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第15話 ~対峙~ #2


      19/30


 空は清々しい快晴だ。

 朝食を頂き、宿の女将にお弁当代わりのパンやハム、チーズを強引に渡され、

準備を整え宿を出た。


 今日は小花の刺繍と赤のリボンがかわいい下着にした。

 サユの目隠しの端には、狐の全身のシルエットが刺繍されている。


 モミジの顔に笑顔はなく、眠そうだった。

 細い目がさらに細く、あくびばかりしている。

 今日は狐のお面付きだ。

 先頭のルコリーはサユの手引きをしているが会話もなく、青い空とは対照的に空気が重い。


『ねえ、馬車を雇うのに私達を使うつもりだったの?』


 無言で歩く中、突然ルコリーの右腕を掴むサユが魔法で話かけてきた。


「え、ああー……だってそんな交渉なんてした事ないし。

相手が男の人だったら怖いし。

モミジならそれぐらい、簡単に出来るでしょ」

『クビにする人間を使うの?』

「さ、最後の仕事じゃない。

 仕事させてあげるんだからありがたく思いなさいよ」

『………プフッ……』


 右手からサユの肩が揺れているのが伝わる。


「フフフフフフフフッ」


 ルコリーの言葉から、何の会話か見当が付いたモミジも笑う。


「ああっ、2人でまた私をまたバカにして!アンタ達性格悪いわよ」

「性格悪いのはどっちよ。アハハハハハ!」

『馬鹿にしてないから、また泣かないでよ。プププ……』


 サユの肩の動きがどんどん激しくなる。その口からはぁはぁと息が漏れる。

 声が出ないから思いっきり笑うことが出来ない。


「笑うのを止めろーーーーー!」


 青い空と畑が続くのどかな風景の中、ルコリーの大声が響く。


 ルコリーの愚考を笑いながら、3人は開けた道から小さな林へと入る。

 木々が細く、高い木がない。

 時折すれ違う近くの村人や、旅人が「こんにちわ」と声をかけてくる。

 ルコリーは恥ずかしそうに、サユは丁寧に頭を下げ、モミジは「ちわー」と軽く挨拶をする。


 昼も近くなり、すれ違う人もいなくなり集落と集落のちょうど間ぐらいかと思われる辺り。


 曲がった道を進むとそれがいた。


「く、熊がいるよ……」


 曲がった道が草に隠れた先、小熊がこちらを見ている。


「騒ぐなよ、ルコリー。

 熊ぐらいならサユ一人でも倒せる。

 だが、小さいな。

 あまり食べるところがなさそうだ」


 投げナイフを用意しながらモミジが話す。

 小熊もこちらに気が付いてるはずだが、何の行動も起こさない。


「……」


 モミジは黙りこみ、お面を被り布を広げマントのように体にかけた。

 サユの肩に合図を送り、ルコリーの肩に手をかけるモミジ。

 いつでも布の中に隠せるように用意した。

 3人は背中のリュックをはずし、草むらの中へ隠す。


「おお、待ったぞ、けっこうな」


『ルコリー、目を』


 サユは魔法でルコリーの視覚を借りる。


 背広をビシッとキメた男が小熊の向こうにいた。

 だが猫背と長い手が印象に残りやすく、正装がどこか不自然に見える。

 真ん中から2つに分かれて逆立った長い髪も、背広と不釣り合いに見える。


 背広男の左右に装備を固めたフィアとドズも見えてきた。


 道は均され障害になりそうな物はなさそうだが、道幅がせまい。

 細い木々が左右に迫る。

 それよりも問題なのが、借りた視覚が以前より不鮮明な点だ。


『………伏せてて』


 モミジがルコリーを連れて数歩下がる。


 サユ自体、自分の魔法が他人の何に反応しているかは知らない。

 他人の神経や筋肉や骨の動きを感じる時もある。


 しかしやはり「心」という無形のフィルターを感じる。

 「心」のフィルターを通す以上、今は険悪な仲の2人に正確さが求められない。


 性格なのだろうか、相性なのだろうか。

 だが代わりに今モミジの視覚を借りても、今のルコリーの視覚より解りづらい。

 サユは視覚の情報をあきらめ、剣と魔法を少しずつ解き放つ。



 ルコリーはサユと離れても小熊の観察を続けていた。

 小熊の顔の下には、健康的に日焼けした肌の少女の顔が覗いてた。

 まばたき以外は、目を大きく見開いている。


「サンシャダヨー!」


 掛け声とともに、勢いよく小熊の毛皮を脱いだ。

 明るいグリーンのハネハネの髪と、黄色いトラ柄の毛皮の幅広のビキニを、小麦色の肌がより引き立てていた。

 腕、お腹と太ももと露出が多く、そのどれにも逞しく筋肉が付いている。


「サンシャダヨー」


 お尻の上の鞘から得物を勢いよく取り出す少女。


 大きな鋼鉄のブーメランが2本。


「あ、もしかして昨日の!

 よくも私の美しい髪を切ってくれたわね!」



 サユはルコリーにアオザイの背中を掴まれた。

 早く隠れるよう注意しようとしたその時、何かのイメージが引っ掛かる。

 魔法をルコリーに集中させると、ブーメランの映像がはっきりと伝わった。

 ルコリーはブーメランを注視している。

 なるほど、昨日河原で飛んできたのはこれなのか。

 少し軌道がそれていれば、鋼鉄の立派なブーメランは髪どころか小うるさい口のついたその首が吹き飛んでいただろうに。


 ところでルコリーはどうしていつまでもブーメランの映像を送り続けてるのだろう?


「サンシャ、口が聞けない、サユは」


 手の長い男の言葉にモミジが笑顔で反応する。


「なんだ、礼儀正しいヤツばかりなんだな。

 私がモミジ、この巻き髪がルコリー、そっちの目隠しのがサユよ」

「へぇ、したのか、自己紹介、フィア、ドズ」


 手の長い男が意外そうな声をあげるとニヤリと笑う。


「オレギン、俺の名はな」

「サユ、目ガ見エナイ、シャベレナイ、カワイソーナヨー。

 デモオ金モラッタヨー。ルコリーヲ殺スヨー」


 短いやり取りの間、ルコリーはブーメランの形状をイメージで伝え続けた。

 モミジが敵と会話したのも、時間稼ぎである。


 最初はわからなかったサユも、そのブーメランの異質さに気が付いた。


 モミジがルコリーを連れて一緒に草むらへ隠れる。


 サユはゆっくりと舞を舞う。


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