第11話 ~野営~ #3
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朝。
大きな白い雲が時折流れていくが概ね快晴だった。
白いアオザイのサユと、パステルカラーのトップスとカボチャパンツのルコリーは、
見通しのいい野原を歩いていた。
今日は淡いグリーンに白いリボンがかわいい、シンプル下着。
サユは、複雑だが美しいラインが絡み合う、そんな刺繍の目隠しを付けていた。
ルコリーはサユを手引きする為、前を歩く。
道の両側には腰の高さの程の草が広がる。
背後には今まで越えてきた山と森が見渡せ、左手前方には
湾へ流れ込むであろう川の下流が銀の帯となって横たわっていた。
「もう疲れたー、だるいー、重いーーーー」
『あなたの荷物は、寝袋が増えただけでしょ』
また今日もこの女のグチを聞かなければならないのか、と溜め息をつくサユ。
明け方まで火の番をしてくれたモミジに、朝に少し寝てもらって後で合流することにした。
モミジの荷物が多いので、後で追いつくのが楽なように少し分散して持つ。
サユの荷物も、ルコリーと変わらない。
体力的にはもっと持てたが、護衛の任務があるので荷物が邪魔になっては意味がない。
これだけでもモミジさんが少しでも楽になったと思ってくれたら、とサユは願う。
「あ、荷馬車が止まってる!ねぇ、乗せてもらえるか聞きに行ってよ!」
ピンクの大きな2つの巻き髪が揺れて、サユの顔に当たる。
『…私が行くの?』
「アンタが行きなさいよ。私、男の人だったら話せないもん」
『別にいいけど』
スケッチブックを久しぶりに出した。
『少しは自分ばかりじゃなくて他人の事を考えたらどうです。
口を開けばわがままばかり』
モミジさんの荷物を分ける提案をした時も、ずっと反対をしていたルコリー。
「うっさいわね。
説教より私をタウチットに楽に連れてく方法を考えてよ」
溜め息をつくサユ。
「ビンゴ」
荷馬車から声が聞こえる。
聞いた覚えのある声。
馬車から、マフラーをした赤い鎧の女が降りてくる。
全てを察したサユは、
『辺りを見て。目を貸して』
と緊張で固まったルコリーに頼む。
馬車と野営の為だろう、
草は薙ぎ払われ障害物となるものはなさそうだ。
歩きながら兜をかぶり金具を止める、青い髪と赤い鎧とマフラーをまとう女が見える。
鎧に不自然な厚みを感じる。
大まかなイメージしか伝わってこないので、はっきりとは見えない。
猫背で歩いてるのかとも考えたが、敵が近づくにつれて情報が細かく解ってきた。
背中に何か背負ってるようだ。
女は、地面に付くほど長く垂らしたマフラーを勢いよく外した。
生気のなかった目に光が宿る。
固く結んだ口が大きく開かれる。
「サユちゃぁぁぁぁん、私のサユちゃん待ってたわよーーーん!
視覚の共有が出来るのでしたわよねぇ。
見て見て!もっと私を見てぇぇぇサユちゃぁぁぁぁん!」
フィアと名乗っていた女が体をくねらしながら、叫ぶ。
『伏せて、ルコリー』
そう言葉を送るサユに、
「あの女、二重人格だったのね」
そう呟いてルコリーは後ろへ下がる。
隠れる場所がないのか、少しウロウロしていた後、草むらの中へガサガサと身を隠す音を聞く。
サユは白いアオザイを脱ぎ捨て、黒いアーマースーツ姿になると剣を抜いた。
突如現れた百合女・フィア。
彼女の戦法とは。サユはどう立ち向かうのか。




