表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/13

第8話「勝利の余韻と新たな課題」


「やったね、さくらちゃん! 私たち、勝っちゃったよ!」


興奮冷めやらぬりんごの声に、さくらは我に返った。


「う、うん...本当だね」


さくらの頬を、汗と涙が伝う。デビュー戦での予想外の大逆転勝利。その実感が、ジワジワと体中に広がっていく。


「ムーンライト☆フェアリーズ、素晴らしい戦いでした!」


場内アナウンスが響き渡る中、観客からの歓声が鳴り止まない。


(すごい...こんな歓声、高校の試合では味わったことない)


さくらは、胸が熱くなるのを感じた。


「さくら、りんご、よくやった!」


ダイナマイト☆けんじが、リングサイドから二人を迎える。


「けんじさん! ありがとうございます!」


さくらとりんごは、リングを降りるとすぐにけんじに駆け寄った。


「お前たちの可能性は、まだまだこんなもんじゃない。これからが本番だ」


けんじの言葉に、さくらは力強く頷いた。


「はい! もっと強くなります!」


控室に戻ると、そこにはマイク・ファンタジアの姿があった。


「ブラボー! 素晴らしい戦いだったぞ、ムーンライト☆フェアリーズ!」


派手な身振り手振りで喜ぶマイクに、さくらたちは照れくさそうに笑う。


「さぁ、今夜は祝勝会だ! エターナル・リングスの面々も、お前たちの活躍を祝福したいと言っている」


「え? 祝勝会ですか?」


さくらが驚いた顔をすると、マイクは大きく頷いた。


「もちろんさ! 新人の大活躍は、団体の宝なんだ。さぁ、シャワーを浴びて、会場に向かおう!」


こうして、さくらとりんごは、思いがけない祝勝会へと向かうことになった。


---


エターナル・リングスの本部ビル最上階。そこに設けられた大広間は、レスラーたちで賑わっていた。


「わぁ...」


さくらは、目の前の光景に圧倒される。


様々な種族のレスラーたちが、華やかな衣装に身を包んで歓談している。中には、動物のような外見の者や、半透明の体を持つ者までいる。


「さくらちゃん、あれ見て! 料理がたくさん!」


りんごが指さす先には、魔法で浮遊する料理の数々。

見たこともない色や形の料理が、宙を舞いながらゲストたちの皿に降り立つ。


「すごいね...」


二人が呆然としていると、見知った顔が近づいてきた。


「やぁ、ムーンライト☆フェアリーズ! 素晴らしい試合だったよ」


「あ、ありがとうございます!」


声をかけてきたのは、エターナル・リングスのベテランレスラー、サンダー・ゴリアテだった。全身の筋肉が唸りを上げそうな巨漢だ。


「特に最後の『ムーンライト・メテオ・クラッシュ』は見事だった。あんな技、初めて見たよ」


「え、えへへ...」


さくらは照れくさそうに頭を掻く。


「でもね」


サンダー・ゴリアテの表情が、急に真剣になる。


「まだまだ序の口だ。本当の強敵は、これからだよ」


「え?」


「今のお前たちじゃ、『四天王』には到底及ばない」


「四天王...?」


さくらが首を傾げると、サンダー・ゴリアテは不敵な笑みを浮かべた。


「エターナル・リングス最強の4人のレスラーさ。奴らと戦えば、お前たちが今どのレベルにいるのか、痛いほど分かるだろうな」


その言葉に、さくらは身震いした。

まだ見ぬ強敵の存在。そして、自分たちの実力不足。


(私たち...まだまだなんだ)


「おや、重苦しい顔をしているね、さくらちゃん」


不意に、軽やかな声が聞こえた。


「美咲さん!」


振り向くと、そこには「紅蓮の虎」美咲が立っていた。


「デビュー戦、おめでとう。予想以上の活躍だったわ」


「あ、ありがとうございます」


さくらは、少し緊張しながら答える。


「でも」


美咲の目が、鋭く光る。


「あの程度じゃ、私には全然及ばないわよ」


「...!」


さくらは、思わず息を飲む。


「ふふ、冗談よ。でも、本当に強くなりたいなら...」


美咲は、さくらの耳元で囁いた。


「明日の夜、裏庭に来なさい。特別に、私の特訓を受けさせてあげる」


そう言うと、美咲はくるりと背を向け、去っていった。


(美咲さんの...特訓?)


さくらの心臓が、高鳴る。


---


祝勝会が終わり、さくらとりんごは自分たちの部屋に戻ってきた。


「ねぇ、さくらちゃん」


ベッドに腰掛けたりんごが、心配そうな顔で言う。


「私たち、このままじゃダメなのかな...」


さくらは、窓の外を見つめながら答えた。


「うん...もっと強くならないと」


「でも、どうすれば...」


その時、さくらの脳裏に、美咲の言葉が蘇る。


(明日の夜、裏庭に...)


「りんごちゃん」


さくらが、りんごに向き直る。


「明日から、もっと厳しい特訓をしよう。絶対に、もっと強くなるんだ」


「う、うん!」


りんごの目が、決意に満ちて輝く。


「私たち、きっと四天王にも勝てるようになるよ!」


「そうだね!」


二人は、固く握手を交わした。


その夜、さくらは眠れなかった。

頭の中では、デビュー戦の興奮と、これからの課題が入り混じっていた。


(もっと...もっと強くならないと)


窓から差し込む月の光を見つめながら、さくらは誓った。


(絶対に、トップレスラーになってみせる!)


翌日。


朝早くから、さくらとりんごの特訓が始まった。


「はぁっ!」


さくらの体が、青白い光に包まれる。


「ムーンライトパワー、集中させて...」


目の前に置かれた大きな岩を、重力操作で持ち上げようとする。


「うっ...!」


しかし、岩はわずかに揺れただけで、すぐに元の位置に戻ってしまう。


「くっ...まだダメか」


「大丈夫だよ、さくらちゃん! 少しずつ良くなってるもん!」


りんごが、励ますように言う。


「ありがとう、りんごちゃん」


さくらは、汗を拭いながら微笑んだ。


「よーし、今度は私の番!」


りんごが前に出る。

その小さな体から、かすかに光る粉が舞い散る。


「フェアリーダスト、もっと広範囲に...!」


しかし、光る粉はすぐに消えてしまった。


「むぅ...まだまだだね」


りんごが、頬を膨らませる。


「大丈夫、きっと上手くなるよ」


今度はさくらが、りんごを励ます番だ。


そうして、二人の特訓は昼過ぎまで続いた。


「はぁ...はぁ...」


木陰で休憩するさくらとりんご。

二人とも、疲れ切っていた。


「さくらちゃん、私たち...本当に強くなれるのかな」


不安そうな声で、りんごが言う。


「うん、きっとなれる」


さくらは、強く頷いた。


「だって、私たちにはまだ見ぬ可能性がある。それに...」


さくらは、美咲との約束を思い出す。


(tonight、裏庭で...)


「私たちには、助けてくれる仲間もいるんだ」


「うん! そうだね!」


りんごの表情が、明るくなる。


「よーし、午後からも頑張ろう!」


「そうだね!」


二人は、再び特訓を始めた。


そして、夜。


さくらは、こっそりと裏庭に向かった。


(美咲さん...来てくれるかな)


月明かりだけが照らす裏庭。

そこに、一つの影が佇んでいた。


「来たわね、さくら」


「美咲さん...!」


美咲が、月光に照らされて立っている。


「覚悟はできてる? 私の特訓は、とてもキツイわよ」


美咲の目が、赤く光る。


「は、はい! どんなことでも頑張ります!」


さくらは、固く握りしめた拳を前に突き出した。


美咲は、満足げに笑った。


「そう。じゃあ、始めましょうか」


美咲の体が、炎に包まれる。


「さぁ、お前の限界を超えるんだ!」


こうして、さくらの秘密の特訓が始まった。

彼女の成長の軌跡が、ここから大きく加速していく—


まだ見ぬ強敵、四天王。

そして、自分たちの限界。


さくらたちの前には、多くの壁が立ちはだかっている。

しかし、彼女たちの目は、未来への希望に満ちて輝いていた。


エターナル・リングスの新星、ムーンライト☆フェアリーズの物語は、

まだ序章に過ぎない。


真の戦いは、これからだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ