第6話「エターナル・リングスへようこそ」
「うぅ...緊張する...」
さくらは、控室の鏡の前で自分の姿を確認しながら、小さくつぶやいた。
今日は、さくらとりんごのタッグチーム「ムーンライト☆フェアリーズ」のデビュー戦。
エターナル・リングスの新人戦「ルーキーズ・エクスプロージョン」の開幕戦だ。
「大丈夫だよ、さくらちゃん! 私たちなら絶対勝てるって!」
りんごが、さくらの肩に止まって励ます。
「うん...ありがとう、りんごちゃん」
深呼吸をするさくら。
その時、ノックの音が聞こえた。
「おーい、さくら、りんご。そろそろだぞ」
ダイナマイト☆けんじの声だ。
「は、はい!」
さくらは、もう一度深呼吸をして立ち上がった。
廊下を歩きながら、さくらは自分のコスチュームを見つめる。
淡い青色のレオタードに、月の模様が散りばめられている。
胸には「ML☆F」の文字。
(これが...私のコスチューム)
「さくらちゃん、カッコいいよ!」
りんごが、さくらの横で飛びはねながら言う。
りんごも、さくらと色を合わせた青いドレスを着ている。
「りんごちゃんこそ、すっごくかわいい!」
二人で笑い合う。
その瞬間、さくらの緊張が少し和らいだ。
「よし、ここで最後の確認だ」
けんじが、二人の前に立ちはだかる。
「さくら、お前の『ムーンライトパワー』の制御は?」
「はい! まだ完璧じゃないですが、りんごちゃんと一緒なら大丈夫です!」
「りんご、お前は?」
「はい! さくらちゃんのサポートは任せてください!」
けんじは満足げに頷いた。
「よし。では、必殺技の確認だ」
さくらとりんごは顔を見合わせ、にっこりと笑う。
「せーの!」
二人が同時に叫ぶ。
「ムーンライト・メテオ・クラッシュ!」
「ふむ、いいぞ。では、行ってこい!」
けんじに背中を押され、さくらとりんごは入場口へと向かう。
(ドキドキする...でも、頑張るぞ!)
さくらが入場口に立った瞬間、大きな歓声が響き渡った。
「わっ...!」
目の前には、巨大なドーム型の会場。
何千人もの観客が、熱狂的に声援を送っている。
「す、すごい...」
呆然とするさくら。
「行くよ、さくらちゃん!」
りんごの声で我に返り、さくらはリングへと向かう。
リングに上がると、場内アナウンスが響く。
「只今入場しましたのは、ムーンライト☆フェアリーズ! 橘さくらとフェアリー・りんごのタッグチームです!」
歓声が一層大きくなる。
「さぁ、対するは...」
アナウンスが続く中、さくらは対戦相手を見つめた。
「炎のツインズ、バーニング・シスターズ!」
リングの向かい側に立つのは、全身が赤いコスチュームに身を包んだ双子の少女たち。
その体からは、かすかに炎のオーラが立ち昇っている。
(すごい迫力...!)
さくらが息を呑んだ瞬間、双子の一人が口を開いた。
「へぇ、これが噂の『ムーンライトパワー』の使い手か」
「面白そうね、焼き尽くしてあげる♪」
もう一人が、不敵な笑みを浮かべる。
(う...うわぁ...)
さくらは、思わず後ずさりそうになる。
「大丈夫、さくらちゃん! 私たちにできることを精一杯やろう!」
りんごの声に、さくらは我に返る。
「うん...そうだね!」
深呼吸をして、さくらは対戦相手を見つめ直した。
その時、不意に、観客席の一角が目に入る。
(あれは...!)
そこには、「紅蓮の虎」美咲の姿があった。
腕を組み、鋭い眼差しでこちらを見つめている。
(見ていてください、美咲さん。私たちの...私の力を!)
さくらの目に、決意の色が宿る。
「さぁ、ルーキーズ・エクスプロージョン開幕戦! ムーンライト☆フェアリーズ VS バーニング・シスターズ! 試合開始!」
ゴングが鳴り響く。
さくらとりんごは、お互いに頷き合う。
(よし、行くぞ!)
さくらの体が、うっすらと青白い光に包まれる。
同時に、りんごの羽が輝きを増す。
二人の初陣が、今始まろうとしていた—