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第04話 ~来襲~ #1

      28/30



「よう嬢ちゃん!」


 野太い男の声が、上から降りかかる。

 浅黒い中年の男の顔が、2階壁の角からにゅっと出てきた。


「人を探しているんだが、知らねえかなぁ」

「は……う………」


 ルコリーは見上げ、応えようとするが声にならない。


 男の全身が校舎側面からこちら側に出てくる。

 その体は壁に対して垂直に立つ。

 もじゃもじゃと伸びるもみあげ、

猿人のような粗野な顔立ち。

 胴回りには黒い鎧、

手には大きな手甲、盛り上がる筋肉、

大きな厳めしい防具のついた靴。

 陽に焼けた肌と黒い装備品、

毛深い体毛等で全体黒い印象の男。


 そして、ルコリーは男に対しての耐性があまりない。

 父と兄意外で話した男性といえば、学校の老教師ぐらいである。


 気が付くと屋根にもう一人いた。

 最初の男が中肉中背なら、屋根の男はそれよりスマートだ。

 2人は同じような装備をしている。

 最初の男が言葉を続ける。


「ルコリー=バーキンて娘なんだけどよぉー」


 この言葉でルコリーの恐怖はピークに達した。

中庭に走り出す。


「おい、こら待つべぇ!!」


 男は怒鳴った。

 その怒声がさらにルコリーの恐怖を深くする。


「んだよ、教室にゃあ人がいねえべし」


 中肉中背の男がぼやく。


「兄者、女達は2階の奥に集まってるようだべ」


 スマートな方が応える。


「んあ?ザガよ、ジガはどうしたっぺ」

「ジガは女達の方に行ったっぺよ。ヤツぁ若ぇ女が好きだべな」

「ルコリーてヤツぁそっちかも知れんけ、そっちはジガに任すか」

「んだな、さっきの女ぁ、聞いてた人相と似とったしのぉ兄者」

「あ、ツノみたいなピンクの髪とか言うとったのぉ。

 がははははっ。

 何せ北では有名な家のお嬢様らしいけぇ、トチ狂って

他のヤツとは別行動しとるかもしれんけぇ!」


 中肉中背の、兄者と呼ばれた男が室内運動場へ続く廊下の屋根へジャンプする。

 スマートな、ザガと呼ばれた男がそれに続く。


 その頃、ルコリーは絶望していた。

 中庭にサユが居ないのである。


 男たちが屋根に降りる大きな音がして、驚いて振り向く。

 2人の男が、渡り廊下の屋根へ降り立った音だった。


 振り向きざま腰が抜けて、中庭の真ん中辺り、

 低い樹木の植えられた花壇の前に尻餅をつく。

 朝にサユと2人で会話したその場所だった。


「よぉぉ、嬢ちゃん。ルコリーいう女ぁお主知っとるじゃろぅ」


 兄者と呼ばれた男が聞く。

 ルコリーは青い顔をして、首を横に振る。

 恐怖で涙すら出ない。

 口が震えで噛み合わず開けっ放しでカラカラに渇いてきた。


「それともお主がルコリー=バーキンかのぅ!」


 今度はザガが聞く。

 先程よりも高速で首を振る。


「知っとる事喋っちまったら痛い目にあわんべ」

「何とか言うべやぁ女ぁ」


 男達が歩き出そうとしたとき、カラカラと音が響く。

 ルコリーの後方、樹木の向こうから誰か来たようだ。


 杖の音だ。


 男達は不意の来訪者に目を向けている。

 そして杖の持ち主は、腹立たしい事にゆっくり歩いて来る。


「さっ…サユ!!」


 やっと声が出せた。

 サユが花壇に近づくにつれ、ゆっくりとその姿が見えてくる。


 今日はトンボが幾つか飛んでいる刺繍の目隠しだ。

 サユはどんどん近づいて来て。

 どんどん近づいて、杖と足がルコリーの身体にぶつかる。


「痛っ!」


 サユは慎重に杖を動かして探り、尻餅をつくルコリーの太ももに杖が当たった。


『あ、ごめん。

 そんなところにいたのですね』


「ごめんじゃないわよぉぉ!なんでながにわにいないのほぉぉぉ!」


 ルコリーは、サユの姿を見て安心したのか涙が溢れて止まらなくなった。

 ついでに鼻水で鼻が詰まり、ちゃんと言葉を発音できない。


『トイレぐらい行かせてください』


 腕から杖と太ももを通して、魔法で話かけるサユ。

 どうやら間に物があり間接的でも、触れあっていれば会話が出来るようだ。

 今の状況が分かっているのかいないのか、無表情で普段通りに話すサユ。

 頭に直接話しかけられてるみたいで、首筋がムズムズするのだが今はそれどころではない。


「どいれどころじゃないでじょうぅ、だいふぇんだっだんだかだぁぁぁ」

『あーはいはい ごめんごめん。でもよくこの中庭に来てくれたわ』


 サユはルコリーの頭を撫でた。

 嘘つき女だとか、彼女が戦えるかどうかなんて、もうどうでも良かった。

 今この場で頼れるのは、白杖をついて頼りになるかどうかわからないサユしかいなかった。


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