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下等勇者のはかりごと~泥啜る不断の努力とゲーム知識で、魔王を凌駕する~  作者: 笠鳴小雨


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第36話:魔王討伐2ー⑬/特等勇者の意地

「……佐々原?」


 目を瞠って、文楽は固まっていた。


 目の前には、右胸の半分と片腕を失くした佐々原がいたのだ。

 骸騎王スメラから放たれた異質な攻撃を、佐々原は背中で受けて文楽を守った。

 口の周りに血をべったりとつけた佐々原は、口角を上げて笑う。


「あとは頼んだ」


 そう言って、大往生だと言わんばかりの顔をして前のめりに倒れていく。

 文楽はそんな彼を受け止めると、佐々原は体重の全てを預けてきた。肩に首を乗せ、空気が漏れたような掠れた息が微かに聞こえてきた。


 そんな掠れた声で、佐々原は耳元で囁く。


「オレの体質であと三分は持ちこたえられる。それまでに魔王を倒せるか?」


 捨て身の防御はすべて、佐々原の計画のうちだった。


 特等勇者――彼らには等しく、特別な体質が与えられる。

 全ての武器に神聖属性を纏わせられる体質や、全属性の魔法を操る適性を持った賢者のような勇者や、寝ることがなくなる不眠の勇者なんて存在もいた。


 佐々原はそのうち、不屈之勇者という体質を有していた。


 どんな即死攻撃であったとしても、即死せずにゆるやかなに死へと向かっていく体質だ。死ななければ回復能力で蘇生し、何度だって戦える。それゆえに不屈なのだ。

 確かに属性付与や全魔法体質なんかは花形で、戦闘も派手なものになる人気の高い勇者だ。だけど文楽にとっては「倒れない勇者」というほうが魅力的だった。文楽にしてみれば、倒れない素質を持つ勇者こそ、この世界において最強の勇者の素質だ。


 自己犠牲によって繋がれたこの命、必ず無駄にはしない。


「ああ、任せろ」


 顔を青白くして、体から力が抜けていく佐々原を地面に優しくおろし、文楽は剣を握り直していた。足に傷を負いながらもなんとか立ち上がった骸騎王へと向き直る。


 佐々原が死ぬまで残り三分。


 それまでに骸騎王を必ず倒す必要がある。


 騎士道なんて関係ないと言うように、文楽は立ち上がろうとしている最中の骸騎王の目の前に立つ。そうして天叢雲剣あまのむらくものつるぎを再び、振り下ろしていた。

 その攻撃を必中の神槍(ゲイ・ボルグ)を盾にして、骸騎王は攻撃を防いできた。


 つばぜり合いになり、両者の視線が火花を散らす。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁあッ!!」


「グガアァァァァァァッッッ!!」


 両者の態勢が徐々に、文楽が上で骸騎王が下になっていく。魔王と勇者の立場が逆転し、圧倒的に文楽が有利な態勢に変わっていた。骸騎王の肩口に、天叢雲剣の刃が少しずつ食い込んでいく。それと同時に、先ほどまで無表情だった骸騎王の顔が苦しそうなものに変わっていく。


 途中から骸騎王と文楽の力が拮抗し始めた。

 お互いにビクとも動かなくなっていた。


(時間が無いな。もったいぶる必要はない)


 そう考えた文楽は、小声でつぶやいていた。



王蛇ダ・オヌ、力を貸してくれ」



 そう言うと、爆発したのかと錯覚するほど勢いよく文楽の体から黒い煙が発生した。その煙幕の発生量は今までの呪い之王とは次元が違った。明らかにいつもとは異なる、形で煙幕がどんどん体から放出されていく。すべて出し切ったのか、数秒後にはガス欠のように体から煙が出なくなる。その黒い煙が天高く昇っていくと、黒い煙が形を成していき、気がつけば王蛇を模した形へと変化していた。


 その大きさは、等身大の王蛇と遜色がない。

 まさに王蛇が召喚されたと錯覚するほどの、大きさであった。


 能力から生まれた王蛇は、最高速度で骸騎王へと急転直下、体当たりを仕掛けようとする。

 骸騎王はこの攻撃のヤバさに気がつき、必死に文楽の天叢雲剣を押し返そうとするが、文楽はびくともしなかった。それどころか完全に押さえつけ、逃げようとすれば剣で首を斬り落とす勢いの腕力を込め、鋭く睨みつけていた。


 文楽はここで、この最強の能力で、決着をつけるつもりだ。


「グガアァァァァァァッッッ!!」


 焦り、最後の雄たけびを上げる。


 しかし骸騎王の足掻きは功を奏すことなく、王蛇の攻撃が骸騎王に直撃する。衝突と同時に体を呪いが蝕み、溶かし、多種多様で解毒不可能な呪いを全身へと浸透させ、物量で体中を破壊してくる。


 王蛇の攻撃が止んだ頃、骸騎王の体は地面に横たわっていた。


 愛用していた必中の神槍さえも衝撃で手放し、死に体で天を仰いでいる。


 そんな死に体の骸騎王の首へと、天叢雲剣が振り降ろされていく。

 剣が首に二センチ食い込んだとき、骸騎王の筋肉が盛り上がり、筋肉だけで剣の勢いを止めてきたのだ。先ほどまで骨だった箇所に筋肉が生えたことにも驚きだが、何よりも天叢雲剣を筋肉だけで食い止めたその生命力の高さにも驚かされた。


 だが、文楽に容赦などなかった。


 スキル――鹵獲解体、発動。

 遠くに吹き飛んでいた必中の神槍を手元に引き寄せる。


 文楽は空いていた左手で、神槍を握りしめ構える。


「――必中の神槍(ゲイ・ボルグ)


 構えた矢先、骸騎王の上空には百を超える雷撃槍が出現していた。

 それだけじゃない、その槍には王蛇の意思も関与しているのか、黒い呪いの粒子も紛れていた。雷撃と呪いの混合技が勝手に生まれていた。


 それを見て、文楽は静かに言った。


「王蛇と仲良くな。必ず仇は討つ」


 必中の神槍を、骸騎王の心臓へと突き刺す。

 それに続いて、百の雷撃槍が骸騎王の体のあちこちに降り注いだ。


 そのとき、骸騎王は微かに笑っていた。

 凛々しい瞳に、人間のような笑みだった。

 骸骨だった顔が、ほんの一瞬だけ凛々しい人間のような面影を見せてきたのだ。



『ありがとう』



 最期に、骸騎王は確かにそう言ってきた。


 間もなく、あのアナウンスが聞こえてきた。




『――魔王【骸騎王】の討伐を確認』

『魔王【骸騎王】の魂が浄化され、世界は祝福に満たされました』


『魔王討伐クエスト2の目標をすべて達成しました』

『ワールドクエスト進捗度:02/99』


『Congratulations!』(おめでとうございます!)

『勇者として、誰も成し得ない偉業を達成しました!』

『偉業を讃え、豪華な報酬が支給されます!』


『貢献度ランキングが公開されました!』

『拠点内、モニターをご確認ください!』


『魔王討伐を祝福して、一時間のエリア解放を行います』




 こうして――魔王討伐2は幕を下ろす。

 多大な犠牲を払い、彼らは骸騎王との戦いを終えたのであった。




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 名前 * 神々廻文楽

 適正 * 傭兵

 等級 * 下等勇者

 体質 * 魔力不全体質 / 異人拒絶体質/■■■■■

 Lv * 4

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 <所持スキル>

 *呪い之王 / 神話級 / Active

 *鎧銀反射 / 神話級 / Active

 *白共感覚 / A級 / Active

 *代償変更 / C級 / Active

 *鹵獲解体 / C級 / Active

 *痛覚鈍化 / D級 / Passive

 *自傷回復 / D級 / Passive

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 名称 * 罪被の短剣

 分類 * ショートソード

 等級 * B級

 効果 * 罪の解放ラ・パージ

 刻印 * 2/5

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 名称 * 天叢雲剣あまのむらくものつるぎ

 分類 * ■■■■■

 等級 * 神話級

 効果 * ■■■■■

 刻印 * 4/5

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 名称 * 必中の神槍

 分類 * ■■■■■

 等級 * 神話級

 効果 * ■■■■■

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