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第13話 ~我儘~ #3


      20/30


 空が白みかけた頃、茂みの中からルコリーが出てくる。


「バーキン家の長女がこんなところで用を足すなんて、

 学院の人達には知られたくないわね」


 体の痛みと、暗闇と孤独の恐怖であまり眠れなかったルコリーは、眠い目をこすってフラついて歩く。


 肌寒さを感じて、腕を組んで自らの体を抱くと形の良い胸がさらに強調された。


 下着は昨日のまま。

 後でテントに戻って替えなければ。


 寝なおす為、数歩離れた馬車に戻ろうとした時だった。

 激しい音と振動と共に、馬車の荷台が粉砕された。

 舞い散る木の破片の中、解き放たれた馬が荷台の一部を引きずって各々好き勝手な方向へ走り去る。


「馬車には居なかったか」


 聞いたことのある、低い野太い声が聞こえる。


 ドズとかいう体の大きなヤツの声だ。

 幸いこちらには気が付いてない。

 ルコリーは、震える足を動かして再び茂みの中へ入っていった。



 大きな破壊音を聞いてサユは飛び起きた。

 アーマースーツを手探りで探し、慌てて装着する。


 アーマースーツは各部色んなパーツに分かれていて、壊れた箇所の取り換えが可能な場所がある。

 替えはモミジが持っていて、腕のパーツは新品に変わっていた。

 肩、胸、腰、膝の特殊な形状の箇所は替えが効かず、胸に昨日のフィアとの戦闘の時の傷が残っているが、プレートが補強されていた。

 替えは効かない部分でも、内部プレートの補強は可能である。

モミジさん修理してくれたんだ、と感謝しながらスーツを装着する。


 ちなみに白のアオザイの替えもモミジの荷物の中にある。


 サユは杖をついてテントから出る。


「あちゃー、あれじゃ肉片になってるわねー。

 いやつぶれ肉まんかしらー」


 既に外に出ていたモミジが呑気に話す。

 声を頼りにモミジに近寄り、その二の腕を探して掴むサユ。


『馬車が発見されたのですね』

「そうよー。案外早かったわね。

 もう少し馬車が使えると思ったのに。

 馬の足音は聞こえないから、夜通し歩いて探したのかしらね。

 まあわだちを消したり細工したりしなかったからねー。

 ご苦労様ってとこね」


『結局昨日はルコリーが馬車で寝たのですね。

 これでこの仕事は…』


 笑顔で話すモミジと、無表情だが声に落胆が混じるサユ。


「終りね。

 まあ、しょうがないし気にする事ないわよ。

 2人で師匠にごめんなさいして、次頑張ればいいじゃない。

 その前に敵さんに挨拶して帰ろう」


 モミジの手引きで歩き出すサユ。


 サユの心の中にしこりがある。

 確かに口を開けば文句ばかりの憎たらしい女だったが、喧嘩して殴りあってそれっきり、になってしまうのは気が引けた。

 逆上して先に手をあげたのは自分であるし、

もう少し冷静に話し合っていれば

もう少し良いやり方があったのでは

と今となってはどうにもならない考えがぐるぐる回る。


「むっ」


 林から出て、人の気配がある河原の方へ進むとドズの短い声があがる。


「おはよー、デカい人。この仕事、私達の負けよ。

 馬車と一緒にターゲットが潰れてたでしょ」


 モミジが笑顔で声をかける。


「……」


 ドズは、得物の大きな鎚を下げたまま動かず答えない。


「もー私達が戦う意味は無くなった訳だけど、まだ戦う?」


 ドズの反応に違和感を感じるモミジ。

 サユは杖をついてモミジより前に出た。


 旅に出てウーノスのような、人を殺すのを趣味にしている奴がいることを知った。

 傭兵にもきっと色々な人間がいる。

 全てを倒して片付けないと気が済まない人間もきっといる。

 サユはそう思いながら河原へ降りていく。


 その時。

 モミジの後ろの林の茂みが揺れた。

最悪の関係となったサユとルコリー。

そして現れたドズにサユはどう立ち回るのか。

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