第33話:魔王討伐2ー⑪/小神の日記
◆クエスト2、一日目
またこの日記を書くことになるとは思っていなかった。
だけどせっかくなら誰かのために、これからも記録を続けていこうと思う。
今回、私は一人ではなかった。
頼もしい仲間と共に戦っている。
前回のクエストを生き残った四人に加えて、新たに十人の勇者が追加され、私たちは十四人に増えた。このゲームが始まってたったの三日で六人が死んでしまったことを考えると、気を抜くことはできない状況だ。それでも一緒に戦ってくれる仲間が増えたことには、心の底から頼もしく感じている。
新しく召喚された勇者の中には、中等勇者という強い人がいた。私たちとは違って最初から魔法系スキルを使える頼もしい仲間だ。彼女はとても優秀で、先頭で私たちを率いてくれている。
そんな頼もしい仲間たちのおかげもあり、初日は死者ゼロで終えることができた。ありがたい、これも彼らを育ててくれた先輩の知識のおかげだ。
とはいえ、私含め全員が少なくない怪我を負ってしまった。私は腕に噛まれ傷をおってしまったが、今は痛み止めなどで気分を和らげている。運が良いことに仲間の中に研修医として働く方がいて、応急処置を手早く行ってくれた。
あらためて、誰も死ななかったことがこんなに嬉しいとは思わなかった。
さて、話を変えよう。
今日はとあることを目的として、私たちは行動をしていた。
このクエストに参加している他の拠点の勇者たちと合流し、一緒に魔王と戦うために交渉するのが目的だ。同時に彼らが先んじて魔王に戦いを挑まないように、私たちがそれを阻止することも目的の一つにある。
そこで魔王がいるであろう歌舞伎町付近で、魔王のテリトリーに入らないように立ち回りながら、他の人の痕跡がないかをずっと探していた。だけど残念ながら新宿付近で見張っていても彼らと遭遇することはできなかった。
彼らはどこにいるんだろう。
一体、どんな人たちだろうか。
優しく、頼もしい仲間だったらいいなと思っている。
その他に、新宿付近を巡回しているときに、いくつか物資を調達できた。
栄養価の高そうな缶詰や賞味期限は切れていたけど食べれそうなカップ麺、その他に丈夫そうな衣服や靴など、多くの収穫があった。
特に着替えはとても嬉しかった。
この世界に来てから着替えなどなく、毎日同じ服を着ていた。拠点で水は使えるので水洗い程度はできたのだけど、それ以上のことはできなかったので、血で汚れた衣服を着るしか道がなかったのだ。下着もずっと同じものを履いていた。だけどこれで新品の服に着替えられて、少し気分がリフレッシュできた。
明日からまた頑張ろう。
私たちも目的のために頑張るけど、それ以上に先輩が頑張っている。並ぶことはできないかもしれないけれど、役に立つくらいはしたいと思ってるし、やらなくてはならない。
だから、明日は今日より頑張ろう。
頑張るためにも、今日はゆっくり休もうと思う。
運よくみんなが一緒に寝れそうなスペースがあったので、交代で仮眠を取ることにした。
◆クエスト2、二日目。
神々廻先輩から連絡がきた。
先輩は他の拠点の勇者とすでに合流していたようで、彼らの何人かが私たちの元へとやってきて、この世界でも使える無線機を渡しに来てくれたのだ。その無線機で先輩と連絡を取ることができた。
無線伝手に先輩から「発光している勇者の指輪を探してほしい」と言われた。
その指輪はこのフィールドのどこかに必ず存在し、もし見つかれば魔王との戦闘がだいぶ有利に働くと言っていた。なくても良いが、あったらなおよいモノ。だけどあまりに小さくて探すのが大変なので、目を凝らす必要がありそうだ。
先輩曰く、本当にどこにあるかは分からないとのこと。
過去の経験ではゴミ箱に紛れていたこともあったし、売られているアクセサリーに紛れていたこともあったし、地面に落ちていたこともあったらしい。
小さな仕事でも、役に立てるならば私は嬉しかった。
モンスターと戦いながら探すという中々に難しいお願いではあるけれど、せっかくなら戦いに慣れて、もっと強くなる方法も模索していこう。
そして誰も死ななように全力を尽くそう。
もう誰かが死んでいる光景を見るなんて嫌だ。
かくして私たちは二手に分かれ、フィールド内を探し始めた。
◆クエスト2、三日目。
見つからない。
どれだけ目を凝らしても光り輝いている指輪が見つからない。それどころか発光している物体すら見つからない。
今回のフィールド境界線はかなり大きく設定されていると、もう一つの拠点の方々に聞いた。範囲は西は笹塚、北は新大久保、東は新宿御苑、南は明治神宮手前程度までの広さがあるらしい。かなり範囲が広いことに加えて、東京は雑多としていて探す範囲があまりにも広すぎる。
一体、何を目印に探せばいいのだろうか。
そう思い無線で尋ねてみると、先輩は端的に言った。
――見ればわかる、と。
――俺たち勇者ならば直感でそれが勇者の所有物であることがわかる、と。
意味がわからなかった。
見ればわかるとは、あまりに感覚的な指示だった。
今日の成果はゼロなので、進捗を短く書いておこうと思う。
正直あまり書く内容がないし、書くべきなのかわからない。
今日は三須原さんが右腕と片脚、脇腹を失くす重傷を負った。
だけど他の拠点で回復スキルを使える方がいて、彼女が三須原さんの命を繋いでくれた。もう三須原さんは戦力に数えない方がいいだろう。今もベッドで痛みのあまりうめき声をあげている。今日を乗り越えるか、乗り超えられないかは正直わからない。
悔しい、私にもっと力があればこんなことにはならなかった。
一秒でも早く指輪を見つけて、三須原さんに希望を与えたい。
もう少しだけ耐えて、死なないで。
枯木さんは瀕死の重傷だったのに、クエストが終わって拠点に戻ったら元気な元の姿に戻った。だから、このクエストさえ乗り越えればまた元気な三須原さんの笑顔が見れる。
そのために明日も頑張ろう。
◆クエスト2、四日目。
三須原さんが死んだ。
他にも色んな人が怪我を負い、もはや野戦病院と化してきた。
はやく、このクエストを終わらせなければ。
今動けるのは私、迅君、洞木さんの三人だけだ。
◆クエスト2、八日目。
見つからない。
あれから毎日探しているけど、手がかりすらわからない。
一体、どこに探している指輪があるのだろうか。
◆クエスト2、九日目。
手がかりを見つけた。
迅くんが宝の地図のような紙切れを見つけたのだ。
そこに書いているところを、これから探しに行く。深夜だけど関係ない、みんなが重傷を負っている今、一秒でも早く希望を繋がなければ。
明日、私たちはまた魔王と戦うことになるだろう。
もし生き残っていれば、またこの日記を書こうと思う。
――小神狐子




