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第05話 ~出立~ #1

      26/30


「もう疲れたー、だるいー、休むーーーー」


 これで何度目だろう。

そんな言葉ばかりがピンクの髪の少女から発せられる。


 昨日、イェンセン城国のアイマリース女学院に侵入した暗殺者を倒してからも大変だった。

 汚れた体を洗った後、出立の用意をしろとピンクの髪をした少女、ルコリーに命じたところ豪華なドレスと大きなカバン3つが用意された。

 身軽な服装と持ち物に選び直している時も、文句ばかりダラダラ垂れ流していた。

 疲れと用意のドタバタもあって、出立は翌日の朝になった。


 女学院の好意で、イェンセン城国の郊外の山々の麓まで馬車を出してもらえた。

 イェンセンから目的地タウチットは北東の方向にある。

 北へ出るには、標高は高くはないがいくつかの山を越えないといけない。

 もちろん、山の谷間を縫って走る街道はある。


 だが、昼過ぎに山の麓で降ろされた。

 学院はそれ以上は面倒みれない、という事だろう。

 サユとしては学院からは徒歩で出るつもりだったので、そこまで送ってくれたのは大変ありがたい。


 学院でグダグダと過ごした分の何分の一かは取り戻せた、と白杖の少女サユは思う。

 ただ、学院にいた時から文句ばかり吐いてる少女にはウンザリしている。


 街道は谷の間を大きくうねって施設されている為、そちらを歩くと遠回りになる。

 北東方向へ山道を歩いて、最短距離で北へ出るつもりだ。


 暖かい太陽と涼しい風を全身で感じる事で、今歩いている場所が視界の開けた場所だと目の見えないサユでもわかる。

 木々に囲まれた細い登り道を歩いた後なので、風が心地いい。



 長袖の黒シャツをベースに、

ヒラヒラ装飾のついた変わった形のロリータファッションのパステルグリーンのトップス、

凝った形のキャラメル色のカボチャパンツに黒タイツといった服装をしたルコリーは、

山道の道端にある岩に座る。

 ピンクの髪は学院にいた時と同じ、前髪ハネハネ鬼の角盛りダブルシニヨン小縦ロール添え、である。


「あー、いい景色だわー」


 腰を下ろす時に、大きな胸がトップスからこぼれそうに揺れる。

 地味な格好をしろ、と言われたが下着までは指定がなかったので、

今日はピンクの縦ストライプにフリフリレースたっぷりの派手な下着だった。


 手引きが座ったので、止まらざるを得なくなったサユは、

アオザイに似た白い長めのワンピースに黒タイツ、

装甲のついた重々しい靴が少しアンバランスに見える格好をしている。

 髪は黒のボブだが、右耳の前あたりに小さな三つ編みと、

目を覆うほどの長い前髪が特徴的だ。

 長い前髪の下には目隠しをしている。

 今日の目隠しは、角ばったヤモリが左右の端に刺繍されている。

 2人とも学院を出るときに私服に着替え、

下着など最低限必要なものをリュックに背負ってる。


 サユが杖でルコリーの体に触れてくる。


『手を繋いでくれる?』


 サユに魔法で話しかけられた。


「は、なんなの?何する気よ」

『いいから』


 面倒そうに手を出し、手を握る2人。

 特に何をするという事もなく、会話もなかった。

 風が木々の間を通り抜け、葉を揺らす音だけが聞こえる。


 この場所からは、イェンセン城国が一望できた。

 岩を積み重ねた城壁の中、

北の一番高い丘にガラスの城がそびえ、

その周りには、様々な形をした家々が立ち並ぶ。

 木々を組み合わせたオーソドックスな洋館の学院の校舎が見える。


 城下にはローソクを立てたケーキのように、小さな塔のたくさんある家。

 三角錐に窓をつけた、何かのオブジェのように見える家。

 黒い屋根瓦を敷きつめた、どっしりとした漆喰の家。

 素材はわからないが、色んな飾りがついた宝石箱のような家。

 クネクネとした女性の体を連想させるような曲線のある家。

 南側には、裕福でない者達が住む、レンガを積んだ家が、

さらにレンガを積むように折り重なって並んでいる。

 それぞれの家で雇った建築の職人達が、

各々の得意の魔法を使って家を建てた結果だ。


『ふーん、あれがイェンセン城国なのね』


 サユの言葉に驚くルコリー。


「え?サユ見えてるの?」

『私の魔法は元々心を読む魔法。

 ルコリーの見ているものを感じることができるの。

 ぼんやりとしたイメージだけど』


 ルコリーは急いで手を振りほどく。

 ちなみに、学院では「サユさん」「ルコリーさん」「貴女」と呼び合っていたが、

出立のゴタゴタ、ワガママを言うルコリーと反論するサユが罵り合っている時に、

いつのまにかお互い呼び捨てになっていた。


「ちょっ、心を読むなんてサイテーな魔法なら、早く言え!」


 ルコリーの体に、杖を触れさせるサユ。


『ん、心を読むのは最低のマナーだと師匠に禁止されてます。

 今のは視力を少し借りただけ』

「勝手に借りるな、ドロボー」


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