公認入居者と自認入居羊。
ぢゅらおです。
新作です。
お久しぶりです。
すいません。
「おはよう、利光くん。ところで今日こそこの家から出ていってくれますよね?」
「おはよう。その言葉そっくりそのままお返しするよ」
僕らの朝はいつもこうだ。微塵も心がこもってない「おはよう」の言葉に、心がこもりすぎてる「出て行ってくれる?」の言葉で目を覚ます。
もちろんお互いに聞かないことは知っているので、もはやモーニングルーティーンだと思っている。
「──────じゃあ僕は朝ごはんでも食べようかな」
「奇遇だね。私もそのつもりだよ」
「じゃあ僕が作った後に好きな物作りなよ。もちろん自分の食材で」
「・・・くぅーん」
「犬か」
「羊です」
「人だろ」
「・・・」
そうこの目の前にいるこの女。なぜか常時被っている羊の帽子がトレードマークのこの女。
・・・こいつこの部屋を自分の部屋だと仰っているが、こいつ何も持っていない。
例えば、今優雅に飲んでいるホットミルクも僕が買ったものだし、そのマグカップも僕の物だし、何よりもこの部屋は僕がつい1週間前に契約したから、この部屋はこいつのものでさえない。
なのに、こいつは毎朝毎朝当たり前のように僕の顔を覗いてくる。
「なぁなぁ…可哀想な雰囲気だせば、朝ごはん出てくると思ってないか?」
「?」
「おい、そんな「ソンナコトナイヨ?」みたいな片言で喋ってそうな顔やめろ」
「・・・けど実際利光くんは2人前作ってるじゃん…?」
「むぅ…」
確かに僕の手元を見れば、目玉焼きの目玉が2個あるし、ベーコンも2枚焼いている。
雫は自分自身に呆れを感じ、ため息を深く吐いたが、そうしても作った料理が消えるわけでもなく。
「・・・もう出来上がるからそっちの机の上に空けといてくれ」
「! はーい!」
「僕はなんで2人前なんか作ったんだ?」
「それ、ずっと言ってるよね」
「最初は食べてもらった後に出ていってもらおうと思って哀れみの気持ちで作ったんだ。もう哀れみの気持ちなんかないはずなのに…」
「大丈夫。そういう日もあるさ」
「・・・おいバカ。誰のせいでこうなってると思ってるんだ」
「バカァ!? 私だって、利光くんが来なかったら1人で優雅な生活送ってたよ!」
「はぁ!? 死にかけで「みずぅ…ごはん…」って言ってたアホが何を言う!?」
「そーれは言わないって約束でしょ?!」
「うーん記憶にないなぁ…」
そうしてぎゃあぎゃあと騒いでるうちにいつもの間にか空になったお皿を片付けつつ、雫は結構真面目なトーンで問う。
「あのさ。真面目な話、僕らの関係はさ赤の他人とは言えないじゃん?」
「そうだね?」
「だけど、関わりすぎるのも良くないと思うんだ」
「うーん…」
「だから僕の部屋ルールを作ろうと思う」
「私の部屋ね?」
「・・・まぁその点はこの際置いといて。僕はこれから学校も始まるし、家にいる時間が減る。その間に、何もすることがない君が自由にやられるのは困る」
「人聞きの悪いこと!」
「だからこの部屋を二つに分けて、キッチンとかトイレとかお風呂とかは共同スペースってことで、あとはお互いの空間に入り込まないようにすること。これでどう?」
「それってご飯は引き続き──────」
「・・・自分で買ってきて冷蔵が必要なものは必ず自分のものであるって書いとくこと」
「で、ですよねぇ…」
これが今できる最大限の譲歩だと思う。ちなみに、ここの家を出ていくなんて要求はもう通るなんて思ってない。
なら自分で出ていく環境を作るしかない。
心の底でギュッと決心を決めた雫は、目の前にいる羊女を出て行かせるためにこの一人暮らし頑張ろうと小さく拳を握ったのだった。
「でもまぁ最初の時と比べたらだいぶ人間らしい生活送れるか…」
「でしょ? 僕なりに結構譲歩したつもりだけど」
「あはは…確かにあれはインパクト強かったねぇ…」
「次期犯罪者筆頭候補が何を言うんだよ」
そう僕らの出会いは1週間前のあの日。僕以外に誰もいないはずのこの部屋で全ては始まった──────
※※※※※※
「雫〜ちゃんと守るべきことは守れよー?」
「分かってるよ父さん」
「けど、雫ちゃんなら別に心配しなくたって大丈夫よぉ」
「・・・まぁまさか父さんの仕事の関係でこっちに引っ越してきたのに、直前で別の場所に赴任が決まるとはね」
「もう少し早かったら、学校の変更も出来たんだけどねぇ」
「まぁ、早いうちから一人暮らしするのは悪いことじゃないしいい機会だろ」
「父さん、それ口実にしたらどうにかなるとか思ってないよね?」
「おおお思ってないぞ? おっとこんな時間だ。荷物はもう部屋に運び終わってるからあとは雫の好きなようにしなさい」
「に、逃げた…」
「まぁ今生の別れじゃないんだしまた会えるわよ! またね〜元気にするのよ〜」
「・・・と言っても結構な期間別れるんだし、もうちょい重くなるかと思ってたんだけど…」
という感じで僕の家族は結構軽い。別に仲が悪いとか、見捨てられてるとかそんな重い理由は無い。単純にこんな性格だと思っている。
色々考えつつ、雫は今後しばらくお世話になるであろう部屋の前に着くと、どこか緊張が滲み出てきた。
僕自身でも気付いてなかったが、改めて考えてみたら、親元でずっと育ってきたのに急に一人暮らしが始まったら緊張しないはずがない。
雫は自分の胸に詰まる様々な感情を消すように胸辺りを軽く擦ると、目の前にある重い扉を体の重さを使って力強く開け、部屋の中を観察するように眺める。
部屋の中は、特になにか述べる必要はなさそうな一般的な部屋だったが、1歩1歩進む足取りが鉛を付けたかのように重い。
そうして不安が残るなか、始まってしまった僕の一人暮らしライフは、次の日跡形もなく消えてしまった。
「おはようございます。出ていってください!」
僕はまだ夢を見ているのか、それとも引っ越した部屋を間違えたのか。どちらにしろ、これは悪夢だ。仮想か現実かは関係ない。
変な帽子を被った女が起床五秒で退去を迫ってきている。それも弾けんばかりの笑顔で。
雫は激しく鼓動する心臓の音が伝わらないように平然を装いつつ、目の前にいる変質者に向かって負けじと笑顔で答える。
「そっくりそのままお返しするよ!」
ぢゅらおです。
まず、1つ目。1ヶ月以上、更新無しの状態で消えていてすいませんでした!!!!まじで申し訳ありませんでした!あと他に反省の意味を込める言葉があれば教えてください。
この反省の意はこれからの話で伝えていくとして、今回の新作は僕なりに少し自分自身重なる部分が多いなぁって自分でも思ってます。誰だって初めは馴れ合うのは無理だと思います。だけど、そんな中でも人間って生きていけるんですよね。この話には僕が感じてきたことを詰め込んでいきたいです。
というのは表向きの理由で裏向きはラノベを読んでたら、昔自分が書いてた汚いメモがあって、その中にあった話を今だったら書けるのかなって思ったためです。
ちなみに文章力は今も昔も変わってないです。
変わったのは失うものが無くなったことぐらいです!笑
これからよろしくお願いします!!