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第01話 ~入校~ #3


「ふぅ…」

 トイレ前で息をつくルコリー。


 目の見えない人に、日々当たり前にしていることを説明するのは少し苦労した。

 「ご不浄」なので手で触らせて位置や方向を確認させていいものかも悩んだ。

 最後まで付き添うべきかも、悩んだ。

 目隠しの少女がスカートの裾を持ち上げようとした時、

恥ずかしさを覚えて3人は慌てて外へ出た。


「だ大丈夫でしょうか、あ、あの方…」


 バーディがトイレの方をうかがう。


「バーキン様、疑問に思ったのですが…」

「ん?なにマキナさん」

「あの眼隠しって何か意味があるのでしょうか。

 目の見えない方って皆目隠しをしているのでしょうか」


 そこへ、

  ”お待たせしました”

のページを開いてサユが出てきた。


 「大丈夫でしたの?」


の質問に対して、”はい”のページが開かれた。

 次に新たなページが開かれる。


  ”目隠しは、目の見えない人の新たなファッションです。”


「まあ、やはりそうなんですの!」

「よく見ると、小さな刺繍もあってかわいいですものね!」


 大嘘である。


 サユは事情があって目隠しをしているが、それを話して回るつもりはない。

 しかしさすがお嬢様達である。簡単に信じ込んでしまった。

 なにせ、比較対象を知らないのだからしょうがない。

 きっと、真実を知るのはこの学院から社会に出て数年後ぐらいになるだろう。


「さて、では案内して差し上げますわ。それとも、食事が先かしら。

 時間に余裕がまだありますからどちらでもかまいませんわよ」


 サユはスケッチブックをめくる。


  ”すいません 2人きりにしてもらえませんか?”


 これはルコリーではない、明らかにバーディとマキナのいる方向へ向けて開かれた。


「そ、そんな…」

「バーキン様、どういたしましょう?」


 お下げを揺らして動揺するマキナは半泣きだ。

人見知りで背の低いバーディは、マキナの後ろに少し隠れながらルコリーにお伺いをたてる。


「マキナ、バーディ 私なら大丈夫ですわ。

 お2人は先に食堂でお昼をお食べになって。

 サユさんも私を探してらしたようですし、

 私もサユさんに色々とお話を聞きたいですもの」


 すごすごと去る二人を見送る。


 廊下では何人かの生徒とすれ違う。


「ごきげんよう、バーキン様」

「ごきげんよう」


 応えるルコリー。

 時々通り過ぎる下級生たちがそう声をかけていく。

 声をかけた後、その横に立つサユの姿に驚き、足早にその場を離れていく。


  ”みなさん 礼儀正しいですね”


 そう書かれたサユのスケッチブックのページが開かれる。


「そうでしょう、そうでしょう! 」


 何故かルコリーは得意げだ。


「フフフ、私が入学した時はこの学校はひどいものでしたわ。

 貴女、貴族育ちのわがまま娘ばかりが集められた場所がどうなるか、

 想像できますかしら?」


 ”いいえ”とサユのスケッチブック。


「大声でおしゃべりしながら好き勝手走り回って。

 おサルさんの集団でしたわ。

 生徒の親達の寄付で成り立つこの学院で、

 先生方は注意する権限も勇気もありませんでしたし」


 ルコリーは笑顔を絶やすことなく話を進める。

 気さくな性格なのかしゃべる、しゃべる。

 軽くステップを踏んだり。


 話が長くなるのでルコリーの話を要約すると、彼女は学校中のクラスを回り、

「良家の娘なら、淑女たれ」と説いて回った。

 最初は抵抗や妨害があったが、

日々穏便に過ごしたい穏健派が徐々にルコリーに賛同し、

今のような穏やかな学園が形成されていった。

 悪ふざけをする生徒は少数、周りの雰囲気に流される人が多数。

 校内全体が「騒ぐのはみっともない」という風潮に流れていくと、

悪ふざけ組は鳴りを潜めたのである。


 長く続く話の中、サユは杖の上部を軽く掴み左右に振りながら歩く。

 杖がカラカラと木の廊下の床をすべる。

 話に夢中のルコリー、杖でまわりを確かめながら歩くサユ、先ほどから案内が全然進んでない。


 ”それはすごいですね”のページが開かれる。

 サユは無表情。

 その表情から本当にそう思っているのか全くわからないが、ルコリーは得意顔。


「そうでしょ、私ってすごいでしょ!フフフ。

 まぁバーキン家の長女とサルでは格が違いますからね。

 新入生の案内の役目も、学校の代表とも言える私の役目と思いましたの。

 そうだわ、ところで貴女出身はどちらですの?私は…」


 まだ話が続きそうだ。

 サユはスケッチブックのページを開きかけたが、思い直したようにそれをしまった。

 サユが手を伸ばし、ルコリーの体の位置を確かめるように肩に触れた後、腕をつかんだ。


『まどろっこしいです。話があります』

「!?」


 ルコリーは周りを見回す。

 すぐ近くに声が聞こえたが、サユ以外は少し離れた場所を歩く生徒しかいない。

 サユの口は先ほどから硬く閉ざされたままだ。

 それに声が耳から聞こえた、というより体の中に声が響いたようにも思える。

 サユが掴んでいた腕を軽く引っ張る。


『私です。私が魔法であなたに話しかけています。急ぎの用が貴女にあるのです』


「ええ~~~~っっっ!!」

とてつもない現実を突きつけるサユ。

揺れ動くルコリーの幼さの残る心。

ルコリーが下した決断とは。

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