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世界観という名のまえがき

 はじまりは隣人同士のいさかいだった。

 その日締結された「人間の差の一切を排除し統一された価値観の下、共に暮らすことで恒久的な平和を守ることを目的とする条約」――通称人間廃絶(じんかんはいぜつ)条約を支持するか否かという論争が激化し刃傷沙汰に発展、ついには死者が発生する事態となった。

 これが共通する目撃証言であり、()()()()()()()()()()()()()()()


 性別も年齢も宗教も障害も人種も国籍も性的指向も目撃箇所も、彼らは共通しなかった。


 後に隣人戦争と呼ばれる全世界で同時に発生したその諍いは戦火を広げ続け、八十億人が四十億人に減り、四十億人が二十億人に減り、諍いをする相手が身近からいなくなることでようやく終結した。

 この戦争の首謀者こそ人間廃絶条約の提唱者、説明するのも憚る人類史上最大の汚点、檻の向こうで屍を晒し続ける墓無しの大罪人、R・M・アルファベットである。


 彼女は自身の掲げる理想のため、とあるコンピュータウイルスを生み出した。そのウイルスはネットワークを介して世界中のあらゆる端末をハッキングし、数少ないオフライン端末さえも外部メモリを通じて侵入、汚染された端末はそこから出力されるあらゆる光、音、文字を媒介とし、人間を少しずつ彼女の思想に染め上げていった。そして感染濃度が閾値を超えた人間の発する声が、音が、文字が、絵が、映像が、仕草が、プログラムが感染源となって、感染は人から人へ。

 彼女の理想を叶えるための思想染色はまさに理想通りの展開を迎えていたと言える。


 唯一構想外だったのは、彼女と同程度の慈悲なんて当然皆持ち合わせていると、錯覚していた事だった。


 彼女の残した手記にはこう書かれている。

 ――バベルの塔は二度崩された。

 一度目は神の怒りを買った人間の傲慢によって。

 二度目は神の威光を借りた背信者共によって。

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