第5話「月光の覚醒」
「はぁ...はぁ...」
さくらは、汗だくになりながら、自分の両手を見つめていた。
あれから3日。巨大モンスターとの戦いで目覚めた「ムーンライトパワー」。しかし、その力を自在に操ることはまだできない。
「もう一度だ、さくら!」
ダイナマイト☆けんじの声が、特訓場に響く。
「はい!」
さくらは深呼吸をし、両手を前に突き出す。
目の前には、等身大の人形が立っている。
(来い...!)
集中する。
体の中心から、あの時感じた温かいものを引き出そうとする。
すると—
「わっ!」
さくらの体が、うっすらと青白い光に包まれた。
「よし、その調子だ!」
けんじの声に、さくらは顔を上げる。
その瞬間、光が消えた。
「あれ?」
「大丈夫、焦るな。一歩一歩だ」
けんじが優しく声をかける。
「そうだね。ありがとうございます」
さくらは小さく頷いた。
(でも、このままじゃダメだ。みんなに追いつかなきゃ...)
そう思った瞬間、突然体が宙に浮いた。
「きゃっ!」
「おっと!」
けんじが慌ててさくらを支える。
「大丈夫か?」
「は、はい...」
さくらは、少し困惑した表情を浮かべる。
「どうやら、お前の能力は感情と連動しているようだな」
「感情と...?」
「そうだ。さっきは『上達したい』という気持ちが強くなった瞬間に浮いただろう?」
「確かに...」
さくらは、けんじの言葉を噛みしめる。
(感情と連動...か)
「よし、ならこれを使おう」
そう言って、けんじは壁に掛かっていた大きな鏡を持ってきた。
「鏡...?」
「ああ。お前の表情を見ながら練習するんだ。感情のコントロールが、能力のコントロールにつながる」
「なるほど...!」
さくらは、鏡の前に立つ。
(よし、やってみよう)
深呼吸をし、鏡に映る自分の目を見つめる。
(上に...上に行け!)
すると、さくらの体が少しずつ浮き始めた。
「すごい...!」
興奮する気持ちを抑え、さくらは集中を保つ。
徐々に、体が天井に近づいていく。
「その調子だ!」
けんじの声が聞こえる。
しかし、さくらの頭の中は、自分の感情のコントロールで手一杯だった。
(落ち着いて...落ち着いて...)
そう思った瞬間、急に体が落下し始めた。
「きゃあああ!」
「さくら!」
けんじが駆け寄ろうとした瞬間—
「大丈夫、私にまかせて!」
突然、さくらの横から小さな影が飛び出した。
「りんごちゃん!?」
妖精のりんごが、さくらの下に滑り込む。
そして、小さな体で精一杯さくらを支えた。
「ふんっ!」
りんごの羽が激しく震え、二人の落下速度が緩やかになる。
「りんごちゃん、ありがとう!」
さくらは、何とか着地に成功した。
「ふう、危なかったね」
りんごが、額の汗を拭う。
「本当にありがとう。でも、どうしてここに?」
「えへへ、さくらちゃんの特訓、気になってね♪」
りんごが、にっこりと笑う。
「そういえば、」
けんじが口を開く。
「りんご、お前もさくらと組んで特訓してみないか?」
「え?」
さくらとりんごが、同時に声を上げる。
「そうだな...タッグを組むんだ」
「タッグ...ですか?」
さくらが、首を傾げる。
「ああ。さくらのムーンライトパワーと、りんごの飛行能力。それを合わせれば、面白い技が生まれるかもしれん」
「わぁ! それ、楽しそう!」
りんごが、目を輝かせる。
「どうだ、さくら?」
さくらは、少し考え込む。
しかし、すぐに顔を上げた。
「はい、やってみます!」
こうして、さくらとりんごのタッグ特訓が始まった。
二人の息が合うまでには時間がかかったが、徐々にコンビネーションが形になっていく。
そして、特訓開始から一週間後—
「よーし、新技の完成だ!」
けんじが、満足げに頷く。
「これで、次の試合は勝てるはずだ」
「試合...?」
さくらが、驚いた表情を浮かべる。
「ああ」
けんじは、にやりと笑った。
「来週、お前たちの初試合が決まったぞ」
「えええええ!?」
さくらとりんごの驚きの声が、特訓場に響き渡った。
そう、彼女たちの本当の挑戦は、ここから始まるのだ—