第12話 ~対決~ #1
21/30
サユは剣を抜いた。
鞘となっている杖のシャフト部分を左手に持つ。
右手の剣が黄金色に輝く。
白杖は太くなると振りにくい。
しかし細い杖だと刺突の剣しか仕込めない。
師匠から教わった流派上、斬るのがメインのサユの剣をどうするか。
斬るための刃の幅をどう確保するか。
古今東西の剣を集める収集家でもある師匠が、考えた末に出した答えがこれだ。
薄くて細い二枚の刃を芯と重ね、剣を抜いた瞬間刃が左右に広がるギミックを考えた。
これで両刃の細剣となる。
これを実現させる為に、さぞ魔力と技術の高い鍛冶屋に頼んだのだろう。
刀身の耐久力が低ければ、カラクリ仕掛けのこの剣は斬るたびにバラバラになっている。
それでも振りやすい理想の白杖の太さより、かなり太く重くなった。
が、両刃の立派な剣が仕込まれているとは思われない太さだ。
多少の重さは、サユの腕力でカバーするしかない。
剣が金色なのは、金を使ってるわけではない。
細い刃を堅固にする魔法を鋼に加えた、副作用のものだろう。
刃の薄い場所は鋼の色に近くなっている。
剣を抜いたサユは、ゆっくり舞を舞う。
「あらぁ、そんなサービスまで見れるのね。
その黒タイツ、サユちゃんの美しい体のラインが素敵よぉ。
ああん、見ていて興奮してきちゃう…」
舞が止まる。
そう言われてみれば、このアーマーは無駄なく体に密着している。
体のラインと聞いて、少し恥ずかしくなってきた。
フィアが得物を取り出す音がした。
サユは思い出す。
モミジさんの情報によれば赤い半斧だったはず。
特殊な形の斧で、柄と平行に長い護拳がついており、柄尻の近くに三叉に分かれた剣が付いている。
記憶を探っているところへ声をかけられる。
「ねぇ~ん、少しお話したいんだけどぉ、いいかしら」
サユは剣を正眼に構えたが、相手が構えた様子がない。
剣に何か触れた。
相手の斧頭だろう、少し重さを感じる。
殺気もなく刃が触れ合う位置まで近づかれていた。
そうとうの手練れか。
そうとうの変態か。
『私はお前のものではないです』
「いやーん、体に響く声が気・持・ちいいっ」
無表情のサユだが、フィアが話す度に気が削がれてウンザリしている。
『戦う意志がないのなら、黙ってここを通してもらえないでしょうか』
「いやよぉ。ドズには内緒だけど、剣を交わしてみたいのよねぇ。
邪魔が入らない今なら」
フィアの殺気が高まる。
斧を体の脇に構えると大きく横へ薙いだ。
紙一重でよけると、今度は上段に持ち直し踏み込んで半斧を振り下ろす。
剣で受け止めるサユ。
重い一撃だ。
ただ半斧を振り回すのではなく、持ち手の位置を自由に動かし、斧頭に振り回されることなくコントロールしている。
今までの動きに無駄もスキもなかった。
「やはり魔法で私の動きを読んでるのかしらぁ。
もっと、もっと私の体も心も読んでほしい…」
フィアの言葉を無視して半歩下がり、サユは突きと見せかけ斬りにかかる。
護拳で剣を止めるとフィアは半斧を、サユの剣を軸に半回転させ、柄尻の三叉の剣で斬りつけてくる。
腕を斬りつけられたが、威力もない浅い攻撃をアーマーが防いだ。
密着した半斧から剣へ、相手の不自然な重心の移動をサユは感じ取る。
重心を後ろに下げながらも、退く様子がない。
相手はスキだらけでこのまま斬り抜けたかったサユだが、一瞬よぎる不安に負けた。
素早く半歩下がって剣を横に構え、防御の姿勢になる。
と、同時に2つの大きな衝撃を剣に受ける。
重みに耐えきれず、剣が下がったサユの胸の中心に半斧が走った。
『!!』
重い攻撃に耐えられなかったアーマーのプレートがいくつか壊れ、傷を負った。
もう一つ振り下ろされる半斧に、腕にも傷を負う。
今の攻撃でわかった事がある。
フィアの背負っていたものだ。
半斧を持った長い2本の義手である。
重心が後ろへ少し下がったのも、先の重い衝撃もこの2本の義手のせいだ。
素早く退かなければ、肩と顔を叩き割られていただろう。
彼女の魔法は魔使石使いで、魔法石を埋め込んだ義手を操り斧を3本使って戦うスタイルだ。




