第04話 ~来襲~ #1
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「よう嬢ちゃん!」
野太い男の声が、上から降りかかる。
浅黒い中年の男の顔が、2階壁の角からにゅっと出てきた。
「人を探しているんだが、知らねえかなぁ」
「は……う………」
ルコリーは見上げ、応えようとするが声にならない。
男の全身が校舎側面からこちら側に出てくる。
その体は壁に対して垂直に立つ。
もじゃもじゃと伸びるもみあげ、
猿人のような粗野な顔立ち。
胴回りには黒い鎧、
手には大きな手甲、盛り上がる筋肉、
大きな厳めしい防具のついた靴。
陽に焼けた肌と黒い装備品、
毛深い体毛等で全体黒い印象の男。
そして、ルコリーは男に対しての耐性があまりない。
父と兄意外で話した男性といえば、学校の老教師ぐらいである。
気が付くと屋根にもう一人いた。
最初の男が中肉中背なら、屋根の男はそれよりスマートだ。
2人は同じような装備をしている。
最初の男が言葉を続ける。
「ルコリー=バーキンて娘なんだけどよぉー」
この言葉でルコリーの恐怖はピークに達した。
中庭に走り出す。
「おい、こら待つべぇ!!」
男は怒鳴った。
その怒声がさらにルコリーの恐怖を深くする。
「んだよ、教室にゃあ人がいねえべし」
中肉中背の男がぼやく。
「兄者、女達は2階の奥に集まってるようだべ」
スマートな方が応える。
「んあ?ザガよ、ジガはどうしたっぺ」
「ジガは女達の方に行ったっぺよ。ヤツぁ若ぇ女が好きだべな」
「ルコリーてヤツぁそっちかも知れんけ、そっちはジガに任すか」
「んだな、さっきの女ぁ、聞いてた人相と似とったしのぉ兄者」
「あ、ツノみたいなピンクの髪とか言うとったのぉ。
がははははっ。
何せ北では有名な家のお嬢様らしいけぇ、トチ狂って
他のヤツとは別行動しとるかもしれんけぇ!」
中肉中背の、兄者と呼ばれた男が室内運動場へ続く廊下の屋根へジャンプする。
スマートな、ザガと呼ばれた男がそれに続く。
その頃、ルコリーは絶望していた。
中庭にサユが居ないのである。
男たちが屋根に降りる大きな音がして、驚いて振り向く。
2人の男が、渡り廊下の屋根へ降り立った音だった。
振り向きざま腰が抜けて、中庭の真ん中辺り、
低い樹木の植えられた花壇の前に尻餅をつく。
朝にサユと2人で会話したその場所だった。
「よぉぉ、嬢ちゃん。ルコリーいう女ぁお主知っとるじゃろぅ」
兄者と呼ばれた男が聞く。
ルコリーは青い顔をして、首を横に振る。
恐怖で涙すら出ない。
口が震えで噛み合わず開けっ放しでカラカラに渇いてきた。
「それともお主がルコリー=バーキンかのぅ!」
今度はザガが聞く。
先程よりも高速で首を振る。
「知っとる事喋っちまったら痛い目にあわんべ」
「何とか言うべやぁ女ぁ」
男達が歩き出そうとしたとき、カラカラと音が響く。
ルコリーの後方、樹木の向こうから誰か来たようだ。
杖の音だ。
男達は不意の来訪者に目を向けている。
そして杖の持ち主は、腹立たしい事にゆっくり歩いて来る。
「さっ…サユ!!」
やっと声が出せた。
サユが花壇に近づくにつれ、ゆっくりとその姿が見えてくる。
今日はトンボが幾つか飛んでいる刺繍の目隠しだ。
サユはどんどん近づいて来て。
どんどん近づいて、杖と足がルコリーの身体にぶつかる。
「痛っ!」
サユは慎重に杖を動かして探り、尻餅をつくルコリーの太ももに杖が当たった。
『あ、ごめん。
そんなところにいたのですね』
「ごめんじゃないわよぉぉ!なんでながにわにいないのほぉぉぉ!」
ルコリーは、サユの姿を見て安心したのか涙が溢れて止まらなくなった。
ついでに鼻水で鼻が詰まり、ちゃんと言葉を発音できない。
『トイレぐらい行かせてください』
腕から杖と太ももを通して、魔法で話かけるサユ。
どうやら間に物があり間接的でも、触れあっていれば会話が出来るようだ。
今の状況が分かっているのかいないのか、無表情で普段通りに話すサユ。
頭に直接話しかけられてるみたいで、首筋がムズムズするのだが今はそれどころではない。
「どいれどころじゃないでじょうぅ、だいふぇんだっだんだかだぁぁぁ」
『あーはいはい ごめんごめん。でもよくこの中庭に来てくれたわ』
サユはルコリーの頭を撫でた。
嘘つき女だとか、彼女が戦えるかどうかなんて、もうどうでも良かった。
今この場で頼れるのは、白杖をついて頼りになるかどうかわからないサユしかいなかった。




