十二月三十一日
お父さんとおじいちゃんは最初こそ空気を掴むのが難しそうだったが、時間をかけてゆっくりと打ち解けていったらしい。
おばあちゃんから聞いた。
私は知らない。
帰りの車で寝落ちしてしまって、起きた時には布団の中にいたから。
ただ、朝食の時には重い空気は何もなくて、四人で一緒に朝食を食べた。
それから四人でお母さんのお墓参りに行って、帰ってきたら大掃除をした。
埃を被っていたお父さんの部屋も屋根裏も全部。
お父さんの部屋の椅子に座り机に向かう。
十四年も経ったのに電球のフィラメントは切れていなかった。
十四年も経ったけれど机の傷はそのままだった。
私が手紙を上手に書けず、むしゃくしゃして削ったんだった。
懐かしい。
お父さんは『ここから逃げたら二度と戻っては来れない、片道切符だよ』なんて言っていたけれど、私は全然そんな風に考えていなかった。
だからいつか帰ってくるお父さんと私に手紙を書いた。
私がお父さんを嫌いになった時、仲直りできるように。
本当に馬鹿だ。
幼い頭で捻りを効かせようとした文章なんて誰が理解できるんだよ。
でも、こんな文章だったから線路を歩けた。
お父さんと沢山話すことができた。
全部思い出すことができた。
あの日の感情も全部。
だから、無駄なものは一つもないんだって。
大掃除の途中でおばあちゃんが林檎を剥いてくれてみんなで食べた。
甘くてシャキシャキしていて美味しかった。
クラシックな生活がしたいと言っている割に部屋に少ししか本がないことを指摘されて、お父さんの部屋の本を全部持ち帰ることにした。
その中の、私の手紙が入っていた本を手に取った。
松重清の『とんび』という本だった。
掃除をサボってその本を読んでいたらお父さんに見つかってしまい、サボるなって言われてしまった。
それと、
「読み終わったら感想聞かせて欲しいな」
という言葉も。
夜は紅白とかマラソンとかを見て、年越しそばを食べながらのんびりと新年を待った。
新年はいつも二人きりだったから、四人家族みたいな空気は初めてだった。
当たり前のような事かもしれないけれど、これもどんどんクラシックになっていくのかもしれない。
新年は刻一刻と近づいてくる。
新年まで数分前となった時ぐらいからテレビの中でも新年待機という感じになりそわそわし始めている。
新年までの時間をみんなでカウントダウンをする。
五
四
三
二
一




