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チートな俺っ子カメラ係は、ダンジョンで拾った亜人少女にめちゃくちゃ懐かれる  作者: モコナッツ


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1/4

その子は、洞窟の奥で震えていた

 都内のダンジョンの地下7階。

 外の雨の影響か、中層に来ても洞窟の中はやけに湿っぽかった。所々に浮かぶ魔鉱石の鈍い光が、余計にどんよりさを増している。


 まとわりつくような空気が背中に張り付いて、いつもより三割増で装備が重い。パンツの中ももぞもぞするし、シャツがベタベタして動きづらい。そもそも、今日は初めから気が乗らなかった。


 何を隠そう、この俺、彼方(かなた)春香(はるか)は重度の偏頭痛持ちなのだ。こんな気圧の低い日に外出なんて本来ならゴメン被る。


 まったく誰だよ……こんな日にダンジョンに行こうって言い出したのは。


「おい彼方、ペース遅いぞ。大丈夫か?」


 そう、今まさにわざわざ来た道を戻ってきて心配そうに顔を覗き込んだ、この男だ。千歳宗平(ちとせそうへい)。俺の幼馴染その2。爽やか陽キャで、細マッチョのイケメン。でも良い奴。


「あー……うん。ちょっと足痛くなってきたかも」

「しょうがないなぁ。じゃあ、ここいらで一旦休憩にしよっか⭐︎」


 道の先で、振り返った絵里がカラカラと笑う。


 二人はまだ全然余裕、という感じだ。

 決して俺の体力が無いわけではない。こっちはカメラと荷物も持ってるんだから、装備しか持ってないお前らと一緒にすんなし。


 辺りを見回すと丁度モンスターも居なさそうだったので、少しだけ足を休めることにした。


「じゃあ皆さーん。今から10分程度休憩するんでー、その間にお茶飲んだりー、トイレタイム行ってきてくださーい⭐︎ 暇な人はエリーとお喋りでもしよっ♪」


 絵里が配信用カメラに向かってウインクすると、


「かわいい」

「かわいい」

「かわいすぎる」


 配信画面が弾幕で埋め尽くされた。

 確かに可愛いのは同意だ。


 二宮(にみや)絵里(えり)。俺の幼馴染その1。とにかく明るい、そして元気。距離感バグのコミュお化け。そして可愛い。


 茶髪ショートのナチュラルメイク、今日はダンジョンの湿度で、少し湿った髪の毛と肌がマッチして一段と艶っぽい。こうやって撮影機材越しに凝視してると、最近ますます美人になったな、って気がする。


「彼方、疲れたでしょ。カメラ固定しときなよ」

「そうだな」

 簡易的な三脚を取り出してカメラを固定する。

 ハンディとはいえ、配信用なのでそこそこの重さだ。


「はい、ドリンクどうぞ」

「はあ、ドリンクどうも」


 壁を背もたれにして座り込み、絵里が差し出したスポーツドリンク受け取る。ふと前を見ると、前屈みの胸元が気になった。図らずも薄いピンクが目に入る。

 これで100%無自覚というのだから、驚きである。


 俺の心配も知らずに彼女は屈託のない笑顔でカメラを回している……ってか、こっち向けてる?


「ほらほら! 彼方もピースピース!」

「えっ! いいよ、俺荷物持ちだし。あっ、へへ……どうも」


「かわいい」

「隠キャかわいい」

「可愛すぎる」


 ……こいつら、何でも可愛いって言えばいいと思ってんな。


「彼方、疲れてないか? よかったら荷物持つの変わるぞ」

「平気平気、宗平は前衛なんだからどっしり構えててくれよ。荷物はちゃーんと俺が守ってやるからさ」

「……無理するなよ。お前が居てくれないと困るっていって、急に誘ったのは悪かったと思ってるんだからさ」


 そう言って顔を赤くすると、ポリポリと頭を掻いた。まったく、いつも思い付きで人を振り回すくせに、変な所で律儀な奴だ。


「気にしてないよ。でも後でスタバ奢れし」

「えっいいの? じゃ、じゃあ終わったら行こうな!」

 

 なんかやたらとテンションが上がっているんだが。

 まあ、俺とて乗りかかった船だ。ここまできたのだから、今更引き返すつもりはない。


「そういや、今日の目的の亜人? だっけ。どんなモンスターなのよ」

「うーん。まだちゃんとした目撃情報があるわけじゃないんだけど、ネットの話じゃゴブリンみたいな人型のモンスターとはまた違った感じみたいでさ。もっとこう、人間っぽい? っていうのかな」

「何だよそれ。やだ、俺そういうの。ゴブリンってか、生き物系のやつら全般、本当は殺したくないし。グロいし可哀想だもん」

「彼方はそういうところが可愛いよねぇ」


 絵里がグシャグシャと頭を撫でる。


「ちょ、やめてよぉ!」


 湿った日の天パに頭グシャグシャはもう反則なんよ。


「相手次第だな。今日の目的は、その新種のモンスターが実在するのかどうかの確認だ。カメラに収めるだけでギルドから報酬も出るし、一番良いのは捕獲、それ以外なら撤退って感じかな。もし仮に希少種認定でもされたら倒すと後々面倒だ」


 もう整えることを諦めて鏡を閉じた。


「……めちゃ強かったらどーすんだよ」

「彼方の異能なら大丈夫だろ」

「そうそう、頼りにしてるんだから⭐︎」

「はぁ、好き勝手言ってくれるなぁ」


 ま、なんだかんだでこいつらに頼られるのは嫌いじゃないんだけど。


 そう思ったときだった。


 張り巡らせた仕掛けに、何かが触れた。


「待って。膜に引っかかった。奥になんかいる。人型っぽい」


 宗平と絵里がサッと立ち上がって武器を取る。


 俺は三脚に掛かったカメラを静かに外し、自立行動モードに切り替えた。プロペラの回る音が静寂に落ちる。

 意識を集中して気配の正確な位置を探り、二人に合図を送る。空気の震えが、見えなくても敵の位置を教えてくれる。


「一歩、二歩……あの岩陰のすぐ側、来る!」


 それぞれ散開して機先を制そうとした、その時。


 おかしい——


 この階層の敵にしちゃ、あり得ないくらい『震え』が弱い。これはモンスター、じゃ……ない。もっと小さくて弱々しくて、まるで何かに怯えているような……


「あう?」


 ん? 今一瞬、何か声が聞こえたような……


「……うー? あっ!」

「待って!」


 岩陰からチラリと見えた頭に、思わず張り上げた。

 声に反応するように、サッとそれは隠れる。


 武器を構えた二人の手が止まり、こちらを振り返る。


「お、女の子?」


 自分でもビックリするくらいに間の抜けた声だったが、他に形容しようもない。


「……っ!」

「あーっ、逃げないで!」


 遠のく足音を慌てて追いかける。


「お、おい! 危ないぞ!」

「大丈夫ー!」


 宗平の静止を無視して、気配の方に駆けだす。

 思ったよりも早い。気配はどんどん遠くなるが、問題ない。俺には既に分かっている。この先の角は行き止まりだ。


 そいつは少しの間キョロキョロしたが、逃げ場がないと悟ったのか気配は動きを止めた。そして洞窟の、小部屋のような空洞の角でペタンと蹲った。


 追いついた俺は恐る恐る、角奥を覗き込む。


「……あぅ」


 そこに座り込んでいたのは、狸のような耳と尻尾を生やしてボロ布を纏っている、泣きそうな目をした少女だった。


「君が、亜人……なの?」


 それが彼方春香とモルルの、初めての出会いだった。



いつもお読みいただきありがとうございます。


少しでも刺さるものがあれば幸いです。


よろしければ下ボタンから★★★★★、ブクマ、感想もいただけますと次回の創作の励みになります。

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