表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/104

第13話 ~我儘~ #2


 サユがテントの中に入ると、すすり泣きが聞こえる。

 右手の杖で探って奥に入ると柔らかいものに触れた。

 左手で探ると、寝袋にくるまったルコリーだった。


「触らないでよっ!」


 ルコリーが振り払う。


「もうやだもうやだもうやだ、帰りたい、帰りたい…」


 再開されるすすり泣き。

 触るなと言われ、杖をルコリーの体に触れさせるサユ。


『敵を幾人か斬れば、警戒して手を出すのを控えると思っていました。

 いくつの家がこの相続問題に関わってきているのか知りませんが、

 まさか用意周到に、これだけの手練れを集めるなんて、

 考えてなかった甘さがあったのは謝ります』


 鼻をすするルコリー。


『あなたをタウチットへ帰す為の努力は惜しみません。

 いえ必ず連れて行きます。

 とにかく今は、食べて休みましょう。

 ほら、馬車にあった牛の干し肉。

 これなら食べれるでしょう』


 干し肉を差し出すサユ。

 それがルコリーのどこかに当たった。


「いやあっ、気持ち悪いっ!」


 はね除けられた肉は、どこかに飛びテントに当たって落ちた。


「もういやっアンタ達も何もかもっ!いいからもうほっといて!」


 さらに寝袋に丸まるルコリー。


 その後ろにサユが抱きつく。

 手探りでルコリーの顔の位置を確かめ、寝袋から引っ張り出す。

 そして手を挙げて叩き始めた。


「痛っ痛っイタイイタイ!」


 目が見えないサユは、頬や唇や鼻や頭やおかまいなしに引っ叩く。


『食べ物を粗末にするな!

 食べられる時にちゃんと食べろ!

 ワガママはいくらでも聞いてやる。

 でもモミジさんには文句を言うな。

 あの人には無理をお願いして付き合ってもらってるんだ。

 モミジさんには謝れ!』



 身体が密着しているせいか、サユの心の声が大きく聞こえる。

 ルコリーの体の中は、サユの声が反響して一杯になる。

 鼓膜はおろか、皮膚まで震えて破裂しそうに感じる。

 平手を唇に喰らって、口の中に血の味が広がる。


 もがいてサユの手の内から這い出て、サユと向き合うルコリー。

 ヤケクソで放った平手がサユの左頬にヒットする。


 サユが掴みかかった。ルコリーも負けじと掴みかかる。


 お互いもつれあい、殴りあう。

 組み合ったまま支柱にあたり、テントが倒れて布が覆いかぶさる。

 それでもおかまいなく2人は激しく殴り合い転がる。


「アンタなんか!アンタのせいで!」


 サユの声が体中に響き渡る。

 興奮して何を言ってるのかわからないが普段とは違い、汚い言葉で罵られているのは判る。


「うるさい!だまれぇ!!」



 疲れたところを見計らって、2人を引き剥がすモミジ。

 いつもの笑顔はない。


「サユのケガの様子を見るわ。

 ルコリーはテントを立てて寝てろ。

…待てどこへ行く」


 倒れたテントの中でゴソゴソと何かをして、そこから這い出ると毛布を持って、

どこかへ歩き出したルコリーをモミジは止めた。

 振り返ったルコリーは、キレイなピンク色の巻き髪はぐちゃぐちゃに乱れ、

顔はアザだらけで鼻血を流している。


「馬車で寝る。アンタ達の側に居たくない!」


 そう言うと闇の中へ走り出した。


「あーあ、敵に見つかった時のブラフに入ってどうすんのよ。

 まあ、いいわ勝手にすれば」


『ごめんなさい、モミジさん』


 モミジの腕の中にいるサユの声が伝わる。

 こちらも同じく鼻血を流し、アザだらけの顔をしかめて悔しそうだ。

 泣きそうにも見える。

 そういえば、と思い出すモミジ。

 目が見えてた幼少時にはよく泣いたサユだが、目が見えなくなってからは泣いたところを見たことがない。


「最悪の結果だけど、手加減して殴った事と杖を使わなかった事は評価してあげるわ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ