしゃいでいた。
3人で仲良く浸かり、モミジはルコリーの胸を見て、
「それで落ちない男はいないね」
と感嘆し、サユの
『洗ってあげようか?』
の質問に、
「うるさいエロオヤジ女」
と一蹴されていた。
………
モミジは見回りと言って、外に出て行った。
布団は3枚敷かれ真ん中にルコリー、その右側にある、窓に近い布団にサユが寝る。
宿が、ゆったりとした麻の長い服を貸してくれた。
「ゆかた」と言うらしい。
聞けば東のトツクニ地方では皆このような服を着ているらしい。
モミジはトツクニ出身ではないが、広い布をまとめるのに都合が良いので、和服風にしている。
サユもその師匠もトツクニ辺りの出身らしい。
らしい、というのは2人とも幼い時に孤児になって戦火から逃げ回り、
よく覚えていないそうだ。
ルコリーは生まれも育ちもタウチット城国である。
横になると走り回って泣きまくった疲れからか、
ルコリーはすぐに寝入った。
………
………………
気が付くと、部屋がほんのり明るくなっている。夜明けが近い。
障子という紙で出来た引き戸に囲まれた部屋だが、魔法の力で普通の戸板より強いらしい。
薄い紙なので、採光も出来る。
気が付くと、サユが抱きついて胸に顔を埋めて寝ていた。
寝顔を見てると、昼間の言葉を思い出す。
『お前らには絶対、渡さないから!』
まさかこうやって寝たいから出た言葉かしら、と考えて身じろぎするとサユも起きたようだ。
『……ん』
「…ねえ、私達喧嘩してたんじゃなかったっけ?」
『…そうだった』
自分の布団に戻ろうとするサユを引き留める。
「もう、気にしてないわよ」
『以外に大らかなんですね。私より気にするのは、あなたの方です。
わがまま三昧、食べ物を粗末にする…』
「あー…馬車に食べ物無かったじゃない。
だからアンタの干し肉食べたわよ、テントの中探して」
カエルを食べるくらいなら、と思ったのもある。
でも自分にも多少は非があったと認めた事もあったが、素直に言えない。
「な、なるべくわがまま言わないようにする。
でもカエルはダメだからね!」
『わかった』
またルコリーの胸に顔を埋めるサユ。
「もー、女同士でもちょっと恥ずかしいんだけどー」
『恥ずかしくない、素晴らしい』
そういうことじゃない、と髪を引っ張ったがサユはされるがままだ。
「…昼間のあの言葉、どういう意味で言ったの?」
やはり気になったので尋ねるルコリー。
『あの言葉って?』
「絶対渡さない!って」
『あー…』
ますます顔を埋めるサユ。浴衣が少し肌けて、胸に触れる髪の毛がくすぐったい。
『こうやって寝たいから』
「やっぱりか!」
後頭部にチョップを入れるルコリー。
『叩くのは禁止ですよ』
「軽いチョップだからいいの」
反応がない。寝たのだろうか。
『……足にすがり付いて助けを求めて泣く女子を見捨てる程、
冷たい女だと思われてました?』
「えー、いや…別にそこまでは…」
言葉を濁す。
それよりものすごく嬉しかった、とは何となく恥ずかしくて言い出せなかった。
『あー、そうだ。忘れてた』
「なによ」
『……いやまた忘れた。
いや、そうだ、またお漏らししてましたね』
サユの後頭部にチョップが入る。
笑ってるのかしばらく肩を震わせていたが、すぐに寝息をたて始めた。
「もう……」
なんとなくそうしたくなって、ルコリーはサユの黒髪を指で梳いていた。
この甘えたように眠る少女は、昼間大人2人相手に戦っていたなんて信じられなかった。
だが間近で見ていた。
恐ろしい程のスピードで敵の猛攻を退けるのを。
すぐ後ろで微かな音がした。
驚いて振り返ると、モミジだった。
いつもの服のまま布団に入る。
モミジから微弱だったが懐かしい匂いが漂ってきた気がする。
「仲直りしたのかしら。いいことねー。お休み」
すぐに寝息を立て寝入ったモミジに
「気配もなく入ってこないでよ、もう」
文句を言って、ルコリーは布団を被る。




