08
うなだれている男たちはそのままに、
公園を出た俺たちは冒険者ギルドへは向かわずに、
ちょっと寄り道をしてから宿に帰ることにしました。
何だかふたりともテンションがアレしちゃってて、
今日はもうギルドで依頼探しって感じじゃないですし、
宿の方に厄介ごとの気配を持ち込まないためにも、
少しクールダウンしてから帰りましょうってことに。
屋台で冷たい飲み物を買い、商店街通りにあるベンチでひと休み。
リルシェさん、未だ興奮冷めやらぬご様子。
わんこみみも落ち着きのない、興奮状態のままですね。
「……いつも後悔しちゃうんです」
「必死に動いている最中はこれが一番正しい行動だって自分に言い聞かせながらハイテンションのままで突っ走っちゃうのですが、終わってからの反動が……」
何だか今日は普段の『乙女の守り神』モードよりも気合が入っていましたね。
それでもちゃんと手加減を忘れないのがリルシェさんらしさだと思います。
「あの3人の標的が明らかにウェイトさん狙いだって気付いたら……」
「ところで、ひざまくらの件は初耳なのですが」
あー、内緒にして申し訳ないです。
やましいことしてたわけでもないのに、なんか恥ずかしくて。
「お昼寝ひざまくらくらいでしたらセーフですよ」
「求愛行動でカミカミされたっていうわけでもありませんし」
……カミカミ?
「一部の獣人さんは、相手に何かを伝えようとする時に身体を噛んできますよ」
「指とか耳とか首とか、噛み付く部位によっていろいろと意味合いが変わるそうです」
「仲間認定とか、食事のお誘いとか、決闘の申し込みとか……求愛、とか」
……あー、例えば太ももだったら?
「えーと、分かりませんっ」
「そもそも、種族や部族によってその意味が異なるようですし」
「もしかして……太もも、噛まれちゃったのですか」
……はい。




