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第10話 ~術中~ #2


「どうだガキ、動けないだろう!

 お前がどうやって戦っているか教えたら、

 命だけは助けてやってもいいぜ。

 ただし手と足は潰してやるがな! 」


 ウーノスとかいう男が下品に笑う。

 話をしながら徐々に近づいている。

 おしゃべりでバカな男だ、とサユは思う。

 ついさっき、フィアという女が私は口が利けないと言ったばかりではないか。


『バカが』


 思わず強く思った。

 すると足音が止まる。

 ウーノスの殺気が薄れ、せわしなく動く気配がする。


「今、誰だ!?

 誰が俺に声を掛けた? 女の声、フィアか?

 いや、違う…」


『糸は全てお前に繋がっているのですね。

 話をするのは初めまして、サユです。』


 ウーノスが高笑いをする。


「こいつぁ驚いた!

 モノを通して話が出来るのか、それがこのガキの魔法か!

 ヒャハハハ!

 珍しい魔法だが、解ってしまえばこんなものか…

 …だが、待てよ…」


『……』


 ウーノスがブツブツ呟やいている。

 男にとって、糸に引っ掛かった私もルコリーももはや檻の中の獲物なのだろう。

 言動から、すぐに殺すのではなくなぶり殺しにするサディストだと推測する。


 身動きが取れなくて時間があるのならば、私も考える事しかできない。

 まず何を考える?

 現状の打破。

 それにはまずこの糸だろう。

 

 糸や縄を直接魔法で動かす者はいる。

 投擲武器に装着した魔使石マジカストーンを操る者の多くは糸を使う。


 このサディスト男が糸を操る魔法を持つとして。

 なぜこんなに大量の血を付ける必要がある? ただの趣味か?


 サユは少し手が動かせる事に気が付く。

 先程まで体中強く締め付けられていたが、今は少し緩んでいた。

 ・・・そうだ、糸で締め付ける時の独特の感覚ではない。

 

 魔法の取得には、周りの環境大きく作用する場合と

 自分の趣味趣向が作用する場合がある。


 これだけ糸を使って実は魔使石使いとかだったら笑い話だ。

 だが、それはない。

 ウーノスの場合、後者の趣味趣向の方だろう。

 血か。

 血を見るのが大好きなのだろう。


「…話が出来る魔法があるから戦えるか?

 違う、そうじゃねえ…違う…

 心を読み取れる魔法…いやそんなものがあれば俺達の夜襲すら気づいたはずだ…


 ええい、考えるのは面倒だ!

 このガキの頭と体をぶっ潰して中身を見た方が早そうだ」


『えっと、ウーノスさん。

 どうしてそんなに私の魔法を気にしてらっしゃるのかお聞きしたいのですが』


 ウーノスが行動を起こす前に横槍を入れてみる。


「ああ!?

 そりゃお前、目の見えないガキを一発で仕留められないなんて、

 男として恥ずかしいだろ!

 お前の魔法を使ったカラクリだかトリックを見抜いて逆手にとって、

 勝ったら気持ちいいだろ!」


 常人には理解できない思考の持ち主であることはわかった。

 それと快楽を求めて自分のプライドを振り回して、他人を傷つけて生きてきた男だともわかった。


『あの、ルコリーも私も身動きが取れなくて

 トリックも何も使えなくてもうあなたに殺されるだけです』


 ウーノスが再び前に進もうとしたところを制する形で、さらに言葉を重ねるサユ。


『お願いです!

 あなた方の目的はルコリーでしょう?

 彼女を差し出しますから、私だけは逃してもらえないでしょうか』


 首は自由に動くので、ペコペコと何回も頭を下げる。

 ルコリーが気絶していてくれて助かった。

 今の台詞を聞いていたら、伝説のドラゴンのように暴れ叫んだだろう。


「ヒャーハハハハハハッ!!

 こいつ護衛対象を売りやがった!

 やっぱガキだな、まだお前には傭兵稼業は早かった。

 ああ、命だけは助けてやるぜ。

 だが……」


 師匠の剣はだまし討ちの剣。

 最初に女々しく踊って相手より弱いと思わせる。

 師匠の師匠、剣術の創始者が男だったからまた面白い。


 つまりその基本は「相手より弱い」と思わせる事。 

 そして相手がバカであればあるほど効果が高い。

 いつも豪快に踊る師匠は、彼らよりさらに上を行ってる気がする。

 と、伝えるといつもほっぺをつねられるが。


 ウーノスが気分よく話している間に、剣を振って糸を切る。

 お喋りに気を回している時、糸の魔力が弱まったのを感じての行動だった。


 腕を回した事により、糸のくっいていたアオザイの袖が破れていく。

 

 ある程度身体が自由になったサユは前進する。

 まだ張り付いた糸が残っていたのか、服全体が引っ張られる。

 それでも無理矢理前進すると、服は破れ全て脱げた。


「ふおおおお!」


 頭上から興奮した女の声が聞こえる。


 こんなところで、全てをさらけ出す事になるとは思わなかった。


**************


 朝食の後。

 モミジとサユが二人きりになる時間があった。


 そっとモミジが歩み寄る。

 裸のサユが、恥ずかしそうに腕で胸を隠す。

 10年の付き合いで裸なんて見られ慣れているはずだが、こんな状況では羞恥が顔を出すお年頃になったようだ。


 胸の膨らみは多少変わった程度だが。


 そっとやさしくモミジがサユに触れる。


「サユ…」

『モミジさん……』


「魔法で、鉄よりはるかに軽くて硬い金属を作り出した鍛冶師が見つかった。

 そいつに小さなプレートを大量に作ってもらい、

 組んで編みこんで革で併せたのがこれよ」


 説明をしながら、サユの体に黒くて薄いモノを次々と装着していく。


「これの制作が遅れて、合流に間に合わなかったのよ。

 これを先に着てれば寝込まずに済んだかもね」


『…それほど信頼できるものですか』


「まあ超軽いチェーンアーマーみたいなものだな。

 師匠はアーマースーツって呼んでる。

 甲冑ほど丈夫ではないが、ザコの攻撃ぐらいなら防げる。

 でも一応打撃の直撃や、刺突は避けろよ。」


「これがどこまで使えるかサユで試す。

 師匠の姉さんが、これの商品化に乗り気だ。

 その試作品第一号がこれ」


『つまり、私は実験体ってことですか…』


**************


 白い服の下からは、

装甲が付いた全身を覆う黒いタイツのような服が現れた。


「くそっ、このガキがーっ!」


 と、ウーノスが叫んでいる時、

どうして裸じゃないのか!

下にまた服を着こんでるなんてズルい!

などと上から抗議をしてくる女の声があったがサユは無視をした。


 上段横から一撃。

 ウーノスの短剣に阻まれる。

 さすがにバカでも、武器を持ってお喋りしていたようだ。


 反転して中段横に切りつけるが、短剣で阻まれる。

 

 この男は確か両手に短剣で戦っていたような。

 「目」の役目が気絶中なので、周りの情報量が乏しい。

 石や肉片に躓きながら攻めていくサユ。


 10合ほど斬り合ってみてサユは判った。

 男の剣術は大したことはない。

 自分のほうが強い。


 しかし動けば動く程、周りの糸が絡みつき動きが鈍る。

 何度かウーノスの短剣が体を斬りつけたが、アーマースーツに何も影響を与えなかった。


「うがあああ、色々と腹が立つガキだぜ。

 色々仕込みやがってええええ!」


 本当にザコの攻撃は防げる実証が出来た。

 それと色々仕込んでるのはお互い様だ、とサユは思う。


 多くの糸が絡まり、硬い何かに躓いたところで再びサユは動けなくなった。

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