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第11話 ~野営~ #2


「はぁ!?意味わからない意味わからない。

 本気じゃないでしょ、これ!」


 ルコリーはピンクの縦ロール髪を揺らして喚く。


「本気だよ、お嬢様。今日は野宿だ。

 大人しくテントで寝ろ。

 私は先に夜中まで寝ている。

 サユが寝るときに起こしてよ」


 モミジは粗末で小さなテントに入る。

 これもモミジが背負う大きな荷物の一部だ。


「こんな所で寝られるかっ!

 狼に食われたり蚊に食われたり色んなものに食われるわよ!

 私はアンタ達の客なんだから、もうちょっともてなしてくれてもいいハズよ!」


 焚火の前に立って抗議するルコリーの袖を、座ってるサユがひっぱる。


 濡れた服を干している2人は、アイマリース女学院の制服を着ていた。


『問題ない。とにかく座って食事しなさい』


 枝に刺さって焚火で焼いた肉を差し出すサユ。


「う……」


 朝から何も食べてないお腹が、ルコリーを素直に座らせた。

 目隠しをして無表情なサユから、量は少ないがこんがり焼けた肉を受け取り、口に入れる。


「…んん、アフアフ、味は薄いけど アツい、

 あっさりしてて、アフアフいけるわね、ングッこれ。

 何の肉なの?」

『両方川で獲れた。

 魚も美味しいですよ』


 サユの紛らわしい言い回しに気が付かず、ルコリーは食事を続けた。


………


「ねえ、聞いていい」

『どうぞ』

「寝袋が一つしかないんですけど」


 夜も深まり、火の番をモミジと交代した2人はテントに入っていた。

 サユが目隠しを解き寝袋にモソモソと入り、手で来い来いと合図する。


「また、2人で寝るの…」


 髪を下ろしたルコリーは、しかたなく寝袋に入る。

 麻の袋に綿を入れて、紐で留めて筒状にした簡素な寝袋だが、紐を調整してなんとか2人入れる。


「ね、なんで頭を私の胸のところに置くのよー!」


 ルコリーは、拳骨をサユの頭にグリグリと押し付ける。


『枕』

「ちがうわよ!」

『じゃあ、一人で寝る?』

「う…」


 サユの質問に、頭グリグリを止めたルコリーは戸惑う。


『昨日もこうして寝てたじゃないですか。

 こうして2人で寝ると、森のお化けも狼も怖くないですよ』

「ちょ、ちょっと脅かさないでよ…」

『お嬢様はまだお化けとか信じているんですね』


 ニヤニヤするサユの顔。


「別に、し信じてるわけないじゃない!」

『大丈夫、大丈夫…』


 サユは幸せそうに、ルコリーの柔らかな胸に顔を深くうずめる。


 ………

 絶えず何かが動く音がする。

 木々のざわつきと風の音が、何か別の怖いものを連想させる。

 外で寝るという初めての体験に少し気が立っていた。


「ねぇ…」


 サユをゆする。


『…んん、まだ文句があるの?』


 少し寝入っていたサユの魔法の声は、小さくしか体に響かない。


「眠れないの、何か話でもしてよ」

『もー我がままばっかり…』


 街から連れ出され、歩きまわされている自分を可哀そうだと思うルコリーには、

戦って怪我もして一番疲れているサユを、労わろうという気持ちはない。


『遊び半分で私に剣を教えていた師匠は…』

「また師匠の話?」


 短い眉をしかめて文句を言うルコリーの言葉を、眠たいサユは無視をする。


『急に何かに目覚めて、有望な孤児を集めて、

 弟子にすることを思いついて実行に移したの。

 戦争が終わってヒマしてたのもあるのね。

 戦争後で孤児も孤児院も多くてあちこち訪ねて回ってた』


 眠いと敬語は出ないらしいサユ。

 響く声も小さい。


『ある孤児院で、手に負えない子供を見つけたの。

 身体が大きくて乱暴者。


 だから地下室の獣の檻に閉じ込められていたの。

 ソイツは本当に獣のような顔と体を持っていて、傷だらけだった。


 ソイツを外に連れ出して剣を渡してかかってこい、て師匠が言うの。

 師匠は丸腰、戦争で右手を失って義手はしてたけど剣をはじくのに使うだけ。


 師匠は女性では体が大きい方で、

 その殺気を受けてまともに立ってられる子供なんていないのに、

 ソイツだけは剣をめちゃくちゃ振り回して、師匠に向かっていくの。


 師匠はソイツを投げ飛ばした。

 何度も何度も何度も。


 一日中やって、日が暮れかけた頃やっとソイツは師匠に服従した。

 ソイツが私の初めてのおとうと弟子』


 サユが言葉を切る。ほぼ眠りかけていた。


『アイツでよく投げ技練習したっけ。

 頭が悪くて負けず嫌いだから何度も投げていい練習台になったわ…』


 ルコリーはうとうとと意識を手放しかけていて、最後の方はよく聞いてなかった。

 サユの低く身体に響く声が、心地よかった。


 夢を見る。


 毛むくじゃらの小さな男の子が、黒いマントと黒い服を着た大女に戦い挑んでは転ばされる夢。

 それを見物していたはずのルコリーがいつの間にか、転ばされる側に回っていた。

 挑んでも挑んでも、大女は笑ってルコリーを転がして遊ぶ。


 大女は気が付けば、サユに変わっていた。

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