奴との出会い
「怨瑠眼駅」——それは平安の昔から語り継がれる、決して踏み入れてはならぬ“存在しない駅”。
仕事帰りの男がそのホームに迷い込んだ瞬間から、時間は狂い、人も心も姿を変えてゆく。
彼が目にしたのは、夢か、未来か、それとも……。
消えた駅の先で待つものとは——。
あなたは“降りられる”覚悟がありますか?
東京、そこは人が行き交う街。
人は歩き、車は走り、電車は飛び交うように走る、
そんなごく普通のありふれた街で、あるひとつの駅がある。
「怨瑠眼駅」
その駅には平安も昔から言い伝われているある化け物の名前が由来だ。
その化け物は……
まるで黒い玉で泡のように透き通り…その球体の真ん中には赤い色をした目が付いている存在……
それがいくつも重なり集合体になっていく……
そしてその集合体の中に所々ちいさな顔がいくつも現れ…それが人を襲う……というもの。
その化け物は、普段はとても大人しくとても温厚で何もしなければ人を襲う事もない存在らしい。だがそれが牙を剥くようになったのは、ある人間がそれに手を出したかららしい。
時は昭和、セーラー服を着たある女子高生達が東京の人気の無い道を歩いていると…そこにそれは現れた、それは静かな眼差しでこちらを見ている。
それを見た女子高生たちは悲鳴をあげた、そしてそのうちの一人が持っていたペットボトルに入った炭酸水の蓋を開け、中身をそれに投げかけた。
するとそれは怒り狂い、やがていくつもの顔が現れ…牙を剥き、その炭酸水をかけた女子高生の身体を包み込み、連れ去ってしまった……。
それ以来それは、人を襲うようになり姿を現し襲う時、それが現れる前触れとして近くには必ず、黒いセーラー服を着た女子高生が現れるらしい。
その女子高生の見た目は…身長は170cmくらいで…黒いセーラー服に紫の長いスカートを身にまとい…髪型はロングヘアで前髪は長く…目は隠れている…。
そんな言い伝えと都市伝説と共に我々は生きている。
だが僕は知らなかった…この言い伝えには…まだ続きがあることを……。
僕は染谷理人、24歳の会社員だ。
今は営業の仕事に就いている、顧客第一でお客様の為に働き、奉仕する。
この言葉に魅力を感じ、毎日必死に頑張って来た。組織に囚われず、間違っていることは但し、みんなの憧れになれる存在になるために。
だがいつからだろう………その言葉も忘れて…目上の人の顔を伺い…理不尽な事へ何も言い返すこともせず…ただ言われたことをやるだけになったのは…
時は令和5年
僕はいつものように出社する。だが上司も部下も、誰も見向きもしない。既に僕は空気のような存在になり、いないもののように扱われていた。
仕事も昔はいくつもの営業を任されていたのに、今は入りたての新人がやるようなデスク作業と残業ばかりだ。
もう何も感じなくなっていた。
空気を読んで周りに合わせれば……何も変な目で見られずに済む……上から目をつけられることも無くなる…。そう思いながら生きていた。
ある日、いとものように残業を終え帰ろうとしていると、上司立ちからから…
「おう染谷、この後時間あるか?」
そう訪ねなれ…
「いえ、ないですが…」
と、応えると、
「ならお前も来い! 今日は新入社員の歓迎会だ!」
と言われた。
「そうか……もうそんな時期か……。」
新入社員の歓迎会、それは一件傍から見たら、新たな仲間のために開き、交流し、仲良くなり、今後の活躍のためにみんなで気を引き締める。
そんな感じで開かれるのだろうが……ここは違う。
と言うのも、ここでは…ただ上司達がメインの飲み会。ただ楽しみたい目上の人たちのご接待だ。
新入社員に酒を積ませ、一部の上司は女性社員にセクハラ発言をして女子社員の身体を触っている。嫌がる女子社員達だが…注意すると上司たちの機嫌を損ねる。
前にその件で上司の機嫌を損ねた同期がやがて僕と同じような扱われ方になり、遠くに飛ばされたことがあった。
この会社の部署は終わっているのだ……。
僕はこんな地獄で理不尽な現実に何も言い返すことはせず、ただ静かに飲んでいるだけ。
すると酔っ払った上司達が、
「次々! 2軒目行こう!」
そう言ってあまり乗り気でない女子社員たちの方を組み無理やり連れていこうとする。
中にはある女子社員に
「この後、ホテル行かない?」
と言うの上司までいた。
もううんざりだ……。
急いで帰ろうとすると、
「染谷! お前も来いよ!」
上司に捕まってしまった…。
断ることも出来ずに、そのまま2軒目3軒目と行ってしまった。
すると上司達がようやく、
「もう終電近いから御開きにしよう。」
そう言ってこの飲み会が終わった。
早く帰ろうとしたら、一部の同期から、
「染谷、先輩達酔っ払いすぎてヘロヘロだから送ってやれ」
そう言われた。
「そんな…」
「もう帰って寝たいのだ、明日も仕事があるし……。」
そう心の中で思ったが、
「あの同期もあまり人柄が良くなく、粗暴だ。変に断ったらどんな目にあうか分からない……。」
そう思い、仕方なく酔っ払った上司たちを家まで送ることにした。
だが酔っ払った上司たちは僕にダル絡みをして来る、
「良いか? 最近の若者はな…」だの、
「それだからお前はダメなんだ…」だの、
色々僕に愚痴や説教をして来る。
そんな上司達をタクシーで送ろうとしたが、あいにく、タクシー代がもうなかった…。
なぜなら、今までの飲み代は僕が払っていたからだ。
好き勝手飲んだ上司や粗暴が目立つ同期たちの分を全部払ったのだ。
仕方なく電車で送ろうと思い駅へ降りた。
相も変わらずダル絡みをする上司達…。
待っているとようやく駅へ電車が着いた。
「さっ、乗りますよー」
そう声を掛け上司達を電車に乗らせる。
クタクタになりながら窓の外を見ていると、駅のホームから女子高生が入ってきた。
「もう0時近いのに……変だな……。」
そう思っていると、電車はやがて発進する。
電車も乗らずにただ立っているだけ…すると……
女子高生は口を開いた…。
「今日は何をしようかな?」
次の瞬間、電車の外にいきなり黒い玉のような集合体がまとわりつく!
「なっ! なんだこれは!!!!」
「キャーーーーー!!!!」
「おい!!! ここから出せ!!!!」
あちこちから乗客の悲鳴や叫び声が飛び出す!
するとその黒い集合体はやがて電車の中にも現れ、乗客にまとわりつく!
「嫌だ!!! 離れて!!!!!」
「なんだこれ!!!! クソっ!! 離れない!!!!」
それはやがて僕の方にも近ずいてくる!
上司達を連れて早く逃げようとしたが、上司達は足がくすんで動けない。
「おっ、おいっ、 なんだこれはっ!! ゆっ、夢か!?」
そう上司達が情けなく呟いていると、あっという間それは僕たちにまとわりついた!
「なっ、何だこれっ!」
そう思っているとその黒い玉の集合体はやがて所々にちいさな顔が次々と浮かび上がる!
するとその顔は不気味な笑みを浮かべ、次々と乗客達を襲い始めた!
「ウギャァアァァァァアアァアァァァアァ!!!!」
「いっ! 痛いっ!!!!」
乗客達の苦しむ悲鳴や声があちこちに飛び交っていた!!
すると僕の身体に絡みつく黒い集合体もやがてちいさな顔がいくつも現れた!!
するとそのうちのひとつの顔が僕を見て、
「みぃつけた」
そう僕に声をかけた…
するとその顔は勢いよく僕の首に噛み付いた!!!
「うがっ!!」
そう声を上げると、視界は一気に真っ暗になった。
「気を失ったのか…。」
そう思っていると、
ある少女が僕の目の前に現れた。
その少女は……見た目は……身長は159cmくらい……金と黒の混ざった髪型に…団子ヘアをしている……。
顔は可愛い系で……制服に肌色のスクールベストを着ていて…膝丈が見える短いスカート…。
爪にはネイルをしている……まるでギャルのような身なりだ……。
そんな少女が僕の目の前に現れて……静かな笑みを浮かべた。
まるで、
「こやつに何をしてやろうか…ニヒヒ…。」とでも言うような…。
このときだった……
僕の人生で最も殺したい奴と出会ったのが……。
読んで下さりありがとうございます。
この物語は、僕が寝ている時に見た夢の話を書きました。
是非楽しんで下されば幸いです。