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My Buddy  作者: 上本准
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前編

今日は憧れだった高校の入学式。

今泉孝典はワクワクしていた。

孝典は幼い頃から楽器の演奏が好きだった。

そんな孝典に両親はピアノ教室に通わせた。

メキメキと実力をつけていき小学生の頃にはコンクールに入賞した事もあった。ただ孝典はクラシックではなくJ-POPに強い関心を抱く様になった。

元々両親も将来音楽家になって欲しいからピアノ教室に通わせた訳ではなくただ楽器のおもちゃでいつも楽しそうに遊んでいる様子をみて軽い気持ちでピアノ教室に行かせたのである。

そして両親はコンクールに入賞しても落ち着いていた。だから孝典が中学校に上がったタイミングでピアノを辞めると言っても何も言わなかった。

そうして中学生になってからは独学でメロディを作る様になっていった。

そうして孝典はかなりの数の曲のストックを持つ事になった。ただ孝典には一つ大きな悩みがあった。それは文才が無いことであった。

孝典の描いていたバンド像は爽やかな曲調で誰かの背中を押す応援歌や淡い恋心を歌ういわば王道のJ-POPバンドだ。その為にはやはり歌詞というのが重要になってくる。孝典はなんとかして良い歌詞を書こうと思ったが3日で断念した。孝典は自分の不得意な分野に時間を割くことよりも自分の得意な分野に時間を割いてたくさん曲を作ろうと思ったのだ。

歌詞を付けるのはいつか出会う相棒に任せる事にしたのだ。

そして今日の入学式に至るのだ。

そして入学式も終わり高校入学後初めてのホームルームの時間になった。

名簿番号順なので孝典の順番は早かった。

「今泉孝典です。よろしくお願いします…」

今にも消えそうなか細い声でそう言うのが精一杯だった。

孝典は極度の人見知りなのだ。

他の人の自己紹介が右から左に抜けていくあゝあの芸人のネタは本当だったのかなとそう思いかけた矢先だった。

「河口恵一です。趣味は楽器の演奏です。

将来の夢は武道館でライブをする事です!」

孝典はビックリした。まさかこんな所に自分と同じ夢を抱いている人間がいる事に。

そこから1週間が経過して部活動への入部をする時期になった。孝典が入部する部はもちろん軽音部だった。

そしてそこにはあの河口もいた。

「ええと、君同じクラスだよね。君も軽音部入るんだ。」軽音部の部室の前で河口がそう孝典に声を掛けた。「そうだよ。コレからよろしくね河口君。」

そう柔らかな笑顔で孝典は対応した。

なぜだろう普段は人見知りをするのに河口に対しては人見知りをしなかった。

部室に入ると先輩から「入部希望者は1列に並べ。」と指示が飛んだ。入部希望者は全員で10人程度だった。

「よし今から名前を言って歌を歌え。」先輩が意地の悪い顔をしながらそう言った。

アカペラな上に緊張するこの場面。

河口を含めて全員が音を外していた。

その様子を観ながら先輩達は「ヘタクソ!」と野次を飛ばして意地の悪い顔で笑っていた。

そして最後の孝典の番になった。

「今泉孝典です…よろしくお願いします…」

孝典は今にも消えそうな声で顔を若干赤くしていた。

「おいおいアイツめちゃくちゃあがってんじゃん。」

「みんなヘタクソだから気にせず歌えよー」

またしても先輩から意地悪な野次が聞こえてきた。

孝典はふと横をみると一列に並んだ同級生達もたった1人を除いて口角を上げていた。

恐らくみんなは自分よりもヘタそうな人がいて安堵していたのだろう。そんな感情からくる表情だった。

だけどただ1人だけ口を真一文字に結んで先輩達を睨みつけている男がいた。

孝典は静かに歌い出した。あの緊張した受け答えとは裏腹に澄み渡った美しい歌声だった。

歌い終わると今まで野次将軍をしていた先輩がバツが悪そうにしていた。

「みんなの実力は分かった。今から各々で練習をやってくれ。」そういうと野次将軍は孝典の方に向かっていった。「俺の名前は河合春紀。気楽に春紀先輩とでも呼んでくれ。突然だが俺とバンドを組まないか?」

この肥えた豚は厚かましい態度で孝典に迫ってきた。それに対して孝典は「僕はもう組む人を決めているのであなたとは出来ません。ごめんなさい。」

孝典は毅然とした態度でそう言った。

そして河口の元に歩み寄ると、

「河口君一緒にバンドやろうよ。」

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