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正座している3人、ガチ泣きしております。
本気でお怒りなリルシェさんのマジ説教、
近くで聞いている俺でも、おタマさんがひゅんってなるもん。
まあ、怒りの追加腱切りとかされなかっただけでも……
先ほど事情を聞いたら情状酌量の余地あり、
よって巡回警備の衛兵さんへの通報は無し。
魔導ロープの拘束を解いたら、ご覧の通りの正座お説教タイムとなった次第。
3人とも悪質な暴漢では無く、
あえて言うなら善意の暴走、かな。
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俺たちの定宿の看板娘キュルミィさん。
大変に愛らしくてどんな時でも元気いっぱいな働き者。
ご近所でも評判の、まさに看板娘の鑑。
ご本人のご存知無いファンクラブが暗躍するほどの人気っぷり。
いえ、組織の方は凄く健全な集まりだそうですよ。
"キュルミィちゃんが嫌がるようなことは絶対にやらない"を合い言葉に、
不純なヤツは入会禁止、場合によっては即通報するほどの真っ当さ。
そして集まったのは純粋なファンのみ、
鉄の掟を誓い合った同士たちが固く団結した極秘応援組織。
ただ、やたらとデカい組織だそうで、
もしファンクラブ集会とかで許可無く全員集合しちゃったら、
王都騒乱罪とかで衛兵隊とひと悶着するかもってほどの大組織。
それで、無駄に騒ぎを起こさないためにも、
キュルミィさんご本人には絶対に活動を気付かれないように、
陰ながら見守り続けているそうです。
ってことで、見守り隊の皆さんに見られちゃってたのですよ、俺。
あの時の、宿の屋上でのひざまくらタイム。
ファンクラブ的には当然アウト。
諸々手遅れになる前に、
あの野郎にちょいと手荒な警告しようぜってことになり、
本日の襲撃となった次第。
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「ファンクラブ、大いに結構」
「迷惑掛けまいと陰から見守るのも良しとしましょう」
「でもね、キュルミィさんが誰と友達になりたいとか、誰を好きになりたいとか、それを決めるのはあなたたちではありませんよっ」
「あなたたち3人の暴走行為なのか、ファンクラブ全体の総意なのかは知りませんが、キュルミィさんの健やかな成長を歪めようとするのなら、そんな邪悪なストーカーどもは私たちがいつだって全力で成敗します!」
「不満や反論があるなら逃げも隠れもしませんので、いつでもかかって来なさいっ」
その啖呵、まさに『乙女の守り神』の真骨頂。
ノルシェさんご自身もストーカー被害に相当悩まされたそうですし、
お怒りごもっとも。
すでに3人とも、涙も枯れ果てたって感じの放心状態。
うん、もういいでしょう、リルシェさん。
こんなところでこれ以上騒ぎになったら、
それこそキュルミィさんに迷惑掛けちゃいますし、
人が集まってくる前に撤収しましょう。




