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My Buddy  作者: 上本准
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後編

そうして孝典の呼び掛けに河口は応じて更には同学年でドラム志望の子も加わりスリーピースバンドを組む事になった。3人は10月にある文化祭へ向けて船出をした。

孝典の思いとは裏腹にドラムの子はまずバンド名を決めたがっていた。

そんなドラムの子が決めた名前…孝典は聞き流していたがバンド名が決まってようやく練習を始める事になった。

河口は音楽に対するこだわりがかなり強かった。

確かに言いたい事は分かるがここはあくまで高校の軽音部でそんなこだわりはプロじゃないと分からない。

そう孝典は思っていた。

そして河口はクラスメイトと仲が良く孝典の考えた曲に対してクラスで1番の秀才に歌詞を考えてもらった。

そして出来た歌詞を2人で歌い易いように修正していった。

こうして部活の時は3人で、部活終わりは2人でバンドの練習に明け暮れた。

2人での自主練は夜の公園の時もあれば孝典が昔通っていたピアノ教室の伝手で借りた音楽スタジオで練習する事もあった。6月のある日2人で音楽スタジオで練習しているとある人がふらりと入ってきた。

話を聞くと孝典のピアノ教室の先生の友達だった。

その人が言うにはピアノ教室の先生は孝典の事を非常に高く買っておりバンドの先生を宛がってくれたのだ。

そして夏休み前のある日部活前に孝典は3人を集めた。

「この前、河口君は会ったと思うけどあの人達がやってるバンドが僕たちの演奏を見て色々指導してくれるって言ってくれたんだ。だから夏休み中に集まって練習しようと思うけど2人はどう?」

河口はもちろん賛成した。

しかしドラムの子は違った。

「俺はただ女の子にモテるからバンド始めただけでドラムなのも小さい頃から太鼓の達人で遊んでいただけだからなんだよね…夏休み中に集まって練習するとかあり得ないわ。もうバンドに対する熱も醒めたわ。後は2人でやってくれ。」そう言ってドラムの子は席を立った。

こうして2人だけのバンドとなった。

2人は相談した結果新しいメンバーは加えず文化祭はサポートメンバーを加える事にした。そして演奏をみてくれるバンドのドラムの人に懇願すると快く了承してくれた。

他のメンバーの人も「それなら文化祭観に行かないとな。」と明るく言ってくれた。

ドラムにプロの人が入ったお陰で演奏もかなりまとまってきた。

ドラムの人とは中々一緒に練習は出来なかったが2人での自主練もほぼ毎日やっていた事もありメキメキと力をつけて行った。

夏休み最後の合同練習ではプロである他のメンバーがこの演奏を聴いて舌を巻いていた。

2人とも上手いけど特に孝典は作曲のセンスも抜群だし大物になるぞとプロであるメンバーは2人を高く評価していた。

2人は手応えを掴んで2学期をスタートさせて部室に向かった。

すると河合が意地悪な笑みを浮かべて2人に近寄ってきた。「なぁ、お2人さん。今度の文化祭、生徒以外の人とバンドを組んで演奏するみたいだけどそれダメだからなぁ。」孝典は動きが固まった。河口は負けじと反論した。「でも、生徒の関係者なら文化祭に入場出来るだろ。」河合はまたしても意地悪な笑みでこう返した。「入場はな、だけどステージには上がれない。当たり前だよな。だってこの学校の生徒の為のステージだもの。」こう言われては2人ともぐうの音も出なかった。「それと、今泉君だったらウチのバンドに入ってきても良いよ。隣のうるさいのはごめんだけど。」河合は高笑いしながら最後にそう言って部室に入って行った。2人は部室に入る事なく帰路に着いた。

2学期が始まって最初の日曜日になった。この日は合同練習の日だった。そして2人はドラマーの人に頭を下げた。ドラマーの人からは「今度ライブハウスで一緒にライブしよう。」と明るく言ってもらえた。

「でも勿体無いよなコレだけ実力があるのに。」そうベーシストが言った。「なぁお前らツーピースでやるつもりは無いのか?」今まで黙り込んでいたギタリストが2人に声を掛ける。「本当はそうしたいけど2人で作った曲にはドラムが必要だから…」河口はそう答えた。「なら有名なツーピースのコピーで良いじゃねぇか。高校の文化祭なんてそんなもんだ。お前らの作った大切な曲は今度コイツとライブハウスで演奏する時までとっておけば良いじゃねぇか。お前らならライブハウスでもやっていけるさ。だけど、コレからはツーピースで出来るように曲をアレンジするかそこの坊ちゃんが他の人と仲良く出来るようにした方が良いけどな。」ギタリストの明るいアドバイスが2人の心を明るく照らした。

そこから急ピッチでコピーバンドの練習を再開した。

ここまで猛練習を積んできた2人には容易い事だった。

文化祭の2週間前。バンド名を決める必要があった。

2人は元ドラムの子が決めたバンド名が気に入らなかった。孝典は新しいバンド名が全く浮かばなかった。

「2人とも苗字に河と泉が入ってるから『the Waters』で良いんじゃないの?」そう河口が言った。

孝典は内心安直過ぎると思ったが黙って頷いた。

孝典は前のバンド名以外だったらなんでも良かった。

なぜなら2人でこのバンド名に意味を付け加えられた良いと思っていたからだ。

そして文化祭当日。よくしてくれたバンドの人達も観にきてくれた。そして「the Waters」の演奏は1番の盛り上がりを見せた。彼らの演奏技術は高校生のレベルを凌駕していたのだ。

演奏終わり2人でグータッチを交わした。

河口は孝典に声を掛ける。「なぁ、俺達今まで苗字で読んでいたけど名前で呼ばないか?」孝典は柔らかな笑みで頷いた。そして「今日は最高の演奏だったよケイ。」すると河口が「で、今泉の名前って何?」

今年の2月は風が強く雪がチラつく日も何日かあった。

しかし今日は風も弱く雪もなく空を見上げてたら満月が照らしていた。

今晩は「the Waters」が初めてライブハウスでライブをする日だった。

高校の文化祭では全く緊張していなかった2人もこの日はかなり緊張していた。サポートメンバーのドラマーが明るく2人に声を掛けた。「2人とも大丈夫。うちのバンドのギター兼ボーカルなんて初めてのライブで音外しまくっていたから。2人の実力考えたらアイツよりも酷い事にはならないよ。」「誰が音外しまくったって。大体お前のドラムが下手過ぎるからだろ。」いつも良くしてくれていたバンドメンバーの方々のやり取りを見て2人はホッコリした。

そしてギタリストの人が2人に声を掛けた。

「さあ、思いっ切り行ってこい!」

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