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第07話 ~潜伏~ #2


 東の空がうっすら白み始めた頃、やっと布から出る許可が下りた。

 サユは寝ていたのか、動きが緩慢だ。

 血まみれの服を着ていたが、敵の血かサユ自身の血かわからない。

 自分の事で頭がいっぱいのルコリーには、他人の状態など見ている心の余裕はなかった。


 外に出て新鮮な空気を吸うと、永遠に思えた苦痛から解放された気持ちになった。

 ルコリーは振り返り、布全体を見る。


「んえ!?」


 驚いたと同時に感心した。

 布地には、地面と同じ色とよく似た柄が施されていた。

 少し距離を空ければ、昼夜関係なくこれに包まった者を見つけるのは困難だろう。

 それぐらい布の表面に、精巧に周りの地面の様子を再現させていた。


「ああ、気が付いてなかったの」


 モミジが布を掴み、身体に巻きつける。

 すると布に描かれた地面の模様は、紅葉が舞い散る綺麗な柄へと変化した。


「すごい、それがあなたの魔法!」

「まあねー、布地の色素を操って……布が臭い…」


 笑顔だが、細い目の奥はやっぱり笑ってない。


「…それは…ホント…ごめんなさい」


 そこは素直に謝った。顔を真っ赤にして。


 サユの容態が良くないので、

 3人は無理をせず山道を使って下り、小さな川の河原へ出た。

 2人を座らせるとモミジは、近くに休める町や村がないか探しに出た。


 残った2人は川辺で休む。

 ルコリーは服を着たまま、下半身を川につけて汚れた所をこすって洗っていた。

 サユは大きめの石に腰掛け、ルコリーの肩に手を置いた。


『ルコリー、泣いてるの?』

「うぐっ

 だってだって一晩中逃げ回って怖い思いしたんだからぁ

 うぅぅふぐっ…」

『ふーん、あなたって泣き虫ね』

「あなた達がもっとしっかり守ってくれたらこんな思いしなくていいんじゃない!」


 長い緊張が解けて、やっと涙腺が緩む余裕が出来たのだが、

その感覚がサユにはわからないらしい。


「私達普通の女の子はね、あんな怖い目にあったら泣くのが当たり前なの!

 あなたみたいに無表情に人を斬ってる女の子にはわからないわよ!」


 怒りにまかせて、サユにバシャバシャと水をかけるルコリー。


『…学院で初めて人を斬った時は、吐きそうになったんですけどね』


 ルコリーは水をかけるのをやめて、鼻をすする。

 サユを見上げる。

 今の言葉がいつもよりすごく体に重く響いてきた。


 前を向いた無表情のサユの顔が、朝日を反射して青白く光る。

 そこからは何も読み取れない。

 でもその心の中では、色んな葛藤や悩みがあるのだろうか、とルコリーは考える。


 泣き疲れた。

 前を向く。


「朝日が綺麗よ」

『見ているものが見えろー、って念じてくれませんか』


 肩に置いた手から視覚を借りるのだろう。


「ん」


 朝の爽やかな風が、2人の髪を揺らす。

 うんざりするような長い夜の闇をはがしていく陽の光は、清らかにさえ思えた。


『ああ、キレイだな』

「私、多分この光景を一生忘れないと思う」


ルコリーが呟くと。


『…………………』

「サユ?」


 サユの上半身は、石の上にゆっくりと倒れていく。

石の上には血溜りが出来ていた。


「ちょ、ちょっとサユ!しっかりしなさいよサユ!

 サーユーッッ!!」



      24/30


 サユは目を覚ました。


 柔らかいものの上に寝かされている。ベッドに寝かされてるようだ。

 額には濡れたタオルと目隠しがかけられている。


 きっとモミジさんが町か村を探して連れて来てくれたのだろう。

 傷の痛みも随分楽になった。


 どのくらい寝ていたのだろう。

 すぐ近くに寝息が聞こえる。

 様子を探ろうと手を動かすと、右ひじに暖かく柔らかいものに触れる。

 その暖かさと柔らかさに触れると、心に懐かしい何かが込み上げてきた。


 隣に横たわる暖かくやわらかいものに体を寄せる。

 良い匂いがする。

 胸のあたりにあたるとても柔らかくて丸いものに安心感を覚える。


 サユは丸いものにそっと手を添える。

 再び、深い眠りに落ちた。


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