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ページの切れ端  作者: 歌瑞
晦冥の底から
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【にらめっこ】

【にらめっこ】初出20120213



 ギィの真正面にわたしは陣取った。


 すう、と息を吸って、ぷうっとおもいっきりほっぺたを膨らませる。


 …


 目尻に指をあててぐにーっと外側へひっぱってみる。


 …


 両手のひらで顔をはさんで、ぎゅーっと中央へ寄せてみた。


 …




 どさっ、ばささささっ。

 ちょっと離れた横の方でいろんなものがおちる音がして、なんだろうとそっちをみたら、運んでいたたくさんの荷物のほとんどを落としたらしいフリップさんが、両目をまんまるにしてわたしを見ていた。

「………ナニしてんの、ミオ」

 石でも飲み込んだみたいな、すごい顔でそう聞かれて、何かいけないことをしてしまったのかと不安になった。


「…にらめっこ、ですけど…」


「…………熾青のダンナと…?」

「ハイ」


 …




 ぶっふぅっ

「アハ…あははっはは、ダ、ダンナとにらめっこ…っ! ダンナと!! あは、は、は、は!!」

 ひー、息も絶え絶えにおなかを抱えてフリップさんが笑い出す。腕に残ってた荷物は全部放り投げて。


 なんでー!

 そんなに笑わなくてもいいじゃないですかー!!!

 すごーく恥ずかしくなって、みるみる顔に熱が集中するのが自分でもわかった。

「フリップさんのばかー!」

 くやしいのでそう捨て台詞をはいて、わたしは走って逃げ出した。





 物陰に隠れて、膝をかかえて、誰もみていないところで思う存分ふてくされる。

 ……ギィが笑ったらどんなふうになるのかなって、知りたかっただけなのに。

 人間みたいに表情が変わるわけないってことくらい、わかってる。

 べつに、フリップさんに笑われたかったんじゃないんだから!


 フンだ。




 ざく、ざく、歩幅の広い足音が聞こえてきたけど、わたしは振り向かなかった。

 ギィにも馬鹿馬鹿しいことしてるなあって思われてたら、ちょっと立ち直れない。



「ミオ」


 …。


「ミオ」


「……なんですか」


 さすがに二度も無視するのは悪い気がして、返事をしたら、ぐあっと身体を持ち上げられた。

「制裁は加えておいた」

 なに?


 身体を向けられて、見るように促された物陰のむこうがわ。

 ばらばらに散らされた荷物の上に、フリップさんが頭を抱えて倒れ伏している。


 ……もしかして、頭、殴ったの?

 ギィのゲンコツで?


 ……それはものすごく、痛そう……


 いい気味とまではいわないけれど。

 笑い続けるフリップさんが、ギィの拳を喰らって沈むのを想像すると。

「…ぷっ」

 思わず声を立てて笑うわたしを、ギィが見ている。


 ふ、と彼の眼の奥に青い光が灯った気がして、あれっと思った。

「ギィも、可笑しい?」



「そうだな」



 そっか!




いだたいた拍手コメントから発展いたしました。

コメントくださったかた、ありがとうございました!

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